ふんっ
あいつらか。
後ろ側にいた兵士は仲間の死に誰も動揺はしていない。ちゃんと覚悟はできてるんだね。
ビィシュフィムと同じ程度の圧を感じるのが二人、どちらも銀髪でショートの綺麗な女性とセミロングの少年。
「終わったな。 撤収するぞっ」
「はっ」
指示を出す女性と少年の間に降り立つ。
「残念……、終わってないよ」
「!!」
邪魔しようとする防壁は掻き消して、女性の腹部に深々と黒龍丸を突き立てて切り裂く。
隣の少年は、反応はするけどもう冷静な判断が出来てない。ただ繰り出されるだけの攻撃なんて萌えないよ。
さっと流して肉薄するのをビィシュフィムが彼を殴って突き飛ばす処にそのまま黒龍丸を突き刺す。苦し紛れで相打ち狙いのカスタムの斬撃は防壁で逸らして黒龍丸を振り抜く。
最後……。少年に向くボクの前に現れるシャレードカスタム。
でも、ほとんど動かないただの壁。
少年は……いる。血溜まりの場所に女性の姿がない。
もう動くなよ、頑張るなよ。手が震える。
「ねえ……さ……ん」
少年が何か叫んでいるけど聴こえない。 ただ少年の前に立ってるだけのカスタムを防壁ごとパイルバンカーで貫く。
残った兵士は直ぐに退却していく。別に追うつもりもない。
その場に崩れ落ちた少年は、ボクが近づいて黒龍丸を首に当てても反応は無い。
ムカついたから、腹を蹴り上げる。
反応の薄さに怒りが増してきて、強く蹴りあげても、むせて這いつくばるけど反抗はない。
「おい。 かかってこいよ。 それじゃ、姉とビィシュフィムは犬死だろがっ。 なぁ、なぁ」
「…………」
けっ、萎えた。やっぱり死ねよ。
あらためて黒龍丸を取り出して振り上げる。
「お待ち下さい」
「……ね……ねえ……さ……ん?」
「もう動けるの? ダメだよ。 こいつにはもう価値はない」
「まだ意識は保っておりましたので、自分でも回復を致しました。 助けていただいたのに重ね重ね申し訳ありませんがお願い致します。 弟をお助け下さい」
「ビィシュフィム犬死なんだけど?」
「わかっております。 それでも、たった一人の身内なのです。 お願い申し上げます」
「……ふんっ。気に入らない」
「ありがとうございます。 あの、お名前を教えていただいても?」
「unknown」
「アンノーン様。 私は何をしたらよろしいでしょうか?」
「敵対しないなら、二人のコア出して」
「はい。 アンノーン様」
コアの回収終了……って、なんであの二人絡まってキスしてんの?
アホくさ。やっぱり殺すか?
「ビィシュフィム……、これで良かったの? じゃね」
さてと、朝までにマンパエルの様子でもみるかな。
アホ共は放っておいて、城壁に足をかける。
「アンノーン様、お待ち下さい。 私も連れて行ってください」
「嫌」
「お願いします。 好きです。 愛してます。 雑用でも伽でも何でもいたします」
「さっき弟と絡んでたし。 私の中身はもうヨボヨボの年寄だし」
「弟とはスキンシップです。 年寄でもヨボヨボでも構いません。 この命、貴方様に捧げます」
「嫌。 いらない。 せっかく拾った命、兄弟で仲良くね。 じゃ」
城壁から夜の町に飛び出す。
彼女が付いてくるけど、unknownに付いてこれはしない。置いてきぼりにして、さっと闇に紛れる。
屋根の上を走り回ってると当然暴漢に襲われる事になるけど、危なげなくシャレードが増えて、カスタムも二体増やす事が出来た。
今日の一番はビィシュフィムだなぁ。あの女性もやるんだろうけど、弟よりビィシュフィムを助けたかった。
大体の人々は就寝中で、目に付く発見は無かった。
町から離れてカスタムを出す。
やはり初期型のゴテゴテしいガンダムには細身の曲刀などは似合わない。
武者タイプや騎士タイプの方がセカイ感に合う気がするのだけど? 撃ち合いか斬り合いか、どっちがメイン?
速さはMH型やAT型の方が速いし、アーマーの脱着とかは無くて、武器も専用品で外せない。二連装のビームカノンがメイン使いだから中距離支援型かな。肩のカノンはなんでビームじゃないんだろ?
チューニングは速さに振っても仕方ないから、攻撃力と防御力に全振り。ビームカノンはメインで使っていけるし、厚い装甲はいざとなれば盾に出来るからね。
夜明けが近いのでプールに戻るけど、まだまだお楽しみ中の連中がいる。けっ。
少し時間を与えて退去が終わったら水の入れ替えするんだけど、泥水より汚らしく感じて、収納したくないから蒸発させて新しく水を入れる。
入れ替えは終わったけど、土壁で囲ってバイトが来るまでは入水禁止。
泥水も無いし、今日は川に水汲みにでも行くかな。
ウェイとフィーは一緒にご就寝中なのでそっとしといて、起きて動き出すまでは屋上で魔装機戦の妄想をして過ごす。




