お家騒動に他所の家を巻き込むなよ
デレクはただのデレクではなく、ザワークローゼン王国では生まれたばかりの王子の叔父という貴族的な身分も持っているとのことだ。
つまり、マホーレンの兄が王様なので、姉がその妻というデレクはマホーレンには義理の弟となるが、マホーレンが王子という事でデレクが絶対に逆らえない権力者ともなるのだ。
そして、ザワークローゼン王国は世襲制だが、王から直接にその王の子供に王位が移動するわけでは無く、王の兄弟の方が王の子供よりも継承権が先にある。
マホーレンは先代王の子供であるから十五番目の王位継承者となり、普通に考えても王位から遠い男であるが、今の王様が自分の子供可愛さに世襲選挙制という、継承権を持つ者同士で選挙をして次の王を決めるという制度を取り入れたのだそうだ。
汚いのが自分が崩御してからという事で今すぐ選挙をしないのは、女狂いで間抜けと噂の自分が王位から一番初めに追い払われると知っているのであろう。
しかし、そのせいでザワークローゼン王国では王位継承権を持つ者同士で殺し合いと化かし合いが勃発中なのだそうだ。
俺の飛行機にとにかくマホーレンが執着していたのは、普通に考えなくとも、武力による牽制で自分に票を入れさせようとする目論見だろう。
あるいは飛行機を使った完全制圧による王位要求か。
「僕の姉が王子を生んだばっかりに、妬んだ第三夫人によって十六番目の王位継承者への暗殺の濡れ衣です。姉は暗殺を謀ったからと腕を切り落とされます。実質的にこれは姉の処刑です。王は姉の子供を見て、世襲選挙何て言い出したのですから。」
「そうか。」
俺は計画性のない戦行動をするのは大嫌いだと、椅子が転ぶぐらいの音を大きくさせて立ち上がった。
「畜生。これからザワークローゼン王国に宣戦布告だ。理由はアホ王子の侵略行為に対する報復だ。アルバートル、部下をすぐに呼び戻せ。それからエレノーラ、デレクの亡命の受諾と、その姉への身分保障もつけてやれ。領民であるデレクの血を引く身内の血の一滴でも垂らしたら、ザワークローゼン王国はこの世界から消えることになるとな、檄文を送れ!」
俺の計画性も全くない決断に、全員が目を輝かせているとはどういうことだ!




