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眠れる地下の猫  作者: 大川 伯
2/13

chapter1 邂逅

「はぁ…人生つまんねぇ」

今年で高校2年になる。去年の今頃は未知の高校生活にわくわくしていたはずだ。

それなのに1年間でここまで冷めてしまうとは思わなかっただろう。

周りの人間は自分自身の個性を伸ばし、まるで輝いて見える。

勉強で学年トップレベルまでのぼりつめた人間。

スポーツで県、もしくは全国まで勝ち上がっていった人間。

こんなことどちらかできたら満足できるはずだが、どうも才能というのは貪欲らしい。どちらもやってのける。

こんなことを言っていると、

「自分が努力していないのが悪い」だとか、

「やってないのに決めつけてんなよ」とか言い返される。

これでも努力だって挑戦だって今までしてきたはずだ。しかしどれだけやっても才能には追いつけやしない。

それを2学期のはじめに気づき、それからは他人に合わせて生きることを決めた。

そうして1日が36時間に感じる生活を送っている。


俺は西谷 翔。明日に始業式を控え、今日は春休みの最終日である。少し残した宿題をおいて買い物にでかけ、

今はそこからの帰り道だ。できるだけ時間をかけて歩いている。

そんなことをしないとただでさえ長い1日を潰す手がない。(ゲームはできるが飽きた。)

だがもう家についてしまう。また母親に…なに…か…

「えっ?」

家のむかいにあるボロボロになっている廃ビルに誰か入っていった。スカートを履いていたから女子だろう。

あのビルは持ち主が6年ぐらい前に死んだとかで管理はされていない。

ビルの前には立入禁止の文字。(文字は変色したりしていて、あまりよく見えないが。)

そんな建物にこの季節に、躊躇もせず入っていくものか?

雨がふり始めていたので雨宿りかと思ったが、そんなはずはないだろう。

とある噂だとヤンキー集団が出入りしている話もある。

「それが本当だったらまずい。」

俺は思わず走り出してしまった。


むかいにあるとはいえ、このビルには入ったことはなかった。

かすかに話し声が聞こえる。隣人か?いや、上から聞こえる。しかも響いたような音だからこのビルだろう。

男の声。それもなかなか太い。

噂は本当か?

だが盛り上がっているわけではない。

女子がそんな集団の中に入ったら間違いなく吊るし上げられるだろう。

つまり上にはいない?

このビルのこのフロア、または地下があればそっちへ行ったか?

壁に地図が書かれている。

このビルはあまり広くはない。

3階までは階段で繋がれているが、それから上はエレベーターでしか上がれない。

そして地下。B1Fと書かれた空間。そこは地上階よりもさらに狭い。

女子は1階にはいないらしい。

地下に降りてみようとしたとき、ある発見があった。床がかすかに濡れていて点々と続いている。

それは階段に繋がり、降りる方に続いている。

間違いないだろう。

恐る恐る地下へと踏み込んだ。


地下に入るとその小さな空間の一角にかすかな明かりが見えた。

近づいてみると女子が一人、布団を敷いて横たわっている。

「あの、ここで…なにしてるんですか?」

きいてみたが返事はない。

「あのう!ここでなにしてんすか!」

更に大きい声できいた。すると女子は起き上がり、

「ん…ん?だ…れあなた?」

「俺は…西谷 翔。」

「しょ…う?ちょうどいいや…明日、おこしにきて…」

「なんでだよ!?」

「…zzz。」

寝てしまった。もうこれ以上聞くのは難しいだろう。

「わかった。」

とだけいって、その場を去った。


ビルから出るともう夕日が沈む直前だった。

家に帰り、夕飯を食い、風呂に入り、ベットに入って目を閉じた。


いつもより早い時間に目覚ましをセットして。

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