20.波
注)設定説明回です
この世界には、波という現象が定期的に発生する。
波とは何か?
所謂、モンスターが大量に群れをなして行動する、
スタンピードと似たような現象だ。
では何が通常のスタンピードと違うのか?
第一に、定期的に年に六回発生する事。
第二に、前半は弱いモンスター、
後半になるにつれて強いモンスターが発生する法則がある事。
第三に、モンスターに明確な目的があると思われる事。
恐らく砦の広間にある水晶の破壊が目的と思われる。
これを破壊されると新たな転生者がこの世界に転生して来れなくなる。
いずれ能力ある人間が消耗してモンスターの世界となるだろう。
まるで出来の悪いゲームである。
だがゲームであると仮定した場合、人間側にだけ敗北条件があるとは考えられない。
冒険者もただ考えなしに戦って来たわけでは無い。
去年モンスターが発生する洞窟へ調査に行ったのだ。
当然、まだモンスターが弱い第一波の時に調査隊がくまれて、
第一回目の調査が行われた。
モンスターを倒しつつ洞窟を進むと見えない壁の様な物に阻まれて前に進め無くなった。
調査を止むなく打ちきった。
次に第二波の時にも同じく調査を行った。
一回目の調査の際にあった壁は消失していて、
更に奥に新たな壁が出来ていた。
冒険者達は、これらの情報を元に推測して結論を出した。
人間は壁を超えて洞窟の奥に進めない。
モンスターは、強さによって通り抜けられる壁があり、
強いモンスターは、強さに応じて後半に現れる壁しか超えられない。
これは想像でしか無いが、最後の第六波の際に全ての壁がなくなり、
洞窟の最奥にあるであろうモンスターが発生する水晶にたどり着けるのだと思う。
この壁のシステムは良く出来ていると思う。
モンスターは、種族によって強弱が決まる。
モンスターも同一種族であれば経験を積んでいた方が強いが、
経験を積んだゴブリンが経験を積んでいないドラゴンに勝てる訳がない。
それに比べて人間は、種族が固定だ。
レベルやスキルなど上げて段階的に強くなっていく。
いきなり最強モンスターが襲ってきたら、たまったものではない。
段階的に経験を積めるのは人間側にも都合が良い。
とはいえ、モンスターにとっても経験を積むことは全く無駄では無い。
洞窟最奥部にいる数々の波を経験したモンスター、
その中でも頂点に位置するモンスターのリーダーの強さは計り知れない。
冒険者は、この見えない壁を門名付けた。
昨年、冒険者達による最終攻略が決行された。
結果は失敗。
モンスターのリーダークラスを何体か倒せたが、
最奥部を攻略する事は出来なかった。
二十人以上の冒険者が再起不能、若しくは死亡。
今回多くの新規転生者が現われたのは、その補充の為だろう。
あまりにも大きな被害。
全体人数に対する新人の割合が多すぎる。
今年は無理をせずに、出来るだけ死傷者を出さずに新人の育成に力を入れる。
それが冒険者上位者達の結論だ。
そんな時に、錬金術師と言う今までいない職種の女の子が転生して来た。
その子が作るポーションの効果は、破格だった。
冒険者の生存率が飛躍的にあがる。
上位者達は歓喜した、冒険者の死亡率が下がる。
全体のレベル底上げに非常に有効だった。
だが、その女の子は非常に自己評価が低かった。
自分の価値を全く理解していない。
この世界が出来の悪いゲームだと仮定すると、
第一に決めるのは何であろう?
恐らく、サーバ、活動拠点だと思う。
国外との物資のやり取りで、この国以外にも冒険者の拠点とする国がある事は明確だ。
では、次に決める事は何だろう?
上位陣の一部からは、琴音にそれを伝えようという意見もあったが、
琴音のパーティリーダーの蒼に任せる事にした。
信頼出来る人間から伝えられた方が、より強く、より深く心に響くからだ。
だが時間は待ってくれない、まもなく第一波が訪れる。




