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さあ、出陣だ

 俺は本当の格納庫前に男達を集めた。


 俺の居城自体を守る第三の城壁に接するぐらいの位置にある、この間シロロが怪獣と壊した145平方メートル、家一軒分くらいの空き地にはコンクリートが敷かれており、俺は其処に男達を集めたのである。


 第一の城門内にあった格納庫はマホーレンホイホイでしかない。

 その事実はアルバートルにしか知らせていなかったが、飛行機が他国から狙われている財産でもあり、俺が飛行機のメンテナンスもしているのだから、飛行機の格納庫が国境ともいえる第一の城門すぐ、というわけにはいかないのは考えれば当り前なのだ。


「あ、久しぶりの張り子のダグド様だ。」


「石をぶつけようか、カイユー。」


「あぁ、俺はあんまりかまって貰えない。」


「フェール。君は俺に石をぶつけられたかったのか。」


「いえ、そんなことは。でも!」


 俺は真っ赤になって否定するフェールに、数十分前のノーラとのひと時を思い出して重ねてしまったかもしれない。

 彼を無理矢理に抱き上げたのである。


「ちょ、ちょっとダグド様、な、何を!」


「いや、構ってくれないと喚くからさ。でも、やっぱり男の子は楽しくないね。女の子を抱き上げた方が楽しい。」


「うわ、親父だよこの人は。外面少年で内面は中年オヤジって、キツイっすよ。」


 俺はフェールをカイユーに投げてやった。


「わぁ!」


「ひどい!」


 青年達は抱き合いながら大笑いし、そして俺の足元にはシロロが両手をあげて俺に抱っこをせがんでいた。

 彼はいつものアラブの男性が着ている民族衣装トーブに似た形の服ではなく、ゆったりとした白いブラウスに細身の黒いショートパンツ、そして頭には黒バンダナという姿である。

 出撃前ということで他の面々は夕食を食べていないが、シロロだけはエレノーラに連れていかれてご飯を貰い、戻って来た時はこの格好なのである。

 俺は彼の格好に首を傾げながらも、自分の失敗を反省しながら彼を抱き上げた。


「お前は誰に投げつけて欲しいんだ?」


「僕はずっとここにいたいだけです。」


 彼は俺の首筋に両手を回した。


「じゃあ、今回の作戦にはお前は不参加か?そんな格好をしている癖にか?」


 シロロは真っ黒な瞳をギラリと輝かすと、俺の腕からひょいと飛び降り、空賊、空賊とスキップ踊りを開催し始めた。


 これから他国に攻め入るというのにダンスパーティに出掛けるテンションの男達を俺はぐるりと見回すと、彼らに生きて帰って来いではなく、壊さずにちゃんと持ち帰って来いと激を飛ばした。


「ひどいっすよ!それで、お残り組は誰ですか?団長と傷心の副団ですか?」


「だまれ、カイユー。」


 団長らしい本気の低い声で部下を叱りつけたアルバートルは、しっかりと軍服を羽織っている所を見ると、絶対に、何があっても、今回は出撃するつもりだ。


「ハハハ。カイユーには俺の肩揉みをさせようかな。」


「うわああああ。酷いっす。」


「ははは。冗談はここまでだ。」


 俺はもう一度彼らを見回した。

 六人の黒装束の竜騎士団は期待に目を輝かしているが、一応は真面目そうな顔を作って俺を見つめており、反対に、白いチュニック姿のデレク一人だけは不安な表情で俺を見上げていた。

 少々訝し気な目線であることも不思議であるが。


「なにか?」


「え、いえ。」


「あなたがその姿でも嘘偽りが無くなったから驚いたのでしょう。」


 アルバートルは俺にウィンクして見せた。

 俺のささやかな意識変化で俺の内面も変わるとは。


「そうか。俺も大人になったのか。」


 男達は俺に下卑た野次を飛ばし、俺はガキどもめと彼らを見渡した。

 これから俺が彼等に出撃命令を下すのだ。

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