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眠れる地下の猫  作者: 大川 伯
3/13

chapter2 早朝

目覚ましが鳴って顔をしかめながら起きる。

いつも同じである。でもすぐに違う感覚が襲った。

「そうだ。今日は始業式だ。今日から正式な2年生だ。」

と現実から逃げるためにありきたりなセリフを吐く。

いつもと同じ支度をして、家を出る。

廃ビルに入ると昨日とは違い、男の図太い声は聞こえなかった。

少し安心して地下に降りる。

昨日と同じ場所に彼女はいた。

「おい、朝だぞ。おきろ〜!!」

と叩きながら起こす。

「んん〜ふぁあ〜…。ん。ありがと…ショウ…」

とあくびをしながら言われる。

「おい。お前は誰だ。なぜこんなところにいる?」

少し間を開けて帰ってきた。

「…おぼえてない。ここで…ひとりで…くらしてる。」

こいつ、こんなところで一人暮らしか?

そんなことはありえない。冗談だろうと思い、

「おいおい、寝ボケてんじゃねえの?」

といったら、

「ここ、おとうさんの…ビル…」

と言い返したので、笑いながら

「お父さんって何十年前の人だよ。」

というと、

「6年前に…しんだ。」

突然そんなことを言われたら誰だって驚く。

しかも死んだって…いくらなんでも軽すぎるだろ。

しかしここで気づいた。

『こいつ、起きてから何もしてねぇ』

「ねえ?支度とか…しないの?」

「やって…」

「は?」何いってんだこいつ。

「どうゆうこと?」

「だから…きがえとか…あさごはん…とか…」

「自分でできないのかな?」

「でき…ない」

「なんでだよ!?」

「じかん…ない…はやく…」

「いやいや、無理無理無理!」

「がっこう…おくれちゃう…」

「…わかった。着替えってどれに着替えるんだ?」

と聞くと、彼女が出したのはうちの高校の女子制服。

『こいつ同じ高校かよ』

「下着くらいは自分で着てくれよ?」

首を振った。こいつ頭おかしいだろ!!


パジャマを脱がし、Yシャツを着せ、その上にブレザーを…

という作業を目を閉じてするのは意外に時間がかかった。

それを下もしろというのだから苦行である。

「じゃあ…あさごはん…」

とかいっているが時間も気力もない。自分のバッグと異常に重い彼女のバッグを一緒に持ち、

「無理だから!もう行くぞ!」

といい、手を引っ張ってビルから出た。

彼女の手は思いの外小さく、華奢で軽く握っただけで潰れてしまいそうだった。

『今から走って10分。間に合う。』

と思っていた矢先、

「つか…れた」

といって止まる。

ペースダウンどころか立ち止まって息切れなど、

このままでは初日で遅刻してしまう。

「しょうの…せ…なか」

ナイスアイディア!背中に乗せてダッシュ!!…ってアホか。

しかしそういわれるとそれしか出てこなくなる。

しかたない。


こうして高校2年の初登校はよくわからん女の馬になってゴールインしたのであった。

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