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シャルマンの勇者

 準備は出来たけど、事を起こす前にやる事がある。

 プールの管理だ。

 今日は雲がないから直ぐに熱くなって、子供プールはお湯になってしまう事態も考えられる。

 プールの端に屋根付きの檻を用意して、氷山を創り出す。

 プール監視員達に風魔法や水魔法での温度管理と、熱くなってしまった時は遊泳禁止にする事を厳命する。

 ボクの事は分かってないみたいだけど、後ろにウェイがいるし、この国の最上位騎士であるシャルマネロスの騎士服に身を包んでいるので文句は無いみたい。

 

 王も元老院も既にシャルマンペイからマンパエルの臨時執政館に移ってる。

 今日はお披露目も兼ねて堂々と乗り込むとしますかっ。

 真っ白に赤の挿し色のシャレードの肩にウェイとファル、ヨンの三人を載せて、フィーとボクは中に引っ込む。フィーを連れて行くのはいいけど、一番に狙われそうだよね。

 ウェイが居るから執政館の前まですんなりと移動出来る。


「ウェイアール王女殿下っ。 何事ですか? 魔装機で町中を移動するなど、謀反を疑われても仕方ありませんぞ。 ファル、ヨン、降りてこい。 お前達もなにをしている?」

「ファタシス騎士団長、出迎え感謝いたします。 ですが、ファルとヨンは私の騎士としてシャルマネロスに任命し、銀黒の騎士の名を与えました。 二人はに対する態度は改めていただきます」

「王や元老院の許可無しにその様な事はまかり通りません。 なにをお考えかっ?」

「異議は受けません。 事実として受け入れなさい」

「くっ、この……」

「なにか?」

「後悔しますよ」

「今のは聞かなかった事にいたします。 お父様の所に参ります」

「どうぞ……」


 シャレードは仕舞って、フィーと共にウェイの後ろに付く。

 通り際に憎しみの目で無遠慮に見てくるファタシスに威圧スキル最大で返すと、白い顔になってその場にへたり込む。美白の効果まであるとは知らなかったよ。何かするなら殺すよ。

 衛兵達もファルとヨンの事は知ってるみたいで、何か言いたげな顔だけど扉を開けて通してくれる。そして後ろから付いて行くフィーからは目が離せない。


 建物は五階建て。

 ホールの吹き抜けの階段をみんなの視線を受けながら昇っていくけど三階に上がった処で、取り巻きを引き連れてジャラジャラと華美に装飾品を着けた老人に引き留められる。


「これはこれはウェイアール殿、その様に人を引き連れてどちらに向かわれるのか?」

「ピエチ老師ご機嫌麗しゅうございます。 お父様と今後についてお話を」

「まだ、賊の話を真に受けておいでか?」 

「老師。 国境の兵士達は全滅、マスチペは落とされて、騎士団はシャレードカスタムを含めて半数以上を失っております。 このままでは、国が滅ぶのを待つのみでございます」

「誰の入れ知恵か? 不愉快な事をおっしゃる」

「現実は、もっと不愉快でございます」

「まぁ、よいでしょう。 あまり短絡的な行動は謹まれた方が身の為ですぞ」

「ご忠告、有り難く心に留おきます」


「(小さく)ちっ、お飾りの小娘がっ」

 

 もう少し離れてからにしてくださいねー、聞こえてますよー。まぁ、離れても聞こえるけどさ。

 その後も数人の老人と似たような問答があったけど、あからさまに敵意を向けてくる者までいる。

 ウェイは気にはならないのか、抑えるのが上手いのか静かに対応を終わらせてから王様の執務室へ。

 みんな、すれ違いにフィーの姿を見てギョッとして冷や汗を流している。

 誰が賊か?と聞かれたら、間違いなくフィーが疑われる事間違いなし。

 執務室ではきちんと付人を通してその時を待つけど、そんなに時間をとらずにウェイだけが通される。

 一緒にと説得するけど、父親の説得は自分の仕事だからと頑なに受け入れなかった。

 ウェイが入ってから、待つ事しばらく。


「従者共、入れ」


 !!

 入って目に付くのは正面の男性二人だけど、荒れた部屋に壁に飛び散った血飛沫。 壁沿いに血まみれで倒れるウェイ。その顔は元の顔が分からないほど腫れて、生死も判別出来ない。

 フィーが駆け寄るけど、前の二人に動きはない。

 気配も、魔力も分からない。またこれか……。

 原因は正面右側に立つ男。フルプレートアーマーに身を包んで、神器シャルマンの操者。この国の勇者で最高戦力の第一王子シャルル・デ・シャルマン。

 この男が身につけている鎧、剣、盾は青を基調として縁に金をあしらって、見た目はどこかの勇者の装備そっくり。

 問題は、胸や腕など至る所に大粒の「嘆きの石」が付けられていて、ボクの中のユフィーリアの力を抑えている。

 嘆きの石はゴースト系の魔物が落とすレアアイテム。生前の未練が固まった石とされていて、破邪の力があって、ゲームのユフィーリア戦では大量の原石か、石をあしらった装備が必須となる。

 そして彼の右手にはべっとりと血が付着している。


「ウェイアール様っ」

「…………」

「その鎧の中身はフィーネアルトソフィスリースか……? 教育係のお前も含めて謀反人として処分する。 何か、申し開きはあるか?」

「ねぇ、なんでこんな事ができるの?」

「なんだ、貴様は? 賊に踊らされて、神に選ばれし元老院を処分しようなどと、自分の血縁にこんな愚か者がいるとは許せる物ではない」

「だからって、話し合いに来た妹に対してやる事?」

「自分の分も解らん奴に生きている価値はない」

「そっか……。 なら、お前にこそ生きている価値はないね」


 目をヒクつかせて、シャルルが剣を抜き放つ。


「生きている価値がないのはお前だ」


 ファルに目でサインを送ってから黒龍丸を抜き放つ。

 作戦の打ち合わせは出来てる。ユフィーリアの力無しで勝ち切れるとは思ってないから、一時退却して外で落ち合うパターンをとる。


「ファル、ウェイを頼むね」

「了」

作品を読んで頂いてありがとうございます。

面白いと感じてもらえたら、いいね、ブックマーク、☆評価お願いします。


至らない点が多数あると思いますが減らして行けるように頑張ります。

作品は今後も加筆、修正あります。

投稿は不定期です。


先に閑話的作品を投稿して……と思ってたんですが、本編と大幅にズレてきたので書き直しか別の作品になりますね。

一緒に読んで評価いただけたら嬉しいです。

本編の執筆が忙しく更新は止まっております


https://ncode.syosetu.com/n2673im/


カスタムキャストでイメージを作ってみました。


※画像はイメージであり、実際のものとは異なります。

挿絵(By みてみん)

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