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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

余命宣告で入院中にやってきた悪魔が落ちこぼれだというので可哀想だから契約してあげたのに、なぜか悪魔が私の魂をとってくれない

作者: 雨宮 小鳥

「嘘つき」


 人気のない河原でしゃがみ込んでいた私は、足元の小石を拾って川に投げ入れた。

 やり場のない苛立ちが込められた小石は、穏やかな川の流れに小さな波紋と少量の水飛沫を残してちゃぷんと沈んでいった。

 しばらく揺れていた水面は10秒と経たずに元の流れに飲み込まれ、川は投げ入れられた小石の存在などまるで気にしていない様子で穏やかに流れ続けている。

 それがまた気に入らなくて、私は再び小石を投げた。


 ちゃぷん。


 石を投げた右腕が酷く重い。

 退院したばかりの私には、足元の小さな石を拾って投げる、という簡単な動作でさえ負担になるようで、流れ続ける川を前に自分の無力さを感じずにはいられなかった。


「嘘つきーーー」


 届くあてのない彼女に対する非難の言葉を、川は静かに受け止めていた。




  ◇ ◇




 ××病院

 A棟 207号室 白川(しらかわ) ゆり



 病室のベッドの上、それが私の最期の場所……ーーーのはずだった。



「余命一ヶ月です」


 余命を告げる医師の声は淡々としたものだった。

 憐れみの色も、無念さも何も感じさせない、ただ事実を述べているだけ。

 そんな感情の希薄さがかえって私に余命(それ)が現実なのだと実感させた。


「……そうですか」


「会いたい人がいらっしゃるのであれば、お早めにご連絡を」


 それから入院の手続きをして、この何もない部屋が私の寝室となるまでの記憶は曖昧だ。

 余命宣告を受けた時は冷静に対応できていると思っていたけれど、実際はそんなことはなく、私はそれなりに動揺してそれなりにショックを受けていたらしい。

 それでも、余命そのものはすんなり受け入れることが出来ていた。どこか腑に落ちた感覚さえあった気がする。


 幼い頃から身体が弱く、一時期は何歳まで生きられるか分からないと言われていた私からしてみれば、23年間動き続けてくれたこの身体は十分過ぎるほど頑張ってくれたと言って良いだろう。

 医師が言うには、私は世界でも症例が数例しかない奇病で、ある日を境に身体が徐々に衰弱していく病気らしい。

 その”ある日”が来てしまったのだ。


 幸いなことに最期の苦しみはほとんどないらしく、入院は必ずしも必要ではないとのことだったが、訳あって親類縁者のいない私は世の中に迷惑をかけないため、入院という選択肢を取った。

 どうせ終わりが見えているのなら、と静かに過ごせる個室を選んだことが最後の贅沢と言えるかもしれない。


「会いたい人、なんて居ないんだけど」


 特に意味もなくスマホの連絡先を上から下までスクロールする。

 中には懐かしい名前もあったが、だからといって会いたい人という訳でもなかった。だいたい、このスマホに登録されている連絡先が今も通じるかどうかさえ怪しい。


「ちょっと退屈なくらいね」


 病室の窓から外を眺めると、窓の先には病院内に設けられた公園があり、検査着を着た子どもたちが遊んでいる様子が見えた。まだ幼い彼らも、それぞれに病を抱えた患者なのだろう。




 そうして何の不調も感じないまま数日が経った頃、彼女はやってきたーーー。



「……あ、あの」


 お昼ご飯を食べた後、眠気に誘われるまま微睡(まどろ)んでいた私は、近くから聞こえたか細い声に意識を浮上させる。

 今日は検査の予定は無いし、午後の検温の時間にもまだ早いはず。

 病院関係者以外、私の病室に訪れる人はいない。

 私は気のせいだろうと結論付けて、もう一度微睡(まどろ)みに身を委ねる。


「……し、しらかわさん」


 か細い声は先ほどより幾分(いくぶん)大きな声で、今度は私の名前を呼んだ。

 名前を呼ばれて眠気が遠のいてしまった私は、仕方なく目を開いて声の主を確かめる。

 ぼんやりとした視界が映し出したのは、淡い桜色をした髪に血のような深い赤を(たた)えた瞳ーー。

 人間離れした色彩の女の子が私のお腹の上にペタンと(またが)って、もじもじとこちらの様子を伺っている姿がそこにあった。


「ーーーーっ!!!」


 私は声にならない悲鳴をあげて、ベッドの上を後ずさった。

 悲鳴になり損ねた息が、喉からひゅうっと漏れる。


(え、待って、どういうこと?私の上に女の子が乗ってる!?)


