21.波への備え①
砦の広間の水晶の色が赤く染まっていく。
通常無色の水晶は、波が近づくにつれて少しずつ濃い赤色に変化していくのだ。
その色は、もう二、三日で波が到来する事を告げていた。
武器防具屋ケンちゃんから帰ってきた後に大和君に頼まれて、
私は早速武器属性付与のスキルを使う事になった。
一応安い武器で何度か試した事はあったが、
流石に鋼装備への付与は初めてで緊張する。
武器属性付与と言っても手順的には通常の調合と変わらない。
左手で武器と付与素材に手を置いて、右手を付与後の武器を置くイメージ。
人によっては、右手と左手が逆の人もいるみたいだけど、
私は、左から右に流れるイメージの方がしっくり来る。
大和君の短剣の属性付与は上手くいった。
正直一安心だ、出来たのは毒と麻痺を与えるた短剣をそれぞれ一本ずつ。
麻痺は、相手に傷を付ける度にある程度まで蓄積していく、
小型~中型までのモンスターに有功。
毒は一分間に3%のダメージが五分間続く。
そもそも体力が少ないモンスターには効果が少ないが、
大型のモンスターにはかなりのダメージを与える事になる。
例えば、体力1000のモンスターになら、
全部で30✕5=150のダメージを与える攻撃になる。
次の日、新調した装備や新たに憶えたスキル、それを使用した際の立ち回り。
波を控えて最終確認をする事にした。
新しくスキルを覚えたのは、蒼君と竜司君の二人。
その他のメンバーは、現状あまり良いスキルが無かったので保留。
蒼君が憶えたスキルは、大防御というスキル。
大盾専用のスキルらしく、スキルの効果時間内は、
防御力が大きく上がるらしい。
だけどデメリットがあり、防御力が上がっている間は、
攻撃力が少しだけ下がってしまうらしいので、
モンスターの敵意の調整が少しシビアになってしまうみたいだ。
竜司君が憶えたスキルは、乱撃と言うスキル。
高速で何度も敵を斬りつける技らしい。
このスキルもデメリットがあり、スキルを使うと体力が減ってしまうみたいだ。
これは私的に少し辛くて、攻撃を受けていなくて傷もないのに、
体力が減ってしまうから見た目で分からない。
スキルを使用したら回復ポーションをボトルでかけてあげれば良いのだけど、
竜司君だけを見ている訳にいかないので、自己申告して貰う事にした。
「討伐場所の希望はありますか?」
「波を想定して連携を確認しておきたいので、個別モンスター相手ではない場所で、
波の前に負傷したくありませんので比較的に難易度が低い場所をお願いしたいのですが」
詩織さんは、蒼君からオーダーを聞くと、
カウンターに広げた地図を確認して一点を指さした。
「でしたらここら辺がオススメですね
浅い場所と言っても周り一面が森林ですので、
売店で探知スキルで探知できる杭を買って行かれると良いと思います。
効力は一日程度ですので、それ以上に迷ったら木々が開けた場所に出て、
森入り口に上げているバルーンを目安にして下さい。
徒歩で日帰りはできますが、はじめての場所ですので、
行きは馬車でいかれることをお勧めします。
森の入り口まで小金貨一枚かかりますが、それでよろしければ」
「はい、それでお願いします」
売店で会計を済ませて、簡易地図を受け取った後に、
砦の馬車乗り場で馬車の御者の人に切符を渡して森へ向かった。
いつもなら私の格納で装備を運ぶのだけど、
御者さんもいるし馬車での移動なので、今日は装備したままだ。
森の入り口まで三十分もかからずについてしまった、
一度便利さを知るとやめられなくなってしまう。
もしかして詩織さんの罠にまんまとハマってしまったのではと邪推してしまうのは、
オークソルジャー物語のせいだと思う。




