表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/49

調べる

 

 エルシュは空いている時間を使って、王城内の図書館へと来ていた。


 図書館の蔵書数は想像以上で、これらの本を全て読み切るためには人生が一つでは足りないだろう。分厚い本が本棚の上から下まで隙間なく埋め尽くすように並んでいた。

 最初に図書館に来た時はその壮観さに圧倒されて、しばらく動けなかったくらいだ。


 アルヴォル王国にいた際には、実用的な書物よりも大衆に好まれるような物語が好きだったが、姉達にそのことを嘲笑されてからは人前で本を読むことはしなくなっていた。


 今でも物語を読むことは好きだがそれは後回しだ。今日はこの国のことについて学ぶために図書館へとやって来ているのだから。


「では、何かありましたら、お呼び下さいませ」


「ええ、ありがとう」


 お供には侍女のフィオンが付いて来ており、エルシュの読書の邪魔にならないようにと静かに控えておいてくれた。


 ……さてと、竜に関する本はどこかしら。


 エルシュが探しているのはドラグニオン王国で神聖視されている竜についての記述だった。


 もっとこの国のことを知りたいと思ったが、自分の教育係である宰相のジークは最近、忙しくてまとまった時間が取れないとのことで、授業がしばらくお休みになってしまったのである。

 なので、自主的に勉強するためにエルシュは図書館へと来ていた。


 しかし、竜に関することを学びたいという気持ちが大きいのはやはり、リディスのことをもっと知りたいと思っているからだろう。


 ……陛下にかけられている呪いの解き方が書物に記載されている可能性は低いと思うけれど、それでも自分なりに竜に関することを調べてみたい……。


 ドラグニオン王国が立国する前に初代国王がこの地を治めていた神聖竜と対話し、そして竜の加護を得てから現在まで至る、というのが世間一般のおとぎ話だ。


 だが、それはドラグール王家にかけられた呪いを伏せるための隠れ蓑に過ぎない。


 ……竜って一体、何なのかしら。


 根本的なことを学びたくても、この国に棲んでいると言われている竜は滅多に人の居住地には入ってこないのだという。

 谷が深い場所や迷う程に大きな森の中でなければ、竜に出会うことはないらしい。


 ……直接、竜に会って、呪いを解いてもらえたらいいのに。


 呪いをかけたと言われている神聖竜が今も生きているかは分からないが、呪いをかけたのならば解くことも出来るのではと思えたのだ。

 だからこそ、リディスやジークには内緒でこっそりと竜について調べているのである。


 エルシュは『竜の生態系』と記されている題名の本を手に取ってから、中身を開いてみる。かなり古い文献のようで、表紙は擦り切れてはいたが中身の紙に綴られている文字は読めるようだ。


「えっと……」


 エルシュはゆっくりと目で追っていく。どうやらこの本はおとぎ話のような内容ではなく、著者が長年の調査に基づいてまとめた報告書のようなものだった。

 どの地方にどのような竜が棲んでいるのか、何を食べて生きているのかといったことが綴られていた。その中でもエルシュが特に注目したのは棲んでいる場所だ。


 ……ニルフガル地方の「慟哭の谷」とアクリウム地方の「聖花の森」。


 どうやら、この二つの場所に現在生きている竜は主に棲んでいるらしい。もちろん、入ることが出来る人間は限られているため、違反すれば懲罰ものだということまで書かれていた。


 この本の著者はちゃんと当時の国王に、調査という名目で二つの場所に入ることを許して欲しいと申請し、許可が下りたため調査することが出来たらしい。


 ……この二つの場所に棲んでいる竜に呪いの解き方を訊ねられないかしら。


 どちらも王都から、かなり遠い場所であるため簡単に行くことは出来ないと分かっているが、少しだけ願望を抱いてしまう。


 自分と共に生きたいと願ってくれたリディスのために、何か出来ることはないかと模索してはいるものの、自分の力が及ぶ範囲は限られているため、どうすることも出来ないでいるのが歯がゆくもあった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