 パニックを起こしつつも手探りでナースコールのボタンを探し、カチカチと何度も押した。…が、何の反応も返ってこない。


「あの、大丈夫…。おちついて…」


「いや、この状況で落ち着けないでしょ!!」


 突然大きな声を出した私に驚いたのか、正体不明の女の子は目を大きく見開いてぱちくりさせたまま、固まってしまったようだった。

 逆に声が出たことで(いく)らか落ち着きを取り戻すことができた私は、一度大きく深呼吸をしてから状況を確認する。


 私のお腹の上に女の子が1人、私の目線より少し高い位置からこちらを見下ろしている。

 たどたどしい話し方から子どもかと思ったが、よく見るとそうでもないらしい。

 布の面積が小さ過ぎるのではないかと思われる露出の多い服は、彼女の身体を申し訳程度に覆っていたが、彼女の豊満な胸を支えるにはあまりにも心許(こころもと)なかった。


 そして彼女の頭からは2本の角が、背中からはコウモリの羽根によく似た黒い翼が生えていた。


 どうやら私はおかしくなってしまったらしい。

 余命宣告なんてとっくに覚悟していたことだと思っていたら、こんな訳のわからない幻覚を生み出すほど心はストレスを感じていたようだ。

 お腹の上に重さを全く感じないのが、彼女が幻覚であることの何よりの証明だろう。


 私はふーっと息を吐き出して気持ちを落ち着ける。


「えーと、そこのキミ。とりあえず私の上から降りてくれないかな?それと目のやり場に困るから、できればこれを羽織ってくれると嬉しいんだけど…」


 幻覚に布を羽織ることができるのか疑問に思いながら、ベッド脇の棚の上に置いてあったブランケットを差し出す。

 女の子は無言でコクリと頷くと、ブランケットを受け取って私の身体の上から降りてくれた。

 ベッドから降りたはいいものの、身の置き所が分からないようで、きょろきょろと辺りを見回している。


「そこ、座っていいよ」


 私は見舞客用の椅子を指差しながら、手間のかかる幻覚だな、などと思う。


「あの…」


 促されるがままに椅子に座った女の子は、羽織ったブランケットの両端を胸の前できゅっと握りしめると、おずおずと口を開いた。


「わたし、あなたを誘惑しに来た悪魔です」


「なるほど、悪魔ね。確かに頭に変な角も生えてるし、我ながらディティールにこだわりを感じる幻覚ね」


「げ、幻覚なんかじゃありません!わたし、ほんとうに悪魔です!!」


 私に相手にされていないと感じたのか、女の子は頬を膨らませて抗議してきた。

 女性らしい身体つきに比べて、随分と幼さを感じさせる言動に、合法ロリ、という単語が頭に浮かぶ。

 死に直面した私は、何というマニアックな幻覚を生み出してしまったのだろう。そんな性癖はなかったはずだけど、いざ目の前にこんなにハッキリ現れている状況を考えると、実は隠された欲望があったのかもしれない。


「いや、でも、、流石にそんなはずは…」


 私が自分の内面に隠された性癖に苦悶の表情を浮かべていると、彼女は何を勘違いしたのか「わたしが悪魔だってことを証明します」と言って立ち上がった。


「おー!悪魔によって行われる存在証明…これぞまさしく悪魔の証明、というわけね」


 オカルトを全く信じていない、という訳ではなかったけれど、悪魔の存在なんて考えたこともなかった私は、何とも上手いこと言ったものだ思ったのだが、女の子にとってはさほど面白くもなかったようで、彼女はくすりともしなかった。むしろ大真面目な顔をしている。


「こういうのはどうでしょう?今からあなたが望む通りの夢を見せてあげましょう」


「ん?それ、私寝ちゃうってことだけど良いの?」


「え……」


 寝てしまえば嘘か本当かなんて分からない、という私に、自称悪魔ちゃんは眉間にしわを寄せて考え込んでしまう。


「それなら、今あなたが1番食べたいと思ったものを、何でもすぐに出してあげましょう」


「んー、悪くないけど、それってただの手品じゃない?」


「あ、悪魔の術を手品といっしょにしないでください!」


 手品と言われたのがよっぽど気に入らなかったのか、目に薄っすらと涙を浮かべている。

 そしてほんの少し考えるような素振りを見せた後、女の子は躊躇(ためら)いがちに口を開いた。


「そ、それなら……ふつうの人間では味わえないような…き、気持ちイイことしてあげます」


 何を言っても悪魔だと信じない私に、最後の切り札といった雰囲気で、だけどとても恥ずかしそうに彼女はそういった。段々消え入りそうになる声は、最後の方はほとんど聞き取れない。

