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作戦行動の前に横たわる危機①

 ザワークローゼン王国への進撃は竜騎士達の戻り次第としかできないが、デレクは俺に感謝を述べるどころか紺色のマントと恥ずかしい帽子を脱ぎ捨てるや、会議室を飛び出してどこぞへと駆け出して行った。


「トイレかな。」


「一応、マホーレンを助けに行ったのでは?彼は今大変でしょう。」


「いやあだなぁ、アルバートル団長様は。知っていて。」


 アルバートルはハハハと笑い出すと、指を鳴らしてスクリーンに映像を呼び戻した。


 マホーレンが燃やしたはずの格納庫は、天井からひっきりなしに雨を降らしており、燃えてもいない煤けているだけの格納庫の隅では、煤まみれで濡れそぼった三人の騎士とマホーレンが一緒に丸くなっていた。

 黒いひげや鼻先から墨汁のような雫をぼたぼたと落とし、彫りの深い顔を下向けて体育座りをしている中年男のびしょ濡れの姿は、もの悲しさでは言い尽くせないぐらい惨めな格好だった。


「うわお、可哀想。」


 真っ直ぐな男は、全く感情のこもっていない棒読みの感想を漏らした。


「うわぁ、すごいですね。張り子の倉庫だったでしょう。スプリンクラー設備もあったのですか?」


 シロロかくれんぼ担当だった副官は概要しか知らなかったらしく、俺の作った格納庫に感嘆の声をあげた。

 ただし、中世人のはずの彼がスプリンクラー設備とすらっと言ってのけた事には、俺は背筋がひゅっと寒くなった。

 現代技術に順応しすぎだろう!と。


「うん。張り子の倉庫でもねぇ、この後を考えると燃やしたままは困るし。嫌でしょう。むさい黒ひげの黒焦げ死体を片付ける仕事は。」


 マホーレンの出現は、俺の編み出した旗立て移動術を真似たものだ。

 ノーラが飛行機にも乗らずにフェレッカに現れたのは、モニークがフェレッカの民と友好を結んで立てさせてもらったダグドの旗の下に、俺が唱えたホームタウンという自分の街に帰れるという初期魔法で移動したという話である。

 また、俺の作ったホームタウン札を荷物や自分に貼り付けて使用する事で、ノーラと彼女が大量に買った干物が一瞬でダグド領にリターンもできる。


 マホーレン達はそれを模倣し、そしてこの方法には相互に友好か支配実行がなされているかの条件も必要になるが、一応は通商云たらと俺は友好を結んだので、デレクが立てた通商云たらの旗の下へマホーレンや彼が呼んだ兵士が来襲することができたのである。


 友好ではない今、彼らがホームに戻れるかは俺の胸次第でもあるが。


 ダダダダダと駆け足の音が近づき、会議室の扉は再び乱暴に開かれた。


「お帰り、デレク。」


「お帰りじゃ無いですよ!」


 デレクは容赦なく俺に喚き返した。

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