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お守り、きっと君を護ってくれる

 日が昇ったけど二人は起きない。

 バイトはまだ来てないのに、プールは開店待ちの行列が出来てしまってる。

 仕方ないなぁ。


「危ないから走るなー」「ほらほら、深い方にいかない」「水飲むな」「そーゆーのは禁止! 帰ってからやれー」


 プール監視員の仕事は忙しい。戦闘並みの緊張感を持って飛び回る。

 

「アンノーン様」


 チッ。嗅ぎ付けやがったか。まぁ、城壁からも見えてるのだけどね。

 朝方の兄弟がボクの後ろを付いてくる。プール監視員の動きに付いてくるとは、やはり能力は高い。


「私共にもお手伝いさせて下さい」

「要らない。 帰って」

「アンノーン様のお役に立ちたいんです」

「私は敵。 バカな事言ってないで、自分達の将来の事考えて行動しろよ」

「私は貴方に負けました、命も救われました。 貴方に仕えたいんです」

「そもそも不意打ちだし、私はそんな身分じゃない。 弟が大切なんだろ? この国に居られないなら、ジャローダでもジュノーでも行けば良い」

「弟は全て私に従います。 貴方様のお傍に置いていただけるだけで幸せです」

「あー、もう。 要らん。 邪魔だから帰れ。 (ピピーーーッ)こら、そこーーー!」


 おしゃべりしてたら事故になる。プール監視員に気を抜く暇はないのだ。

 それに、今は淋しくても、ボクの心はいっぱいで空きはない。

 放置して仕事に戻るけど、二人は勝手に監視員の仕事を始めた。


 日が昇って数時間。

 まだウェイ達は起きてこないし、バイトもこない。

 だんだんウェイに判断を委ねた事が心配になってきた。

 はぁ、プールでタキナと遊びたい。


 数時間経った頃にようやくバイト達が現れたので、拳で優しくお願いして配置に着いてもらう。

 トイレだって行きたいんだからねっ。ガキ共、プールですんじゃねーぞ。



「入るよ」

「賊様ですね? どうぞ」

 

 プールハウスの二人は起きてしばらく経つだろうに、まだ裸のまんま。

 ベッドのウェイは良いとして、フィーはなんで裸でウロウロしてるの?

 見た目の暑苦しいunknown姿は脱いで、薄着に着替える。

 やっぱり仮面は嫌だね。表情を見られてるかどうかで思考が変わる気がする。演技なら問題ないから良いけど引き込まれるのは問題。

「我は汝、汝は我」か……。


「昨日はお楽しみでしたねぇ?」

「はい。 ゆっくりと想いを確かめ合う事が出来ました。ありがとうございます」


 そんな返しいらんわ。はいはい、良かったね。


「何も準備してなかったね、朝食にしようか。 フィーはいいよ、身支度してあげて」

「はい、ありがとうございます。 ですが申し訳ございません、ウェイ様のお召し物が無く……」


 そーいや、ウェイは裸で来たんだったね。二人分お揃いで白のふわふわキュートなワンピースを渡してあげる。


「ウェイの服はどうしたの?」

「兵士が持っていたと思うのですが……? 私もよろしいのですか?」

「うん。 いいよ」

「ありがとうございます」


 お揃いの服を着て楽しそうな二人を見てると嬉しいけどすこし淋しさが湧いてくる。

 さっと朝食の準備をして窓のツッパリカーテンを外すと、直ぐ前で様子を覗っていたいた不審な二人組と目が合ってしまったので、睨みつけて吹き飛ばし結界を拡げる。


「賊様は何でも出来るのでございますね」

「何でもは出来ないけどね」

「いえ。 私が、これほどまで何も知らず、何も出来ない人間だと考えておりませんでした。 賊様がいらっしゃらなければ、何も知らないままで、この国の滅亡を迎えていたかもしれません」

「滅ぼそうとしてるのは、ボクなのだけど……」

「賊様……。 王になる覚悟はできました。 ですが後の事を思えば、お父様が在位続けるのが一番だと考えております。 正しい王政に戻しますので力をお貸しいただけますか?」