 その顔は羞恥で真っ赤に染まっていて、とてもじゃないけれど何も出来そうには見えなかった。


「…ふ、ふふ、あはは」


 私は耐えきれなくなって大笑いしてしまった。

 こんな風に声をあげて笑ったのはいつ振りだろう。もう前回がいつだったのか思い出せないぐらい久しぶりのことだった。


 急に笑い出した私に困った自称悪魔の女の子は、行動を起こすべきかどうか迷っている様子で、突っ立ったまま視線を彷徨(さまよ)わせている。

 もし彼女が私が生み出した幻覚だというなら、私をこんなにも笑わせることなんて出来ないだろう。


 私はすっと右手を差し出した。


「いいよ、キミが悪魔だって信じてあげる。それで、キミの名前は?」


 右手を差し出しながら、悪魔に握手を求めるなんておかしなことをしているなと思った。だけど出してしまったものを引っ込めるわけにもいかず、彼女が私の手を取ってくれるのをじっと待つ。


「…わたしの名前はリリム。あなたを誘惑する悪魔です」


 リリム、と名乗った彼女の手はとても温かくて、なんだ最初からこうしていれば良かった、と思った。




  ◇ ◇




 それからリリムはほぼ毎日、病室を訊ねてきた。

 私を見舞いにくる人なんて居なかったから、彼女との時間は私にとって毎日の楽しみになっていた。


 リリム(いわ)く、彼女は落ちこぼれの悪魔なのだそうだ。

 悪魔は人間と取引きをして、願いを叶える代わりに代償をもらう契約を交わすものらしい。だけど彼女は失敗続きで、今まで一度も人間から代償を取れていないという。


 私には悪魔の事情はよく分からなかったけれど、それが良い状況ではないことだけは分かった。

 それに、リリムが初めて病室に来たときの様子から考えて、この先もきっと厳しいのではないかな、と思った。

 でもそんなことは彼女自身が1番よく分かっていただろうし、余命いくばくもない私が心配することでもなかったので、口にはしなかった。


「白川さんは何か叶えて欲しいことはないですか?」


 リリムが私に望みを聞いてきた時も、別に同情するようなことはなかった。


「叶えて欲しいことなんて何もないよ」


 幼い頃からずっと病弱で、人より命の期限が短いことを感じていた私は、多くのことを望まないようにして生きてきた。

 人間、欲がなければ些細なことで、それなりに幸せを感じられるものだ。

 友達が欲しいと思えば一人きりの夜は孤独に感じるだろう。

 けれど、最初から友達を望まなければ、孤独な毎日こそが日常になる。

 それで寂しさが消えるかと言えば、その答えは難しいところだけど、とびきり楽しいことがなければとびきり寂しくなることもない。

 それが私の生き方だった。


 この手に掴むのは、いつでも手放せるものだけ。


「リリム、私と賭けをしない?」


 だから私がリリムに賭けを持ち出したのは、何か叶えて欲しいことがあったからではない。

 残された時間の退屈を紛らわすための、ほんの気まぐれでしかなかった。


「私が叶えたくなるような素敵な提案をしてくれたら、それを私の望みにしてあげる」



 余命宣告を受けてからすでに一週間が経っていた。

 私とリリムに残された時間はあと三週間ーー。




  ◇ ◇




「白川さんの病気を治してあげましょう。今よりずっと長く生きられることになれば、やりたい事を何だって叶えられますよ」


 最初に提案されたのが病気を治すことだった。

 まぁ、当然だろう。だってここは病院で、私は余命宣告を受けているのだから。


「0点ね。人間って、急には生き方を変えられないものだよ。それにね、私は私の生き方を結構気に入っているんだ」


「れ、0点!?そんな…。白川さんの考えることはむずかしくて、わたしには全く理解できません」


 自信たっぷりに胸を張っていたリリムは、0点という予想外の評価にずるずると床に崩れ落ちるようにへたり込んだ。

 初日に着ていた面積が小さ過ぎる服を禁止にしたところ、彼女は黒いベビードールのような服を着用して現れるようになった。胸元はえぐれるように大きく開いており、元の服とたいして変わらないように思えたけれど、これがお互いの妥協点として私は許容することにした。


「落ちこぼれの悪魔さん、他にご提案は?」


 私はリリムのそばに行ってしゃがみ込む。

 彼女の唇は瞳と同じように艶やかな朱い色をしていた。

 気持ちいいことをしてくれる、と言った言葉を思い出した私は、リリムはキスが上手いだろうか、と考える。例えキスが上手くてもそうでなくても、この艶やかな唇は美味しそうだなと思った。


