素直すぎるからっ
領事館の敷地のスペースに移動してのお楽しみタイムだっ。
さてさて、いでよシャレードっ!
今回は調整してコクピットに入らない様に出現させるのだけど……。
………………。
そうじゃない。
そうじゃないんだ。
炎翼の運営は何考えてんだぁーー。
シャレード君、君が悪い訳じゃないからね。
君はすごく良いよ、素敵だよ。
ただ期待というか、前提情報というか。
最初から神器が手に入るなんて思ってないし、主力MHを期待してた訳じゃない。
でもね、せめてベルンシャとかボロンシャとかさ、メロマイネとかあるじゃん?
ボクの目の前に現れた魔装機は、戦車を連想させるボディに砲台のような丸みのある頭と複眼のレンズ、シルバーとダークグリーンのカラーリングの無骨な機体。
これ、何だっけ?
さすがに時代じゃなくて判らないんだけど、なんとかドッグかレッドショルダーだった気がする。
肩、赤くないのに?
カッコいいはカッコいいんだけど違うぅ〜。
パイルバンカーの時点で予感はあったんだけど、銃や大砲なら大歓迎だけど直剣や日本刀が全然似合わない。
そしてライトピンクも似合わない。
色はこのままか……、リーフかデザートのカモフラージュがいいかな?
うん、町中も想定してナイトデザートカモフラージュで左肩パーツのみライトピンクにしよっかな。
武装が実体弾と、鞘なしの太いシャムシールが二本だけ?
一応両側の腰に付けれるのね。
名前は、なんとかドッグだし、レッドショルダーじゃないから……ケルベロスっ! と、思ったけどオルトロス!
よし、君の名前はシャレード・オルトロスだっ。
うんうん。
フランダースとどっちがいい?
えっ、フランダースは犬の名前じゃない? そうですか。
ネロ?
ボクはオルトロスと走り回っても問題ないよね?
今日は魔力の消費量の実験といこうじゃないかっ。
朝になって、お披露目な感じで大通りを西の門に向かってゆっくり進む。
ローラー移動なんだけど行進ってゆーのかな? ゆーよね?
ボクはフードをしたままで肩に載せてもらって、町の人に手をふるけど怖がられてるみたいで明るい表情はしてもらえない。
西の門から出たらローラーダッシュで南に向かう。
昼までに南側の国境と町の南側から東側にかけての軍事施設の処分の予定。
速さは自前のが速いけど、ローラーダッシュって快適だね。
南側の国境は黒竜を使ったので死体すらないのだけど、交代要員や異変調査と思わしき兵隊達を視界に入り次第実体弾で処分していく。
音は聞こえてるだろうけど特に反応している様子はない。
慣れてるのか、知らないからなのか?
今日は時間がないから楽に逝けて良かったね。
ん? 戦闘?
昨日の密入国現場付近ではシャルマン兵とジャローダ兵による戦闘が起きていて、圧倒的にジャローダが有利なんだけどオルトロスを発見した途端に動きが変わる。
一般兵はサッと川に入り三人の騎士が迎え撃つみたいだね。
男二人に女性一人。
あら、一人はこないだ約束をすっぽかした彼じゃない?
