転生者
とりあえずカシュナッツのモノを踏みにじるとぐにゃりと嫌な感触がしたので、エチュードのは軽く蹴り飛ばしてからシャレードの核を放り投げる。
加減はしてるよ、力入れたらもげるからね。
カシュナッツはジュノーに下る気は無いし、エチュードもジャローダに下るつもりは無いらしい。
エチュードは行ってもよろしくてよ。対峙したらちょん切るけどさ。一回分命が助かるかもだからお得だね。
痛みから立ち直ってきたエチュードが付いてくると言うのだけど、女性達を護る人がいないから朝まで待機を命じる。カシュナッツは一緒に来て立場が悪くなってもいけないから同じく待機。
別にボクに見せなければ、何をしようと好きにすればいい。
知らん。
外に出て近くの気配はチェックしていくけど兵士はいないみたい。城壁の上にもいないので、みんな領事館かな? 各個撃破されるのは悪手だもんね。
町の大通りに人はまばら。もう直ぐ夕方になる時間だから、本当なら店が並んで仕事を終えた人達で賑わっているだろう時間なのに。
大通りをまっすぐ領事館へと歩いていく。
領事館で動きがあって大通りにジャローダ兵が並んで、建物の前には幹部だろう少女二人と男の三人組が立つ。
一人は小柄でかわいい女の子。軍服に日本刀を下げて、顔からは既に怒りが感じられる。
そして、ついに来てしまった……。もう一人の少女はとても、そう……とてもかわいい女の子。栗色の長い髪で頭にちょんちょんと耳が付いているの。そう、とてもかわいい獣人の少女。でも表情からは絶望が見てとれて、男にしがみついて今にも泣き出してしまいそう。
真ん中の男は背が高くて黒髪で整った顔立ちだけど少年と言ってもいいくらいの見た目で、ずっとケモミミ少女を優しく撫でてあげている。
兵士達が迎えてくれるのを気にせずに歩いていくと男が声をかけてくる。
「なんも気にせんと堂々としとんね。 はじめまして。 ユフィーリアさん」
「違うけど、お前は?」
「あぁ、そうやね。 俺は軍団長のヤマダハヤト。 それで、ユフィ……えっ? ユフィーリアじゃないの? ほんまに? したら名前は?」
「unknown」
「アンノーンね……。 ミニモンのキャラクターやんな? 俺も好きやから集めてたけど、なかなか出んのがおったやんな」
「違うけど」
「違うのか……。 炎翼はやってたよね?」
「やってない」
「あれ? 転生者だよね? どっから来たの?」
「ジュノー」
「そりゃ、そやね。 まぁ、とりあえず夕食でも……」「嫌」
「何しに来たん?」
「話し合い」
「そうやんな。 まあ、とりあえず上がって」
伸ばしてくる手ををスルーして階段を上がって領事館に入る。
兄様以外の男のエスコートなんていらない。帰ったら、タキナと兄様の所で優しくしてもらおっと。
建物内は食堂以外は人はいなくて、食堂では女性達が夕食の準備をしている。楽しそうなのでひとまず安心する。
部屋を一通り確認しながら領主の部屋へと上がるけど、ずっと隣で前世の事なんかを問いかけてきて煩わしい。そして後ろには小さいカティアと、それに必死にしがみつくケモミミ少女が付いてくる。
部屋では女性が二人で仕事をしてて、片付けられていて鎖や首輪なども残ってない。
「今は俺が使わせてもらってる。まぁ、座って」
促されるまま座ると、女性がお茶をいれてくれる。
「住民の代表達は?」
「もう夕方やから帰ってるよ」
「本題に入ろう」
「なぁ、転生者ってのは合ってるよね。 お願い、結婚して」
「はぁ? 死ねよ。 顔も見てない相手に何言ってんの?」
「もう男じゃなかったらいい、仲間になって欲しい。 このセカイは辛いやんか? 一緒に転生者集めて国つくらん?」
「嫌」
転生者の国か……。ミネルバに会った時から他にもいるとは思ってたけどね。
ダメだよ。後ろの小さいカティアがもう斬り掛かってきそうだよ。