「ちょっと、近いです…」


「毎日こんな服で遊びにきてくれるから、てっきり誘ってるのかと思ってたんだけど」


 顔を近付けただけで恥ずかしそうに頬を染めるリリムが可愛くて、ちょっとした悪戯心が湧いてくる。

 大きく開いた胸元の縁をつーっと指でなぞると、ひゃんっと変な声を出して、リリムはあっという間に部屋の端まで逃げてしまった。


 いけない、危うく伸ばしてはいけないところまで手を伸ばしそうになってしまった。


 私はベッドに戻り、反省する。

 もしかしたらリリムは本当は優秀な悪魔で、宣言通り私のことを誘惑しに来たのかもしれない。


「次は素敵な提案を持ってきてね、可愛い悪魔さん」


 全身を真っ赤にして瞳を潤ませるリリムは、次は納得させてみせます、とか細い声で応じると、そのまま部屋を出て行ってしまった。




  ◇ ◇




 ーーー次の日、リリムは病室に来なかった。



 私は誰も訪れない病室で、この部屋はこんなにも静かだったのか、と今更のように気が付いた。



 次の日もリリムは来ない。



 彼女はもう来ないのかもしれない、と私は思い始めていた。


 一昨日、ちょっと調子に乗って揶揄(からか)ったのが悪かったのかもしれない。

 それとも、やっぱり彼女は私が生み出した幻覚で、私の妄想力に限界がきて消えてしまったのかもしれない。


 私はリリムが来なくなってしまった理由を、ああでもない、こうでもないと考えることで、彼女がいない時間を埋めようとしていた。


 だけど考えれば考えるほどに、今ここに彼女はいないのだ、ということを強く感じて、彼女が作った穴は埋まるどころか拡がっていく一方だった。




  ◇ ◇




 リリムが病室に来なくなって三日目、彼女は何事もなかったかのように現れた。


「白川さん、今日はすてきな提案を思い付きました!会いたい人に誰でも会わせてあげましょう。悪魔のわたしになら死んでしまった人間だって呼び出せます」


 それは待ち焦がれた彼女の声だった。

 どこか舌足らずで砂糖菓子みたいな甘さを含んだ、私を惑わす可愛い悪魔の声。

 私はベッドから飛び降りて裸足のまま駆け寄って、勢いのままにリリムを抱き締める。


「30点。残念だけど、会いたい人にはもう会えたから必要ないの」


 リリムは突然の出来事に動けず「え?」と首を傾げている。

 力一杯抱き締めたつもりだったのに、私の腕は彼女に優しく触れる程度の力しか出せないようだった。


 私はリリムを腕の中から解放して、彼女の両手を取った。

 彼女の手は、やっぱり温かかった。


「リリム、一緒に海を見に行かない?」


「それが白川さんの叶えて欲しいこと、ですか?」


 彼女の赤い瞳の奥が一瞬、チカッと(きら)めいたような気がした。


「ううん、これはただのお誘い」


 私は少し考えた後、そう言った。

 大人はいつだってズルをするものだ。余命少ない私の小さな反則ぐらい、見逃してもらえるだろう。


 私とリリムに残された時間はあと十七日ーー。




  ◇ ◇




 外泊許可はあっさり降りた。

 私の病は急激に悪化するようなものではなく、病院にいたからといって何か治療法があるわけでもなかった。

 それならば身体が楽に動く今の内に好きなことをした方が良いと、病院側も考えたようだった。


 宿までは電車で2時間。

 決して短い時間ではなかったけれど、リリムと病室以外の場所に行くというのは想像以上に気分を高揚させた。


「白川さん、海が見えて来ましたよ」


 電車の窓を開けて子どものようにはしゃぐリリムの姿を、目を細めて眺めていた。

 リリムが何歳なのかは知らなかったけれど、それほど世間知らずというわけではないらしい。

 さすがに改札の仕組みには戸惑っていたものの、電車が線路を走る乗り物で、海はただの水溜りではないという程度の知識は持ち合わせていた。

 今日ばかりは服装に配慮して欲しいと頼んでみたら「この格好で出歩くとでも思っているんですか?」と、何故か白い目をされてしまった。


 そんな彼女の今日の服装は、白いワンピースに麦わら帽子という悪魔らしからぬ出立ちだ。

 羽根や角は隠すこともできるらしく、それらを隠したリリムはどこからどう見てもただの人間にしか見えない。

 今は麦わら帽子を被るほど夏の盛りではなかったけれど、よく似合っていたので黙っておくことにした。


 一泊二日。

 それが私たちに許された自由な時間だった。

 宿のチェックインを済ませた私は、サンダルを片手に浜辺へと急いだ。

