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どんな街にも必ずと言って良いほど『仲介屋』の店は開かれています。『仲介屋』がない村の場合は、近くの街に必ず『仲介屋』の看板を出しているお店があります。
仲介屋に持ち込まれる情報は、捕り物や退治の様な『狩り』と呼ばれる依頼から『失せ物探し』の依頼までが揃えられています。ここは流通の中継地点と言われる街ですから、やはり盗賊退治と商隊の護衛の仕事が多いようです。
さて、『仲介屋』の中と言いますと、入り口に入ると広い待合室が有り、その壁に仕事の内容が書き込まれる掲示板が取り付けられています。その待合室の奥には、常に数人の店員が色々な書類を整理しています。大きな街であれば、これらの事務を行う部屋は二階に置かれることが多いです。
時折、彼らが掲示板に新しい仕事の情報を書き込んだり、契約が成立した依頼や募集を締め切った依頼消したりしているようですね。時には、その近くに依頼人が座ってお茶を飲んでいることもあるようです。
『護衛』依頼の掲示板の側には、『聞き耳』と呼ばれる判定者が常に座っています。
『聞き耳』は、言葉を交わすだけで、『真偽』を見極められる技能を持つ人に付けられた『称号』です。自分たちの店で紹介した者が盗賊や内通者であっては、店の信用に関わりますから、紹介にはとても慎重になるのです。
青年が仲介所に付いた頃には傭兵や賞金稼ぎらしき人達がすでに掲示板の前に集まり仕事を探しています。そんな彼らを押しのけて何とか黒板の見える位置へ。そして、同じように黒板の文字とにらめっこを始めました。しかし、ここに書き出されているのは全て『狩り』の情報。
あれっと首をかしげる彼に左目に大きな傷跡のある男が声をかけてきました。
「おい、坊主。おめぇも、『狩り』をするのか?」
「いえ……他の仕事を探しているんだけど……ここには『狩り』の情報だけしか……」
「そりゃそうだ。こっちは狩り専門の掲示板だぁ。他の仕事なら反対側の壁と、この隣りの掲示板。で、なんの仕事を探してるんだ?」
「護衛です。できれば、商隊の護衛。」
「それなら、あっちの、ほれ、椅子に座ってる奴らの向かいにある掲示板だな。」
「え! あ、ありがとうございます。」
「何、ライバルは少ない方がいいんでな。良い仕事が見つかると良いな。」
その言葉と一緒にゴツゴツとした力強い手が、青年の肩を叩きます。青年は礼を言うと指し示された掲示板の前へと行きました。掲示板に書かれている依頼を読みながら、後ろで座っている人達の様子も窺います。服装や、仕草、身につけている装飾品、おそらく此処に書き出されている依頼の主なのでしょう。同時に、彼らもさり気なく青年の振る舞いを注視します。