ボクには関係ない
近距離になると弾幕は止むし、ベンケイも友軍が邪魔で攻撃は出来なくなるけど……えー、下がるのー? 逃げるなぁー。っても、正しい判断だね。
ベンケイは大型のバーニア? スラスター? を幾つも搭載してるから重量級でも遅くないんだよ。
にっがっさっないっけどねっ。
フォールディングガン六連ファイエルっ!
自前射撃だけど一発命中っ。防壁は抜けたけど、本体の装甲に弾かれる。でも、防壁を抜かれた事が無視出来ないベンケイは脚を止めて、こちらの隙を覗う体勢に入る。
あはっ。直ぐに行くから待っててねっ。
九郎出るかなぁー? 出る訳ないかぁ。ぶん取ってくるんだった。
最初は横に広く展開していたシャレードは、近接戦闘に移ると共にベンケイを王とした集中陣形に移行している。
弁慶の斉射がシャレード一体の肩を掠めるけど許容範囲だろうね。斉射と言ってもミサイルは友軍の邪魔になるからない。
ふっふっふっふっ。
シャレードもなかなかの斬撃を放ってくる。連携もとれてるし、小さい的だろうにそれぞれ騎士として腕が良い。
斬撃を躱していくけど、実体弾の牽制に防壁バッシュからの体当たりまで、生身の人間相手に繰り出す技じゃないものまで使って包囲を狭めてきて、円形の壁の中にボクと三体のシャレードが入れられてる形になって、名付けるなら「コロッセオ」だね。
いいね。こうゆう泥臭い戦い方って好きよ。
フォールディングガンのクールタイムが終わるのを待ってから一気に仕掛ける。
フォーミダブルストームを連続してかけて、着地せずに風をイメージしてすり抜けて徐々にスピードをあげていく。シャレードの旋回能力じゃキツイよねっ。おっ、ローラー旋回で視界に捉えようとするけど、バランス難しいよぅ。ボクが切り返したら一瞬で見失ってよろめいて、他の機体にぶつかる事になる。
まっ、そんな隙は要らないけどねっ。両手の延長に曲刀を出現させ、さらに加速してうねる風の様に三体を切り刻む
「如風剣舞……鎌鼬っ」
三体が崩れ落ちると、周りのシャレードが一気に間を詰めてくる。
「レッツ、パーリターイムっ。 全砲門展開でぇーす。」
フォールディングガンと大口径カノン。ボクの周りにぐるりとハリネズミの様に砲身が出現する。
「いっくですよー。 ファイヤー!」
狙いなんてつけてない。ってか、つけられなかった。手や指、視線でいくつかのコントロールは出来るけど全部なんてとてもじゃない。また頭割れるわっ。……別に割れた事はないけどね。
前面を中心に半数轟沈、中破四。上々っ。
「いくよっ、yeyyeyyey。 気分上々、Hey」
フォーミダブルストームで弾丸の様に接敵して、ボク自身だけじゃなく多方向から同時に斬撃を繰り出し切り刻んで残りの全てを掃討する。
「如嵐剣舞……千手斬」
ふっふっふぅ。残すはプロトタイプベンケイのみっ。
おらんっ! どこさ、いった?!
気配探知最大範囲っ。少し離れた林の中に気配が一つ。町に向かってるね。
時間ないんだからっ。テレポート……リリース。
短距離転移の連続使用で一気にベンケイの背後に付いた瞬間にボクを焼き付くそうと迫る眩い光線。
これは転移で回避。ベンケイを中心に周りの木々が真っ二つにされて、三薙で光は収束する。
これは受けれない。プロトタイプベンケイには高出力レーザーが装備されていて、出力中は周囲を薙ぎ払えるマップ兵器なのだ。
クールタイムだね。動く弾薬庫だけど防壁のあるこのセカイで注意すべきは大口径ガトリングとカノン砲だけ。この距離でボクに当てるのは自分でも無理。
ボディの上に立って砲身を突き付けるとベンケイはそのまま沈黙する。
「お、お願い。 助けて……」
(女か……)
「人を殺そうとしといて、殺されそうになったら命乞い? それは、ちょっと都合よくない?」
「本当は戦いなんてしたくない。 強制されてるの。 生きていく為には仕方ないの……」
「そんな力があればどうとでもなったでしょ。 君が選んだ道だよね」
「家族が人質にされて、逆らえないの……」
思い入れがあるとダメだね。この操者は関係ないのに、物語のヒロインの顔がちらつく。彼女がどんな気持ちで兄の形見のベンケイで戦っていたのか……。何を考えて一人で物語を終わらそうとしたのか……。
会ってみたい、一緒にいたいなんて考えちゃうのはボクだけじゃないよね。
そう考えたら、このセカイもそうか……。ボクにはタイミングが悪かっただけで、誰かには憧れの夢のセカイ。
考えがそれたね。
「ボクには関係ない」
「……おかあ……さん……」
ドンッ。