「決めたんだね? わかった。 フィーもそれでいいの?」

「はい」

「フイーには、一生、私と共にあっていただきます」


 お互いに心は決まってるみたいで、合わせる視線が優しくて羨ましい。


「決めたのなら、行こうか。今日は君の騎士だね。 フィー、ボクの騎士服も手配してくれる?」

「畏まりました」


 フィーが出るのと合わせて、外の不審者二人を招き入れる。


「フィー、この二人のも」

「畏まりました」


「失礼す……!! ウ、ウェイアール王女殿下……。 こ、この度、あれ? お招き頂き……、おはようございます……」

「何言ってんの?」

「う、うるさいっ。 いえ、失礼いたしました。 あの……、貴方様は?」

「はじめまして。 アンノーンの中の人」

「あなたが……? ヨボヨボの老人だなんて……」

「勝手に好意を向けられても困るからね。 まぁ、座って。 君達のこれからについて話をしようか」



 二人に席を勧めて朝食を出してあげるけど、カチコチでくつろげないみたい。王女様の前だもんね。


「賊様はアンノーン様なのですね?」

「まぁね」

「はぁ、アンノーン様……、素敵です」

「君達の名前は?」

「私はファル。 弟はヨンでございます」

「一般階級なのに、カスタムの操者なんてすごいね」

「当然努力しましたが、運も良かったのだと思います。 しかし、アンノーン様に敗れてカスタムも無くした私達にはもう戻る場所はないでしょう」

「そうだよね。 でも申し訳ないけど、ボクは君達を引き取るつもりはない。 ウェイ、この二人を君の騎士にするつもりはないかな? 正直、君の護衛達って弱過ぎるからね」

「そうなのですね。 アンノーン様がそうおっしゃるなら」

「ファル。 王女の騎士として、ウェイアールを護ってくれる?」

「そんな……、私は……」

「君達の将来の為……。 そしてボクの望み」


 ファルがヨンを見るけど、彼の反応は薄い。感情に乏しいのかもしれないけど、何か通じ合ってはいるのかな?


「承知いたしました。 謹んでお受け致します」

「ウェイ、これを」


 二人のカスタムの核をウェイに手渡すと、二人は彼女の前に跪いて頭を下げる。


「ファルよ。 私の騎士として、その命、その全てを、私に捧げると誓いますか?」

「誓います」 

「ヨンよ。 私の騎士として、その命、その全てを、私に捧げると誓いますか?」

「はい、誓います」


 ウェイが核に口づけして差し出すのを、二人は恭しく受け取って同様に口をつける。


「ウェイアール・ケホル・デ・シャルマンの名に於いて、銀黒の騎士の名を授けます」

「はっ」


「銀黒? 銀で黒? なんで?」

「私とアンノーン様の髪色から名付けました」

「……まぁ、いいか。 カスタムは二人に返すけど、上位の権限がボクにある事は忘れないでね。 あぁ、銀黒ならこれもあげる。 デザインが気に入らなかったら盾だけ使えばいいよ」

「こ、これは……」


 取り出したのは、いかにも呪われてそうな禍々しい見た目の漆黒の鎧。盾は意匠が少なくて、まだ許せる。


「これは悪食装備って言ってね、防壁を破る様な攻撃でも、この黒珠の数だけ受けてくれるんだけど、魔装機の攻撃には試した事ないんだよね。 見た目の威圧感が凄いから精神的優位性も期待できるかもしれないけどね」

「騎士にはまったく似合いませんですわね」 

「かわいくないから使わないんだよ。 むしろunknownにはちょうどいいね」



 一通りの話は済んだので、戻っていたフィーから騎士服を受け取って着替えるのだけど……。真っ赤で派手な飾りで……。これ、式典とかで着る奴だよね? 


「フィー? なんで着替えてるの?」

「私もお供いたします」

「ダメ。 遊びじゃないから」

「その時にはウェイアール様の盾になります」

「防壁の張れない人間は盾にすらならないから、ボクの邪魔しないで」

「アンノーン様、フィーは覚悟はできて……」

「必要ない。 無駄死にされたら迷惑なんだよ」

「私がフィーを守ります」

「逆だから、つまんない事言わないで」

「私は、フィーネアルトソフィスリースと共に有ると誓いました。 今日、この日だからこそ共に有りたいのです」

「……はぁ。 なら、せめてそこの悪食装備にして」

「こ、こちら……ですか……?」

「嫌なら留守番」

「は、はい……」

「後は……」


 指輪を外してフィーの手をとって付ける。


「お守り。 きっと君を護ってくれる。 大切な物だから絶対なくさないでね」

「はい」

作品を読んで頂いてありがとうございます。

面白いと感じてもらえたら、いいね、ブックマーク、☆評価お願いします。


至らない点が多数あると思いますが減らして行けるように頑張ります。

作品は今後も加筆、修正あります。

投稿は不定期です。


先に閑話的作品を投稿して……と思ってたんですが、本編と大幅にズレてきたので書き直しか別の作品になりますね。

一緒に読んで評価いただけたら嬉しいです。

本編の執筆が忙しく更新は止まっております


https://ncode.syosetu.com/n2673im/


カスタムキャストでイメージを作ってみました。


※画像はイメージであり、実際のものとは異なります。

挿絵(By みてみん)

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