 やっぱり海は窓から見るより、砂浜を歩き、波を感じるに尽きる。


 私とリリムは波打ち際の少し手前に腰を降ろし、寄せては返す波の音に耳を傾けていた。


「この後は温泉に入って、それから豪華な夕食だね」


「今日の白川さん、なんだかすごく楽しそうです」


「それはまぁ、狭い部屋にいると退屈だし。でも正直、外の空気がこんなにも美味しいとは思わなかったかな」


 本当は恥ずかしがり屋の悪魔が来てくれたおかげでちっとも退屈してなかったけれど、彼女にそれを教えるつもりはなかった。


「波の音を聞いてると、何もかもがどうでも良く思えてくるね……」


 それは自暴自棄になって言っているのではなかった。

 むしろ今が人生の中で一番充実した気分と言っても過言ではない。

 私は一人で満たされた心地になっていた。


「わたしに叶えて欲しいことはありませんか?」


 だから彼女の問いかけに、私はやっぱりこう返すしかなかった。


「叶えて欲しいことなんて何もないよ」


 リリムは私の答えを聞いて、どこか寂しそうな顔をしていた。


「わたしには、これが最後のチャンスなんです」


 彼女の小さな声はザァザァと絶え間なく聞こえる波の音にかき消されて、私の耳には届かなかった。




 それから予定通り温泉に入って、旅館の豪華な懐石料理を食べた。

 リリムにとって温泉は初めての体験だったらしい。温かいお湯が流れ続ける湯口を不思議そうに見つめ、湯上がりのしっとりした肌にたいそう感動していた。

 懐石料理は美味しかったけれど、私の胃には収まりきらなくて、すぐに苦しくなる自分の胃腸をとても恨めしく思った。


 …少し前まではこれほど少食ということはなかった。私の身体はやはり少しずつ弱くなっていっているのだろう。



 身体が弱っていることを実感すると、無性に寂しくなった。



「ねぇリリム、今日は楽しかった?」


 夜、私は隣りで横になっているリリムに(たず)ねた。


「どうでしょう。病院の外なら、白川さんの叶えて欲しいことが知れるかと思ったんですけど…」


 彼女の声に元気がないように感じられた。

 リリムが楽しんでくれてなかった、そう思うと寂しさは余計に増して、途端に胸が苦しくなった。


「…叶えて欲しいこと、ひとつあるよ」


 私は苦しさから逃れたくて、つい伸ばしてはいけないところまで、手を伸ばしてしまう。


「ほ、ほんとですか!?」


 一転して明るくなるリリムの声に、私は笑みを深める。

 がばっと上体を起こした彼女は、私が何を望むのか、その答えを息を詰めて待っていた。

 赤く燃える瞳に吸い込まれるように近付くと、リリムの艶やかな唇にそっと指で触れる。


「私の名前を呼んでくれたら、教えてあげてもいいよ」


「し、しらかわ、さん…?」


 暗くてよく見えないけれど、彼女が顔を真っ赤にしていることだけは間違いなかった。

 熱を持って潤んだ赤い瞳を見つめながら、私は首を横に振る。

 呼んで欲しい名前はそうじゃなかったから。


「ゆ……ゆり…さん」


「よく出来ました」


 私はにっこり微笑んだ。

 乾いていた大地が潤うように、私の心の奥にじんわりと暖かいものが溢れる。


「リリム…キス、してもいい?」


 リリムは無言でコクリと頷いて、目を閉じた。

 ぎゅっと固く目を瞑っているリリムの様子からは、どう考えてもこういった行為に慣れているようには見えなかった。

 私は彼女の長い髪にするりと指を通して優しく撫で、唇の先にほんの少し触れるだけの軽いキスをした。


「………!!」


 ままごとみたいな短いキスだったのに、リリムは頭から湯気を出して目を回してしまったようだった。

 擬態も解けてしまったのか、頭からは角が見えている。

 私を誘惑しに来た、なんてどの口で言っていたのだろう。

 私は可笑(おか)しくて、愛しくて ……ーーーどうしてだか泣きたくなった。


 この手に掴むのは、いつでも手放せるものだけ、それが私の生き方だったのに。



 その夜はリリムと手を繋いで一緒に眠った。

 ただ、それだけ。



 夜が明けても、リリムが私に叶えて欲しいことを聞いてくることはなかった。




  ◇ ◇




 楽しい時間はあっという間に過ぎていった。

 私はまた元の病室に戻って、白い天井を眺めながらリリムを待つ日々を過ごしていた。

 余命宣告を受けてからちょうど二週間が経っていた。


「白川さん、今度こそすばらしい提案を思いつきました!世界中の行きたい場所へ、どこへでも連れて行ってあげましょう。わたしにかかれば世界のうらがわにだってひとっ飛びです」


