23.波の到来
ゴーン、ゴーンと砦の鐘が鳴らされる。
モンスターの波の到来を告げる鐘音に急いで準備をして砦に駆け付ける。
砦の広間にある水晶は真っ赤に輝き、
そこから滲み出るように赤い霧が広がって行く。
広間には、五十人程の冒険者が集まってきた。
広間の前に蒼君の先輩の猛さん、詩織さん、その他三人が並んだ。
「モンスターが向かって来る、事前の打ち合わせ通りの配置で頼む。
第一波だからそれ程脅威では無いが、新人は無理せずに。
今回は、モンスターの洞窟攻略は無しで防衛に専念してくれ。
砦の門の最終防衛は、今回俺のパーティが引き受ける
以上、質問が無ければ解散、各自の健闘を祈る」
私達は歩きで持ち場に向かった。
今回は砦を背に右手側の森林と砦城壁のやや砦に近い場所を任された。
事前の偵察でモンスターが割と多く流れてくるらしく、
私たちより森林に近い場所で上位職メンバーが多い聖女パーティがモンスターを討伐して、
討ちもらしを私達が処理する事になった。
しばらくすると探知スキルを使うまでもなく、
モンスターの群れが整然と進んで来た。
蒼は愕然とした。
一体何が起きているのか理解出来ない。
こちらへ向かって来るモンスターは、戦闘した形跡もなく傷一つ負っていない。
まるで無人の野を進んで来た様だ。
聖女達は、一体何をしているのだ?
身を隠す場所もなく奇襲も出来ないこの状況では、
モンスターに囲まれてしまう。
この状況で詩さんの範囲魔法を放って離脱しても、
モンスターが多すぎて囲まれてしまう。
モンスターは、通常のゴブリン、ゴブリン亜種多数、オーク数体。
この状況で普通の新人パーティが相手をしたら全滅するだろう。
だが、うちのパーティは、ポーションで能力を上げられて装備も充実しており、
各自のステータスも、きちんと方向性を持ってビルドが構築されている。
新人パーティレベルでは無く、中級者レベルまで届く位の実力だ。
「大和、後方の厄介なゴブリン亜種を頼む、回復、飛び道具を使う奴を優先、
俺は、魔法耐性があるから魔法攻撃は引き受ける。
竜司は、俺と一緒に中央から突撃、乱戦に持ち込む。
詩さんは、指示あるまで範囲禁止、各個撃破。
琴音さんは、前に出ず状態異常ポーションをまけるならまいてくれ、
傷ついたら各自ポーションで回復、いくぞ!!」
敵からも視認されているので、能力向上系のポーションを飲み、
蒼君の指示に従い前衛が群れに突っ込んで行く。
大和君がモンスターの群れを駆け抜けていく。
『バックアタック』
大和君のスキル。
移動、構え、奇襲、攻撃を一連の動作で敵後衛の更に後に周りこんで繰り出すスキル。
ゴブリンアーチャー(弓使い)、ゴブリンヒーラー(ヒーラー)など群れの後方にいる、
厄介なモンスターを倒すのに適したスキル。
竜司君は、『ラッシュ』を使っている。
通常であっても体力を削るのに、今は両手でスキルを使っているので、体力の減りも早い。
防具も揃えきれていないので、傷も一番負っている。
蒼君は、盾撃でオーク二匹を押し込み、剣で攻撃している。
私は、こちらに流れて来る敵に麻痺ボトルの中身をかけて応戦。
「新しい魔法覚えました」
どうやら詩ちゃんが戦闘中に貯めておいたポイントを使って、
スキルを習得してくれたみたいだ。
『氷の矢』
詩ちゃんの左手に氷の弦が右手には氷の弓矢が現れてモンスターに放たれた。
私が麻痺させたゴブリンを次々に射抜いてくれる。
威力は、氷投槍に劣るみたいだけど連射が出来る様で、こんな状況だとかなり有効だった。
「もう少しで楽になる、皆耐えてくれ!」
蒼君の激励に皆が気合を入れ直す。
そんな時だった。
「モンスター増援来ます」
大和君が大きく叫んだ。
目を凝らすと白いモンスターがゆっくりとこちらに向かって歩いて来る。
「馬鹿な、スケルトンだって......」
不味い、最悪だ。
蒼は、向かって来るモンスターを目にして、
全滅の二文字が頭に浮かんだのだった。




