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いつもお読みいただきありがとうございます!
来週からはこちらよりも「たとえこの愛が偽りだとしても」の方を優先して更新するようになると思います。
どうぞよろしくお願い致します。
レイフとのことで傷ついていても毎日は過ぎていく。
今日は王太子が我が家にやってくる日。意外にも会うのはあの騒動以来だ。
その王太子といえば庭で弟と妹と楽しそうに追いかけっこをしている。
私は同行したデイヴィットから王太子妃教育のスケジュールを聞いているところだ。
「なんだか意外ね。あんな風に子供と遊ぶ方には見えなかったわ」
「対面したときに魔道具使って悪戯してただろ? けっこう悪戯好きで困るんだよ。子供とは気が合うんじゃないか」
「まぁそうなの。人って見た目じゃ分からないものよね」
レイフも見た目だけでは不貞をするようには見えなかった。そりゃあ見ただけでポワポワしてるのは分かったけれども。
「元婚約者とは話をしたのか?」
「話はしたわ。ただそれだけよ。納得したとか許したなんて境地には到達できないし、まだまだ時間が必要みたい」
「どんな言い分にしても浮気に逃げていいことにはならないからな」
急にデイヴィット以外の声が割って入ってくる。少しだけ息を乱した王太子が部屋の入口に立っていた。
「子供は元気だな。スケジュールの確認は済んだか?」
「説明は一通りしました」
上着を脱ぎながらデイヴィットの隣に腰を下ろす。
「学園の成績も鑑みて作られたスケジュールだ。そこまで詰め込む必要もないだろう。大丈夫そうか?」
「これならば大丈夫かと思います」
王太子妃教育と聞くとかなりハードなものを想像していたが、王太子の前婚約者のおかげなのかそれほどキツイスケジュールは組まれていなかった。
「学園は飛び級試験も可能な成績のようだが、考えているのか? 来週にはあいつらの結婚を発表するから肩身が狭かったら飛び級試験も考えるといい」
「エリーゼおばあ様も受けたというものですね。このスケジュールと並行してできるかどうかを考えてみます」
「私も受けたがそこまで難しいものではない。出題範囲が広いのがネックだがな。そういえば、こちらにエリーゼ様もいらっしゃるのか? 挨拶をしておかないと」
「みちゅけた!」
「あー、ねぇねとおしゃべりしてる」
王太子と話していると、弟と妹が部屋にとてとて走って入ってきた。母が流産して体調を崩していた影響で私と弟達の年は10ほど離れている。
「ははっ。早いな。もう見つかってしまった。どれ、じゃあエリーゼ夫人のところに連れて行ってくれないか? 挨拶をしないとね。王家はエリーゼ夫人に頭が上がらないんだ。すまない、少し席を外す」
「ばぁばはししゅうしてる」
「ちがうよ。ばぁばはオジャマタクシを見てるよ」
王太子は騒ぐ小さい妹を抱っこして、弟と手をつなぎ部屋から出て行ってしまった。
「オジャマタクシって子供は絶対言うよな」
「そうね。何回言ってもオタマジャクシって言わないのよ。可愛いんだけどね」
「俺も後でエリーゼ様に挨拶しとく」
「多分この時間ならおじい様と庭でデートしてるわよ」
王太子の言葉通り、次の週にはレイフ・ハーコートとシルビー・ストーンの結婚が発表された。