「35点。リリムと一緒なら楽しそうだけど、ここもそんなに悪くないよ」


 リリムは毎日何かを提案してくれたけど、いつも大事なものが抜けていた。


 なかなか首を縦に振らない私に、リリムは眉根を寄せてうーんと唸って一生懸命悩んでいる。

 今日はこれ以上のアイデアは出そうにない。



 病室の窓から乾いた風が吹き込んで、私はゴホゴホと咳き込んでしまった。

 少し前に海風に当たった時は心地良かったのに、今の私には刺激が強いらしい。


 外泊から戻って以降、私は日ごとに身体から力が失われて行くのを感じていた。

 医者の見立てではあと二週間残されているけれど、この身体がいつまで動いてくれるか分からない。


 私は少し焦っていた。


「悪魔に願いを叶えてもらうためには代償が必要って言ってたよね」


「…はい。悪魔は人間の叶えたいことを聞いて、それに見合った代償を提示します。お互いが納得できれば契約は成立です」


「そうなんだ。悪魔との契約って魂を差し出す、とかじゃないんだね」


 突然契約について具体的な質問を始めた私に、リリムは(いぶか)しそうな顔をしていた。


「昔は結構あったらしいですが、今は魂を差し出してくれる人間なんてなかなかいません」


 情報が溢れる世の中になって、人間は知りたいと思うことを簡単に知れるようになった。欲しいものだって同じこと。

 必然、悪魔のような非科学的な存在を頼る人も少なくなり、自らの魂を差し出してまで叶えたい欲望を持つ人間も珍しくなった。

 今の悪魔にとって、人間の魂はとても価値の高いものだという。


 リリムの説明を聞いた私は、良かったと心の中で呟いた。


「賭けはもうお終い。リリム、私のお願い、叶えてくれる?」


 人生の終盤に素敵な時間をくれた落ちこぼれの悪魔に、私がしてあげられることは一つだけ。


「私の命が尽きるまでそばに居てほしい。対価は私の魂。どう?」


「…え?そんなの、だめです!叶える内容と代償が全然つり合っていません」


 私の唐突な依頼に、リリムは戸惑っているようだった。


「どうして?私にとってはちゃんとつり合ってる」


 最期の時を愛しく想う相手と過ごすことができ、あまつさえ彼女の役に立つことが出来るというなら、こんなに幸せなことはない。

 私の魂一つで、落ちこぼれの彼女をどれだけ救うことが出来るのかは分からないけれど、魂が貴重なものであるなら多少の役には立つだろう。

 私にとって、これ以上ない最期だった。


「でも…!!」


 尚も食い下がるリリムに対し、私は助け舟を出してあげることにした。


「それじゃあ、リリムが私の魂に見合うと思う別の望みを見つけることが出来たら、それを私の望みにしてあげる」


 私がそう言うと、リリムはしばらく黙って考え込んだ後、わかりましたと同意してくれた。


「これで契約成立ね」


 何とか話をまとめることが出来た私は、安心したせいか急激に瞼が重くなってくるのを感じていた。

 リリムとまだまだ話していたかったけれど、どうやら体力の限界らしい。

 ベッド脇でぶつぶつ独り言を呟いている彼女を残し、私はゆっくりと瞼を閉じた。



 私とリリムに残された時間は残り十四日ーー。




  ◇ ◇




「白川さん、過去に戻ってやり直したいことはありませんか?好きな瞬間へ時間を巻き戻してあげましょう!生まれたその日から新しくやり直すのも良いですよ」


「20点。私、今の私が好きなんだ。辛いことも後悔も全部私の一部だから、巻き戻したい過去なんてないよ」


 私たちは賭けを始めた時と何ら変わらない日々を過ごしていた。


 リリムはいつも懸命に新しい提案をしてくれたけれど、私は欲しいものなんて何もなかったし、全てに納得していた私にとっては彼女がそばに居てくれること以外、欲しいものは何もなかった。リリムだって本当は分かっていたと思う。


