嘘でしょ、そんな……
「嘘でしょ、そんな……」
戦闘後、少し休憩してエファを残した地点に戻るのだけど、ありえない事態にイライラを抑えきれない。
なんで……、どうして……、そんな。
ボクがもっとちゃんとしてたら……。
しっかりエファに伝える事が出来ていたら……。
もっと話をしておけば良かった。
もっと叱っておけば良かった。
後悔しても、時間は戻らない。自分自身に腹が立つ。
なんでこいつは寝てるんだ……? いや、なんで寝れるんだ……。
「おい、起きろ」
「…………」
「エファ!」
「先輩、ダメですぅ……」
「…………」
イライライライライライラ…………。
とりあえず服を脱がして下着姿で手足を後ろ手に縛る。
「んっ……」
などと、かわいい声を出しているが起きない。
彼女の真っ白な体が、まだまだ未成熟な事に救われる。理性が保てる。
まぁ、未成熟は未成熟で良いのだけど……。
彼女のシャレードを喚び出して、コクピットに寝かせたままで伝言だけお願いしておく。
上位マスター権限はボクが持ってるからね。
「反省しろ、バカ娘。 何も起こらなかったら朝までは縛ったままで良い」
「Yes Master.」
外に出たら穴を掘ってシャレードを入れて、色も同色に変えておく。
町に戻っても北門周辺に兵士の姿は無かったけど、町の人は戻り始めていたので尋ねると、この近くと南門の近くに兵士の詰所があるらしい。そーいやあったね。
城壁と建物の間は元々広く空いていて、このまま西に行った所に広場と大きめの建物がある。
広場に三人、中には十名ほど。
「やあやあ、待っていたよ侵入者君。 君は相当な強さみたいだけど、ここまでだよっ(キラッ)」
なんだこいつは? ニカッと笑った歯が光った様に見えてイラッとする。
長い金髪に碧眼のイケ顔でファーレンなら王族と勘違いされそうな感じだけど、軽そう、チャラそう、雰囲気0点満点。
横の二人は軍服ではあるけど女か? いちいちキャーキャー反応してうるさい。
「どうも、横失礼します」
スルーして横を通り過ぎようとするのを剣で塞がれる。
「通すと思っているのかな? 通りたくば僕を倒していくのだなっ(キラッ)」
不意打ち黒龍丸の横薙ぎ。は、異空間からの防壁に防がれる。操者ではあるんだね。
「な、何をしたっ?」
は?
横薙ぎもう一閃。挟まってくる障壁を打ち消して、そのまま振り抜くっ。
ガキッ。
ほう、まさか受けるとはね。
剣で受けた男は詰所の壁に激しく打ち付けられて崩れ落ちる。
「イイヨ様っ」
女兵士の一人は男の下に、もう一人はボクの前で剣を構える。
「どいて、女の子でも手加減はないよ」
「イイヨ様は殺らせません」
「その人は君の何? 上官?」
「た、大切な人です」
「どれくらい?」
「私自身よりです」
「(ふぅ)そっか、ボクは報酬に魔装機だけ貰えたら、命は助けてあげるけど、どする?」
「本当ですか?」
「ボクの大切な人に誓って」
彼女達が引いてくれたので、少し話をしながら魔装機の核を取り出す。
男はジャローダの貴族でウンダケハ家の次期当主。三人は幼馴染で貴族様との結婚なんて望めないけどお互いがとても大切に想いあってるんだって。
ならもう少し諌めてあげてね。
「次は無いから、ボクの前に出てこさせないでね」
「はい、必ず。 お名前を聞いてもよろしいですか?」
「うーん、一応素性は隠してるのだけどもね。 口外しないと誓える?」
「はい、誓います」
「ファーレンのユフィだよ。 もし、ジュノーかファーレンで困ったら名前を出してみて、力になれるかもしれないから」
「はい。 ありがとうございます」
牢屋の場所は教えてもらって、イイヨを回復させて、これでよしと。
さっきの音で外に出てきた兵士は、三人とは関係ないらしいので即刻処分する。
見ていた二人は血の気が引いてもどしてたけど、それは仕方ない。
実力差を知って、見逃してもらえる事を喜んで。
中に入るなりドアの陰から不意打ちで斬り掛かられるのを黒龍丸で弾いて、返す刃で両断する。
さらに一般兵を二人斬り伏せて、地下の牢屋へと続く扉を開く。
充満するカビ臭さと生臭い匂い。響き渡る人の呻き、喘ぐ声……、女性の声まで聞こえる。
何をされているのか想像出来ないほど子供じゃない。
怒りが湧いてくる、頭が黒く染まっていく。
ムカつく、八つ裂きにしてやる。
わざと靴音を響かせながら降りていくけど、声が止まる事はなくて心がざわつく。
降りた先は壁で区切られた檻が四つ、真ん中の二つの左側は二人の男女、右側は男一人に複数の女性……。
嘘でしょ、そんな……。
誰もこちらを見る事なく行為を続けている。自然に体が震えて怒りを抑えきれなくて、横の壁を思いっきり殴りつける。
轟音と共に大きく陥没してひび割れる壁、パラパラと天井から砂や埃が降る中、視線がボクに集中する。
「お前等……、何してる?」
足を進めながら仮面とフードを外すと、男二人は血の気が引いて顔が真っ青になる。
許せない。ボクの周りにパチパチと音を立てて電気が走る。
黒龍丸を握りしめて檻を切り裂くと、全員が飛び退いて壁に並ぶけど、男二人の股間に電気が走ってのたうち回る。
ボクが見たのは全裸で女性との行為に勤しむエチュードと、下半身を出して同じく勤しむカシュナッツ。
エチュードの周りにいるのは、ペハシコリの時に解放した女性達でカシュナッツのお相手は同僚の女騎士。
にったりと黒い笑顔が浮かんでしまう。
「フフフフフ。 二人共、ちょん切ろうかぁ」
「や、止めて……くだ……さい」
のたうち回りながらも、涙を流しながら懇願してくる二人に、また電気が走る。
「あー、不能って病気しってる? 使い物にならなくして魔法で治るか実験してみようねぇ」
優しい笑顔でエチュードに近づくのだけど、女性がボクに涙を流しながら縋り付いてくる。
「や、やめて下さい。 お願いします。 この人を許して下さい」
「なんで?」
「この人が好きなんです。 愛しているんです」
「ボクには関係ない」
「お願いします。 お願いします。 ………………」
引きずって進むけど、他の女性達までしがみついてきて足を止める。
「エチュードうるさい。 座れ。 なんで、こんな事になってんの?」
エチュードは勧誘を受けていて、下れば地位と、この女性達を貰えるって話で、最初は軍団長が見学する中で全員との行為を強制されたらしい。そして行為と話をするうちに、この女性との愛が生まれたのだと。
女性達は報酬も良いしエチュードは顔も良いからまんざらではなかったらしい。自分達はもう汚れた身だから……とも話す。
だから、何? 人が心配してる時に気持ちよくなってただけじゃんね? エチュードに同情するとこ無いし、この怒りはどうしたらいいの?
で、カシュナッツはなんで?
こっちの二人はマスチペの占拠に反対したから勾留されていたんだけど、隣からずっと声が聞こえてて、元々お互い気になってたから我慢出来なくて行為に及んだと……。
有罪。ちょん切ろう。
これも、女騎士が必死に許しを懇願してくる……。
もう、今日はなんなのさ。




