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砂漠の中にある成金国家

 ザワークローゼン王国とはなんぞや、と諸兄は思う事だろう。


 俺も通商云たらと繋ぎを取るまでは全く知らなかった新興国である。


 いや、歴史は古いのだから新興国ではないし、さらに言えば、俺の領地を富士山としたら長野県と山梨県の県境にある国という、森と砂漠を抜けたらお前の家かよというくらいにご近所さんだった。


 ダグドがかの国を気にもしなかったのは仕方が無い。


 数十年位前まで貧乏な陸の孤島だった小さな国が、自分の足下にプラタナス鉱石が埋まっていると知った事で一夜にして成金国家になったというだけなのだ。


 引きこもっていた俺は世情に疎く、エネルギー関係については自作による自給自足であるからして、プラタナス鉱石など全くの不要どころか知りもしなかったが、この電気のない魔法世界においては、人に灯りと熱を与えるという奇跡の石でもあるのだそうだ。


 当り前に電気を使っている俺も領民も、プラタナス鉱石について外から来たアルバートル達に言われてもピンと来なかったが、電気というものを一切知らなかったアルバートル隊達にとっては、スイッチを押せば灯りが付き、冷めたご飯も変な箱に入れてスイッチを押せば温まるという環境は、全忠誠を俺に捧げても良い程のものであるらしい。


 彼らが俺の領土に押しかけた後に居座っていたというのは、彼らの現在住まいであり基地にしている第一城壁の見張り台の仮眠室設備が、彼らの男心をくすぐる秘密基地みたいだからと喜んでいたからかと俺は思っていたが、電気照明は勿論、洗濯機や冷蔵庫、さらには電子レンジがある生活こそ手放したくなかったようである。


 ついでに言うと、秘密基地の仮眠室は六室もある。


 仲が良いようで悪い俺の乙女たちのために、俺は六室も個室を作っていたのだ。


 同室は嫌だとか人の臭いがあると嫌とか騒いだところで、単なる見張り台の使うかわかんない仮眠室でしかなかったのによ!


 乙女達が最初の頃はアルバートル隊を嫌って追い出したがっていたのは、自分達のセカンドルーム(全然使っていない空き室だったろうがよ!)を彼らに奪われたからという理由らしかった。

 俺は娘ばっかり甘やかしすぎると、俺の息子のような気持ちらしいアルバートル達にはいつも批判されている。


 あぁ、話が逸れた。


 つまり、ザワークローゼン王国が成金でいるためにはプラタナス鉱石を高く高く他国に売りつける必要があり、俺が通商云たらで知り合った貧乏辺境国の気のいい爺さん王様に太陽電池システムなどを売られたら困るのである。


 だったらもっと政治的に行動しろとマホーレンには思うが、ザワークローゼン王国は鉱石が発見される前までは盗賊を生業としていた国なのだから仕方が無いのであろう。


 ある者から無い者が奪う事は、彼らの正義でもあるのだ。


 デレクは左胸のホルスターから短刀を取り出して、部下に命令の号令を掛けるためにか、右腕を振り上げた。


「み、みな、今から、め、命令を。」


 彼はそこで凍った。

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