その細い目で、何を見る事が出来るの?
「君、めっちゃおもろいなぁ〜! なぁ、ちょっと茶ぁでも飲まへん?」
うっわぁ、すっごい細い目。マンガに出てきそうな関西風の話し方で、目が見えないほどの糸目のイケメンが話しかけてきた。
髪は綺麗な白色で、糸目だから? 関西風だから? 口は親しげだけどお稲荷様のような底が見えない怪しさがある。
そして、彼の腰には一振りの刀が佇んでいる。
「お断りします」
「そこをなんとかっ? 奢るしっ?」
「お断りでーす」
「……」
「そうやっ、僕の刀みたやん? いい店あるから、いかへん?」
ふーん、気づいたんだ。
どっから見えるんだ?
刀の店かぁ、行きたいのは行きたいけどぉ。
「珍しいから目に付いただけですよ。この国ではあまり人気がなくて希少品ですから……。」
「それは使い方がムズいから扱えへんだけや。数少ないけど、愛好家はおるから扱ってる店とかあるし。それに、赤髪の細身の曲刀を使う少女って君やろ? 前から会ってみたい思うててん」
「人違いです、それじゃ」
ボクは赤髪じゃない。普段は武器は下げてないけど、別に隠してる訳じゃないから見た事がある人は少なくはない。
だけど、やっぱり雰囲気が怪しい。
「ちょっちょっちょ、信用してへんね? 僕はフェイク、第三騎士団で三番隊の組長させてもーてる騎士なんや。 君の話を聞いて探しとってん。 手合わせしてくれる報酬としてお店を教えるってどう? それか……。 そしたら……。 それとかローブとかは? もうボロやん? 騎士団用のローブええ奴あんねん」
「あんな真っ白で派手なローブいりませんよ」
「ちゃうちゃう。屋外演習用の丈夫なやつあるからそれでどやっ?」
「ふーん、見てから決めても?」
「そうこなな! ほな行こっ!」
軽いなぁ。
怪しさはあるけど、悪い人じゃなさそう? 騎士団の隊証も持ってるから大丈夫かな?
二人で騎士団詰所方面の馬車に乗り込む。
別に歩いてもいいんだけど奢ってくれるらしいし、街中を走ってる馬車乗った事ないんだよねぇ。
馬車の中では話が弾む。フェイクはよくしゃべるけど話が上手いのかな? うざったくはない。
刀の話、騎士団の話、フェイク自身の話しなんかであっと言う間に騎士団詰所まで着いてしまった。
フェイクと一緒に詰所に入ると二日連続の登場にちょっとザワついた感じになる。
「はいはーい。仕事があるもんはそのまま。 空いてるもんは修練場に集合や」
「聴いてませんけど?」
「細かい事は言いっこなしや」
私のジト目はサラッと流して良い笑顔。
………………
修練場は建物の裏側の屋外で野球ができそうな広さ。
もとからいた人達と一緒にきた人達で三十人ほどになったね。
「ちょい待っといてな」
フェイクは、ボクを残して小さな小屋に歩いていってしまう。
置いていくな。騎士達に囲まれて自己紹介や握手を求められた。
数人だが広場で見ていた人もいたらしい。
しばらくして戻ってきたフェイクの手にはローブと木刀が握られている。
「どや、気に入るか?」
うん、良いね。さすがは騎士団用、上等な生地で丈夫で肌触りも良い。色はグレー、カーキ、ブラウン、ブラックの四色だ。
「交渉成立!」
親指を立てて返す。
「よっしゃ、ほなやろか。 お前等よう見とけよ」
手渡された木刀も特注だそうで、重たく握りも実物に近く作られている。
うん、こっちもいい。