 だからこのやり取りに大した意味なんてなくて、もはや挨拶みたいなものだった。


「久しぶりに体調が良いの。ちょっと外で話さない?」


 このところ随分身体が弱ってきた私は、すっかり食も細くなり、点滴での栄養補給が欠かせなくなっていた。

 そんな私をリリムは車椅子に乗せ、病院の広場まで運んでくれる。

 人の目に触れなければいけない時は、彼女は海に行った時と同じ白いワンピース姿で角や羽根を消していた。


「白川さんはどうして病気を治すことを望まないんですか?」


 車椅子を押しているリリムが背中でぽつりと言った。

 その声がとても切実な声に聞こえて、胸が苦しくなる。


「私は、私が生きてきた人生を否定したくないの」


 例えば病弱な身体ではなく、小さい頃から元気に走り回れる人生だったら?そう考えたことも勿論ある。

 だけどそれを望むことは、沢山のことを我慢しながらも懸命に生きてきた私自身を否定することになる気がしてしまうのだ。


 もし今の医療で治すことが出来る病であったなら、治療して治すことを目指しただろう。それは懸命に生きると言うことの延長線上にあると感じられるから。


 でも、悪魔の力で運命をねじ曲げて病を消すことは、私が今まで積み重ねてきた時間をも消してしまうことのように思えてならない。


「この病気も含めて私だと思うから、だから望まない」


「……そんなの、ずるいです」


 私からリリムの顔は見えない。だけど泣いているような気がした。


「私には白川さんの…、ゆりさんの病気を治すことが出来るのに、なのにそれをしちゃダメって。どうしてですか?私には分かりません」


「………」


 リリムは泣いているのだと思ったけれど、違った。彼女は怒っていたのだ。

 元々多くを持たないように生きてきた()()()だった私にとって、彼女の言葉は重く、初めて自分の考えに迷いが生じた。

 私の考え方は私にとっては良いのかもしれないけれど、ひどく独りよがりな考え方だったのではないか、と彼女の言葉で初めて気が付いた。

 こんな独りよがりな人間が、安易に無垢な彼女に手を伸ばしたからいけないのだ、ましてやキスなどしてはいけなかったのに。


 だけど、だとしても、私は考えを変えるつもりはなかった。


 私とリリムに残された時間は残り七日ーー。




  ◇ ◇




 それから私は起きている時間より眠っている時間の方が、少しずつ長くなっていった。

 夢と現実の境界も曖昧になり、今見ている世界が現実なのかそうでないのかの判別が付かず、常にふわふわとした思考の中で生きていた。

 不思議なことに、どちらの世界にいても必ず近くにリリムの姿があって、時には笑顔で、時には泣きながら、私と彼女は取り留めのない話をして過ごした。


「こうして夢の中でずっと過ごすはどうですか?嫌なことも苦しいこともない世界で、永遠に一緒に過ごしましょう」


 リリムが笑いながら言う。

 それも悪くないかもしれないね、と私も笑う。

 でもそれだと魂をあげられないからやっぱりダメね、と言うと、彼女は悲しそうな顔で微笑んだ。



「どうか病気を治して欲しいと言ってください。今ならまだ間に合うんですよ」


 リリムが泣きながら言う。

 ごめんね、と首を横に振って私も泣く。

 私を置いていかないで、と泣きじゃくる彼女に、私はひたすら謝ることしか出来なかった。



 そうして時間の感覚もなくなって、残された時間があと何日あるのかも分からなくなった頃、私はついにその時を迎えた。


 私が最後に見たのは、リリムの思い詰めた顔だった。

 私はリリムにそんな顔をさせたくなんてなかった。どこかで間違ってしまったのだろうか?

 もし彼女に辛い顔をさせないで済む選択肢がどこかにあるのなら、今ならその瞬間に時間を巻き戻して戻りたい。

 だけどそれを望むには遅過ぎて、私は薄れていく意識の中、ありがとうと伝えていなかったことを思い出し後悔していたーーー。




  ◇ ◇




 ーーー次に意識が戻った時、そこには見慣れた白い天井があった。

 まず最初に浮かんだのは”死後の世界にも天井があるんだな”という陳腐な感想だった。そして次に浮かんだのは”リリムに会いたい”という強い衝動だった。


「意識レベル回復しました!」

「バイタル、全て正常値です」

「持ち直したのか?信じられん」


 霞がかかったような意識の外で、医師や看護師が慌ただしく動いているのを感じる。


(どうして……?)


