再会
うっし。充電も出来たし、哨戒しながらマスチペ目指しますかぁー。
広域気配感知しながら走るけど、国境付近に纏まった人の動きはない。
ジャローダ側の森の中には獣の気配はあるから、強そうな物は走りながら処分していく。
おや? 近づいてくる一団があるから、少しスピードを抑えてunknown姿に。
五人組の兵士だね。ボクを半包囲して武器を構える。
「おい、止まれっ」
「何か御用ですか?」
「冒険者か? 何処に行く?」
「シャルマンのマスチペに向かってます」
「もう国境は越えてトールだぞ」
「へっ?」
行き過ぎちゃったか。まぁ、線とか川がある訳じゃないからねぇ。
「申し訳ありませんでした。 引き返します」
「待て。 そのスピードは、どこかの伝令だろ? 大人しく書状を渡せば命だけは助けてやる」
「いや、ありません。 軍属では無いですし、依頼をも請け負ってません。 ただ友人に会いに行くだけですから」
「そんな嘘はいいんだよっ。 今のマスチペに友人を尋ねて行くバカがどこにいるっ」
「いや……、ホントですよ」
「持ってるだろーが? なんで持ってねーんだよ。 それがあれば、こんな仕事ともおさらばできるのによー……うっうっ」
「いや……、ただの冒険者なので……。 なんか申し訳無いので、これどうぞ」
なんか半泣きの隊長さんに、さっき駆除したスネークタイガーの死体を提供する。
スネークタイガーは尻尾がヘビの虎で全身がぬるぬるした感じなので、あまり触りたくはないけど能力は高いし、毒も持ってるから放置すると大変な事になるのだ。
「いいのか……? この大きさなら三十ゴールドは超えると思うぞ」
「さっき通りがけに狩っただけで、何匹かあるので気にせずどうぞ。 悪獣駆除は仕事なので」
「腕が良いんだな。 有り難くいただこう。 対応に謝罪もする。 すまなかった。 今、上の連中機嫌が良くなくてな……。 マスチペに友人が居るなら避難させた方が良いかもしれん。」
「トールが攻めると?」
「あくまで可能性の話だがな」
「教えてくれてありがとう。 でも、もし現実になるなら軍をやめた方が良いよ。 マスチペには、ジュノーの悪魔がいるからね」
「おい。 その話聞かせろ」
食いついて来たから、ボクのシャルマンでの戦闘エピソードのいくつかを噂話程度に話す。
「その話は本当か?」
「マスチペがたった一人に落とされたのは本当らしいけどね」
「情報感謝するぜ。 このスネークタイガーもな。 お前等、直ちに戻るぞ」
「はっ!」
五人纏まって走り出す兵士達、反対側に走り出して、すぐに向きを変えて、追いかけるボク。
へへへ。
「あのー……」
「うわっ! な、なんだ……、お前か……。 どうした?」
「マスチペはどっちでしょう?」
「……ああ、お前に伝令は無理だな……。 地図は持ってるな? 出せ。 ジャローダの地図か……。 今はこの辺だから向こうなんだが、ここにトールのベースがある。 三国の接点で危ないのが揃ってるから、こう迂回した方が良い」
「ありがとうございます」
「おう。 くれぐれも気をつけてな」
改めて走り出すけど、目印がないんだよなぁ。しばらく走ると、予想通りに多数が気配感知に引っかかる。
これは迂回迂回。蜂の巣はつつかないーっと。トールまで相手にしてる余裕は無いですよーっと。
……むぅ。 三人出てきたか……。 しかも速い。
でもスルーするーっと。
ジャローダ方面に進路を変えて加速して森に入って突き放す。
フフンッ。まだまだだねっ。
迷った……。
戻れない……、太陽がほぼ真上だから方角も分からない……。どうしよう……。
とりあえずその場で跳躍してみたけどチャラチャラ音はしない。
木の高さまで跳んで周りをみても、周りは森だしチャラチャラ音もしない。
気配感知に獣の反応は無いけど、少し離れた所に人と思う物が一つだけ。
近づく先は木々が開けて円形の草原になっていて、中心のテーブルでお茶をする白いワンピースで銀髪の女性……。
涙が溢れる。
嬉しい。
最愛の……タキナっ。
駆け寄るボクを、彼女は優しく受け止めて抱きしめてくれる。
「会いたかった……。 寂しかった……。 タキナぁ……」
「よしよし。 大丈夫よ」
タキナの声。タキナの匂い。タキナの感触。その全てが愛おしい。
顔をあげるボクに優しく口づけをくれる。
あぁ、しびれる……ビリビリする。
自然に寝かされて、タキナが上にきて重ねられる甘い唇に思考がとろける。
まるで二人の魔力までが混ざり合う様な……。
「んっ……タキナ……ダメ……はげしい……」
「だって交わるのは久しぶりだから……。 嫌?」
「嫌……じゃない……。 いつも待たせてごめんね」
はぁ、気持ちいい…………ボクのタキナ。
…………じゃない。
誰? 顔も声も感触も、全てがタキナなのに……。
頭と体は本物だと認めてるのに…………違う。
始めからこんな所にいる訳がない。でも夢や幻覚じゃない。
でも求める気持ちが止められない。




