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02-12

 カラシャとカロンは互いに顔を見合わせ頷くと、自分達の宿に向かって全速力で走り出します。


「……遺体の偽装はどうする。」

「この矢と、彼の怪我は、ちょうどいい目くらましになりますね。精霊達に、可能な限り人の体に近づけた『人型』を作ってもらって、傷を偽装した上で近くの池に放り込めば、ごまかすのは難しくないと思います。型も半年持てば十分でしょう。」


 カラシャの問いには、淡々とカロンが答えます。


「ただ、偽装も時間が勝負です。この状況を利用したいですから。

 リームニ、この近くに『人が溺れてもおかしくない、大きな水たまり』を探してください。ヴノーは、その側にこの少年そっくりな、『可能な限り人の肉体に近い』人型を作ってください。」

 カロンが、精霊へ願いを口にすると、水の精霊と土の精霊が額の石から現れ、青年に一礼するとあっという間にどこかへ飛んで行きました。


「カロン、この辺りまで来れば向こうも見つけられないだろう。」


 カラシャは宿に戻っている時間は無いと判断しました、そうして、少し走った先でカラシャが周りを確認し、追っ手が来ないこと、身を隠せる場所がある事を確認し、足を止めてカロンに声をかけます。

 カロンは、カラシャの先導で身を隠せる茂みの中へ移動しました。茂みの向こうには、少しだけひらけていました。そこに、プシュケイの体を横たえると、残り二本の矢も引き抜きます。傷口から血が出ないよう、手当は行っていましたが、それはあくまで応急手当です。火の精霊に彼の体が冷えないよう願いました。

 そして、次に自分のマントを広げると、下着も靴も含めてプシュケイの服を全てはぎ取ります。そして、マントで真っ裸にした少年の体を包みます。


「カラシャさん。」

「気を付けて。宿で待っている。」


 カロンの呼びかけに、カラシャは何も聞かず少年の体を抱え上げると、宿に向かって走り去っていきました。

 カロンは、それを見送るとすぐさま水と土の精霊の事へ向かいます。契約している精霊の居場所はすぐに分かります。風の精霊に願い、走る速さをあげて最短距離を駆け抜けます。五分もしないうちに、カロンは水と土の精霊が待つ場所にたどり着きました。


『カロン、こんな感じでいい?』


 土の精霊ヴノーが、作り上げた人型をカロンに見せます。容姿もさっき受けた傷も全て再現され、精巧にできていました。

 カロンは、その人型の手足を軽く動かします。関節部分だけで動くか、触れたときの肉質はどうなっているか……。それらを確認しているのです。


「さすが、ヴノー。僕の意図を汲んでくれてありがとう。」

『この程度、僕には安いものだよー。』


 カロンは、胸をはる地の精霊ヴノーに礼を言うと持ってきたプシュケイの服をその人型に着せ、持っていた矢をその体に差し込んでいきます。


「リームニ、彼の胃と肺をこの池の水で満たしてくれるかい?」

『はーい。』


 そうして、立派な水死体の人型ができあがりました。カロンはそれを持ち上げ池の縁に立つよう支え、そうしてその背を押すようにして池の中へ落としました。

 大きな水音を立てて、その人型は池の上にうつぶせで浮き上がります。カロンは、その後の様子を確認し、問題ないとその場を立ち去り宿に戻りました。

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