大空へ飛び立つ怪鳥
仄かな明りの水路の中を飛行艇は進み、誰かが星が見えると空を見上げた時、地下の水路はダグド領を流れる川に姿を現し、そのまま水流に流されるようにして真っ直ぐにずんずん進んでいった。
「ダグド様!水門が!ここで飛ぶのですか!」
「あぁ、団長権限で君が操縦席か。いいや、水門は次々上がる。飛び上がるのは西の森に入る手前だ。」
「西の森ですか。」
鬱蒼と茂る西の森は、真水が少ないこの世界において、ダグド領からの川の流れを飲み込んだことで、日々大きく忌まわしいものへと成長している。
木々は毒を吐き、デミヒューマンどころか怪物までも住まうというその森に、普通の人々はわざわざ足を運ばない。
そして俺は何度かモニークと空から観察しているうちに、毒を吐く木は漆ではないのかと考えるようになった。
そこから乱暴かもしれないが、実は恐ろしい怪物話もデミヒューマンも盗賊話もみんな嘘で、実はこの世界から逃げ出したい人々の隠れ里なのでは無いのかという考えに至っている。
「怖かったら森に入る前には飛び立てよ。じゃあ、アデュー。」
「え、放置かよ!」
俺はアルバートルの俺への罵詈雑言を聞きながら、艦と一緒に水流にいた。
まず、第一の水門が上がり、水流と共に船は勢いを増し川はどんどんと幅を広げていき、さぁ、第二の門だ。
第三の水門を通った瞬間から折りたたまれていた翼は完全に開き、翼についているプロペラを一斉に回し始めた。
「さぁ、アルバートル、飛ぶぞ。」
アルバートルは俺の声に自分の耳を押え、そして、ニヤリと微笑んだ。
「どこまでも一緒ですね。」
「あぁ。空は俺達のものだ。そうだろ?」
「ハハハ。やっぱりいいですね。あなたの声を耳元で聞ける贅沢は。では、参ります。」
アルバートルは操縦席にあるレバーを完全に引き、船はぐらりと宙に浮いた。
船だけの動力では持ち上がれないので俺の魔法によっての無理矢理な飛翔であるが、上空に上がった所で飛行艇は安定する風を捕まえた。
「夜間飛行も乙なものですね。後ろがむさい男ばっかりですが。」
「ひどいっす!団長ったら!」
「そうですよ!俺っちだってそこに座りたかったです。」
カイユーとフェールは仲良く団長に抗議の声をあげた。
「ハハハ。イヴォアール、計器と航路を読んでくれ。これからは俺がお前の言うことを聞くというスペシャルタイムだ。」
「わぁ、団長。嬉しくて涙が出ますよ。」
「お前は最近泣いてばかりだろ。」
「うるさいですよ。口を閉じて集中してください。」
「はいはい。イヴォアール様。」
船はゆっくりと回頭し、目指す、攻略の地へと進路を決めた。