 私は訳が分からず、混乱した頭で考える。

 なぜ意識が戻ったのか、なぜ生かされたのか、なぜリリムはどこにもいないのかーー。


 看護師の一人が「よく頑張りましたね、もう大丈夫ですよ」と私に声をかけた。


 だけど、看護師の女性がなぜ安堵の表情で微笑んでいるのか、私には全く分からなかった。




 そこから私の身に起きたことは、医師にとっては奇跡で、私にとっては望んでいない事態だった。

 結論から言ってしまえば、私の病気は綺麗さっぱり消されてしまっていたのだ、悪魔の力によって。


 意識が戻った翌日、私はありとあらゆる検査をされた。

 そしてどの検査の結果も、私の身体が健康であることを示した。

 医師は私の身体には医学的にあり得ない変化が起きていると好奇の眼差しであれこれ調べたが、結局何も見つけることはできず、私は一週間後に退院することになった。


 すでに仕事も退職していた私は、突然与えられた未来(じかん)をどう過ごせば良いのか分からなくて途方にくれた。

 リリムのいない一日はあまりに長く、一人で生きていくのはどうしようもなく孤独だった。


 寂しい気持ちがとめどなく溢れてくるのに心の中は空っぽで、せっかく健康な身体が手に入ったのに、やりたい事なんて何一つ思い浮かばない。


 もっと長く生きられれば何でも叶えられると言っていたのに、やっぱり悪魔は嘘つきだ。



 消えてしまったリリムの姿をあてどなく探し歩いていた私は、気付けば近所の河原にたどり着いていた。





「どうして私を生かしたのよ。こんなこと望んでいなかったのに…」


 三度目の石を拾うことを諦めた私は、水面に映る自分の顔に向かって答えのない問いを投げる。

 私の問いに答える声はあるはずもなく、川は黙ったまま流れ続けていた。


 不意に後ろから風が吹いて、私の顔を映していた水面を乱した。



「ーーそんなの、わたしがもっとゆりさんと一緒に居たかったからに決まってるじゃないですか」



 それは聞き間違えようのない、彼女の声だった。

 ずっと、ずっと、探していた愛しい悪魔の声。


 私は振り返ったら消えてしまうんじゃないかと恐ろしくて、ゆっくり、ゆっくり振り返る。

 そこには淡い桜色の髪に2本の角を生やした、見慣れた悪魔が立っていた。


「リリム…!」


 駆け寄ろうと足を前に踏み出すが、足がもつれて思うように進めなかった。

 涙で滲んだ視界では、リリムがどんな顔をしているのかよく見えなくてもどかしい。

 彼女は私が彼女を置いて先に逝こうとしたことを怒っているだろうか。それともいつものように困った顔で私を見ているのだろうか。


 河原の石に足を取られ()けそうになったところを、慌てて走ってきたリリムがすんでのところで腕を掴んで抱き寄せる。

 私は彼女の存在を確かめるように背中に腕を回して、いつかの彼女と同じように泣きじゃくった。


「…もう、うぐっ、、会えないかと、思った」


「わたしをおいて死ぬことを選んでいた人が言うせりふですか?」


「ごめん…。リリム、ごめんね…」


 彼女は優しく宥めるように、私の背中をとんとんと叩く。

 彼女の柔らかさと背中から伝わる手のひらの感覚に少しずつ落ち着きを取り戻した私は、意識が戻ってからずっと気になっていたことを尋ねた。


「私を病気から助けてくれたのはリリムだよね?その、代償って…」


 リリムは少し考えた後、口元に人差し指をあてて血のような赤い瞳を細めると、ふふふ、と笑った。


「それは……ひみつです」


 その顔は悪魔というよりは天使のそれで。

 これでもわたし頑張ったんですよ、と笑う彼女に、私はそれ以上何も聞かないことにした。


 リリムと一緒に居られるなら、差し出す代償が何であったとしても決して惜しくはないだろう。だとするならば、代償のことは気にするだけ無意味だ。

 それよりも、他に考えなければいけないことは山ほどある。


「ゆりさん…、その……勝手なことしちゃってごめんなさい」


 急にしおらしくなって子どもが悪戯を謝る時のように上目遣いで謝るリリムに、私は力なく首を振る。


「ありがとう、リリム。せっかく助けてもらったんだから、一度死んだつもりで生き方を変えてみるよ。これからはもっと欲張りに生きてみようかな」


 私は願う、どうかこの先も、彼女が私の近くで笑っていてくれますようにと。

 もう決して手を放したりしないから、だからーー。


「だから、私の命が尽きるまで、これからもそばに居てくれる?」


 祈るような思いで尋ねる私にリリムは、


「もちろんです。そういう契約ですから」


 と、とびきりの笑顔で答えてくれた。

 




最後までお読みくださりありがとうございます。

少しでも楽しい時間だったと感じていただけていたら嬉しいです。

もしお気に召していただけたなら、いいねや感想をいただけると非常に励みになります。


※2022年8月3日追記

リリム視点のお話を書かせていただきました。

よろしければそちらもお読みいただけますと幸いです。


■落ちこぼれ悪魔が最後に出会ったのは余命一ヶ月の魂でした

https://ncode.syosetu.com/n6923ht/

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― 新着の感想 ―
[良い点] 代償は・・・、悪魔を捨てて人になったこと・・・でしょうかね。 良い話ですね。
[一言] とてもよい。 ゆりさんの気持ちがよくわかる。 私は好きです。このお話。
[良い点] 苦い、甘い、次に苦い、そしてほろ苦い。 なんて素敵な話でしょう。 そして本当に、彼女は悪魔でした。 勝手に彼女の願いを無視しますが、気にしないと思います。 ありがとう、作者さん。
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