フフフフフ。
ちょっと遊んでもらおうかなっ。
「オルトロス。 敵さん何が出てくる? ツタージェとかジャロブーだったりしない?」
「ジャローダ タイプⅢの可能性90%です」
「真面目だなぁ。(ってか音声って、みんな同じ?) 音声の変更は出来る?」
「追加コンテンツです。 人気声優からボーカルAIまで幅広く用意してあります」
「うるさいわっ。 …………出来るの?」
「https://www………………」
「購入っ」
「オフラインです」
「そっか……」
「気を取り直してジャローダにその力示してやろーじゃないのよっ。 タイプⅢのデータは?」
「不明です」
「オーライっ。 肩の動きがいくない。 可動域増やせる?」
「肩部装甲無くなりますが?」
「よい。 実体弾斉射」
「取り外しました」
あーそーだった。
肩装甲の上の箱から撃ってたんだ。
ちなみに実体弾って肉体を打ち出してる様なものなんだって。
「いっくぞぉー。 10万ボルトォォォ(サンダー)。 十連っ」
10万ボルトは魔装機達の防壁に防がれる。
ふむふむ、魔装機三体とも出すんだね。
まぁ、出さないと一撃でやられちゃうからねー。
おい、運営……。
MH型じゃねーかっ、カッコ良すぎだろっ。
シャレードはイメージ違うだろっ。
真っ黒のカラーリングでイメージは黒騎士だけど形はベルンシャを少しスリムにしたって感じで右手に直剣、左手にベイルだね。
ベルンシャボロンシャって直ぐにやられちゃうけど機体自体は悪くなかったはず。
鎧騎士姿ってかっけー。
欲しい。 欲しすぎる。
シュツルム使えたら最高なのになぁ。
オルトロスには悪いけど好きな物は仕方ない。
主人公のライバル達って次々に機体代わっていくしねっ。
ボク悪役かっ? そういえば悪役だった。
フフフフフ。
シャムシール両手持ちで全速力ローラーダッシュからの斬撃と見せかけて防壁バッシュで一体を弾き飛ばしてそのまま走り抜ける。
力はあるし頑丈。
取り回しが難しいけどローラーダッシュも速いしカッコいい。
何よりカッコいい。
大したダメージじゃないだろうけど囲まれたくないからね。
「シャルマンの騎士は名乗りも上げないのかよっ?」
あら、彼がなにか仰っていますわ。
名乗り? なにそれ? 美味しいの?
いや美味しいですけれどね。
そもそも三体一だし、いざ尋常に……、とはいかないですわよね?
「データとれた? 防壁抜ける?」
「可能です。 予測の範囲内です」
動きは止めずに速さはこっちが上っぽいからかき回すよー。
纏まってる二体にアースクエイクで足止めして、離れてる一体に狙いを絞って距離を詰めると、合流しようと動いていた足を止めてこちらに構える。
反応は悪くないっ。
上段からの斬撃を姿勢を下げスライド移動で躱して、マルセイユルーレットの如く回転しながら遠心力をかけた一撃を背中に叩き込む。
「タイプⅢ、損傷大。 戦闘継続不可能」
「ライッ。 次っ」
ヒッヒッヒッヒッ。
揺さぶりにスライドで左右にスラロームしながら近づく。
アイシクルランスっ……十連っ。
これは防壁で止められるのは予想済。
ほらほら足元、足元っ。
アースランス……十連っ。
二体の足元から地面が剣山の様に襲いかかる。
ダメージは期待してないけど、動きにくいわな。
彼は上に飛んで避けるけど、もたついた一体を狙って一気に距離を詰める。
また上段からの斬撃? 冗談?
ベイルはなんの為にあるのかしらね?
斬撃を左手のシャムシールで外に流す、体を守ろうとするベイルは無視して外側に流れた右手を切り落とし、防壁バッシュで押し倒して首を刈りとる。
さてさて。
彼はベイルを捨てて直剣を両手持ちで上段に構える。
君達素直だなぁ。
君の打ち込みに付き合う必要もないのだけど?
などと言いつつも嫌ではない。
間合いギリまで寄って彼の上段に対して、左正眼の右は下段で脇に構える。
彼は動かない。
じりじりと間合いを測りながら腰を落として溜めていく。
オルトロス……硬いよ。
柔軟しろ。
引き絞り切った処でフルブースト!
に、見せかけたエアバースト。
………だから、素直すぎるからっ。
ボクのエアバーストに反応した彼は勢いよく剣を振り下ろした。
間合いとタイミングを外した二の太刀要らずは最悪だ。
フンッ。
振り下ろしに合わせて、スパッと首をはねた。