高高度で降下し、低高度で翼を開け
飛行艇から落ちたシロロの後を追い、エランまでも夜の空に消えた。
俺は青緑色の見事な瞳を持った、アルバートル隊においては善良でしかない男の死に、信じてもいない神に祈りを捧げかけたほどだった。
いや、神へ祈りを捧げるべきだった。
「だーぐだーぐ。行けぇー!うきゃあああああ。」
畜生、ダグダグ虫とは俺の蚕ってことか。
馬鹿が巨大蚕という怪獣の背中にエランと一緒にしがみつき、虫独特の飛び方をしながら俺の視界を横切ったのである。
絶対にエランは酔って使い物にならなくなるだろう。
「エラン、落ちるなよ。これも神の試練だ。きっと。」
「あ、何ですか?あれは?」
「アルバートル。見なかった事にしてくれ。俺も今すぐ忘れたい。それから、絶対防御が消えたので、次に来たら本気で衝撃に耐えろ。」
「来させなきゃいいんじゃん。」
カイユーが軽い口調と共にで立ち上がったが、いつもと違うゆらりとした幽鬼のような雰囲気を纏っていた。
次に立ち上がったのは、カイユーの親友というべきフェールであるが、彼もいつもの細く幼いイメージなど消し去れる殺気を放っている。
「あぁ、俺こそシロロちゃんと一緒に飛び出せば良かった。飛行機の中じゃ剣を振るえない。」
「どうします?ダグド様?部下は地上で暴れたいようですよ。」
「艦内にある降下偽翼でフェールとカイユーは下に降りよう。」
「えぇ!」
数秒前まで剣を振るいたいと叫んでいたフェールは子供のように嫌そうな声をあげ、カイユーは珍しく無言のまま頭を下げて落ち込んだ。
カイユーの情けない姿に俺が笑い声をあげる中、アルバートルが俺の提案の後を受けて部下達に次々と指示をし始めた。
「では、残ったティターンはガトリングでボウボウトカゲに対応。カイユーとフェールはデレクの妻の奪還だ。安心しろ、デレクが言われなくとも下に降りる。亡命した今、ザワークローゼンの地に足をつければ死刑囚だろうけどね。」
デレクは既に無言で降下用の俺特製のハンググライダーのような機能の装置を装着しており、アルバートルは自分が地上訓練と降下訓練をしつこく繰り返していた成果が出ていると口元を皮肉そうに歪めた。
「あぁ、俺は団長のお守だけですか?」
「そうそう。俺こそ暴れたいのにコックピットだもの。相棒の君は夫婦みたいなものでしょう。一蓮托生。我慢して。」
「はいはい。俺の失恋にも散々慰めてもらいましたからね。ほら、さっさと降下。降下偽翼に穴を開けられるなよ。」
「俺のお腹に風穴開けるな、じゃなくて、心配は翼の方ですか。副団は酷い!援護ぐらいしてくれないと泣きますよ!」
泣き言を叫ぶとカイユーはぴょんと飛び降り、中空でバッと大きく翼を広げるとトンビのように滑空した。
フェールもデレクもカイユーの後に続いた。
青年達は混乱している敵兵たちがいる真っただ中に落ちたのでもあるが、真っ黒な翼を広げた悪魔ルシファーのように彼らに襲いかかりに行ったが正しい。