「なんで? 今ある国よりは良い国できると思うし、君が国王でもいいし」
「なんでエチュードにあんな事させたの?」
「このセカイの人間なんて家畜以下やん。 腐った汚物が人の大切なもんを平気で踏み躙ってさ」
彼は遠い処を見つめて静かに歯を食いしばる。
ボクと一緒か。そして彼には傍にいてくれる人が……、自分を想って泣きながら抱きしめてくれる人がいなかったんだね。
「普通に生きてる人達には関係ないし、後ろの子達の前でそれを言うの?」
「こいつ等には悪いと思ってるけど、いくら好かれても誰と体を重ねても頭がそれを認めてくれへん。 だから頼む、一緒におってくれ」
「無理。 大切な人いるから」
「好きになってくれなくてもええから、友達でええから……」
今度は目を潤ませて身を乗り出してくる彼から距離をとる。
フードと面で顔も見えないのに? と、思ったけど、顔なんて関係ないのか……。それに、転生者かどうかは関係ないと思うけどね。
「ボクは君に興味がない。 ジャローダにはいかないし新しい国にも興味ない」
「それで良い。 ジャローダも抜ける。 君のとこに付く」
「……ちゃんと約束出来ないし、魔装機は取り上げるよ」
「ええよ!」
子供みたいで嬉しさが見て判る。嘘は無いと信じたい。
「他の兵士はどうするの?」
「好きにさせる。 ただ強いから軍団長してるだけやし」
「私は、一生ハヤトに付いていきます」
「エミュも……」
「好きにしたらええ」
「エチュード呼んで話しようか。 先ずは権限を移譲して」
来たね……。
ほんとに? どうする?
魔装機名グレートヤマダ…………? レスラーか?
魔装機名九郎判官義経?!
うそっ? ヤバい。早く見たい。
よくこの名前を上書きする気になったな。
頭悪いのか? やっぱり殺すか?
「まだ持ってるよね?」
「君も操者やろ? 魔装機の契約は一体だけ……あれ? なんで?」
「他の核とかないの?」
「君への愛に誓ってない」
「愛は要らない」
「冷たい……。 傷つくわ……」
「うるさい」
兵士達には戦闘の停止を命じてもらう。明日の朝に再度エチュードを交えて話をする事なったので、伝えてからエファを迎えにいこう。
日も落ちて、エファから離れて七時間くらいかな……。
「うぁーーーん、ひどいですぅ。 鬼です、悪魔ですぅ」
うん、ごめん。
非常事態を訴えてもシャレードに取り合ってもらえなかったらしく、彼女は汚くて人には見せられない姿になってしまっている。
魔装機の中はそうゆう事もあるから換気も排水も大丈夫なのだけどね。
「鬼でも悪魔でもないの。 これが人間のやる事なのっ。 わかる?」
「はい……」
「なら、もうしないよね?」
「はい……」
ダメだ。完全に拗ねてしまった。
もう夜だし、お風呂の準備をしてから彼女の下着を脱がす。顔を朱くして汚いからと拒絶するのは気にしない。
体から始めて髪の毛までゆっくり丁寧に洗ってあげてから、二人で湯船に浸かる。
フフフ、まだほっぺを膨らませたまま口は開いてくれないけどかわいい。
お風呂セットを片付けたら高級下着と高級寝巻きを着させてあげる。いやいやするのも気にしない。
夕食は円卓にテーブルクロスもかけてビッテンフェルト家フルコースを用意したらさすがに目が輝いて口が開くのだけど、目が合うと逸らされてしまう。でも体は正直で大きなお腹の音でさらに朱くなってかわいらしい。
「さっ、食べよ。 温かい方が絶対美味しいから」
「食べ物じゃごまかされないですっ」
「わかった、わかった。 はい、あーん」
フォークで油淋鶏的なお肉を口に運んであげたら、キュッと閉じていた口も匂いに釣られて入れてしまう。一口食べたら止まらないよ。凄い勢いで食べるのを見てると自然に微笑んじゃうよね。
「デザートもあるからねぇ」
今日は出血大サービスだよっ。




