視聴率はぐんぐん上がる②
モニークとノーラを脅かしていた六人の騎士は今や全員地に伏せている。
その代わりに立つ者は、肩を組んでピースをしているモニークとノーラ、そして、俺達に向かって高校男子のようなポーズを決めているフェールとカイユーが画面に大写しとなった。
ちなみに、フェールは金属疲労した鉄のように打たれ弱い剣士の方であり、カイユーは軽口が多すぎて俺が小石をぶつけたいと思っている若造の方だ。
さらに追加として、彼らは我が竜騎士の制服である詰襟の銀のダブルボタンのナポレオンジャケット、もっと細かく言うと、エポーレットに真っ赤なソウシタエを飾り左胸には銀の大き目の竜騎士バッチを飾るという、無駄に派手なものを着用している。
「な、なんで。」
シロロが立ち上がって俺の元に来るや、椅子越しの俺の背中にくっついた。
真っ白い髪の毛に真っ黒の瞳という真っ白なモルモットのような可愛い彼は、誰もが憎たらしいと思えるだろう表情をデレクに対して顔に浮かべた。
「ケーキを二種類貰えるなら、僕はいつでも駄々っ子になります。」
俺は本当はいつでも我儘でしかない彼の頭を十分に撫でた。
「はは。よしよし、偉い。偉い。ねぇ、デレク。二時間もあれば仕込みは十分だと思わないかい。そうだ、それからね、この映像はトレンバーチでも流していたんだ。君と俺の音声付きでね。トレンバーチは毎日が祭りのような盛況の大市だ。エランとティターヌの乗る飛行機からの垂れ幕は、それはものすごい勢いで人が集まって観てくれているみたいだよ。」
俺の言葉にスクリーンは反応して今度はトレンバーチの観客達を映し、彼らは今度は自分の顔が画面に映ったと拍手喝采の大盛況だ。
「え、えええ?」
俺は指をパチンと鳴らして映像を消した。
「さて、女の子を人質にとるような大陸通商協定連盟には、俺はどんな最後通牒を付きつけたらいいと思う?君の所は何を決めるにも合議制なんだっけ?俺もそれに一枚かませてもらうっていうのはどうだろうね。」
組織に加わるのであれば、幹部になってこそ意味がある。
「な、何を。」
「うん。呑んでくれたら今回のこれは、広告スクリーンのデモンストレーションだって事にしても良いよ。さぁどうする?聞いているのでしょう。通商云たらのマホーレン議員さん。それとも、君も悪役紹介してみようか。」
ぶつんと再びスクリーンが明るくなり、そこには俺の飛行機の格納庫で、部下らしき三銃士コスプレ野郎三名と立つ髭親父が映し出された。
真っ黒の髪に真っ黒の髭という濃い顔は、石油王かと思う程の威厳をも醸していて、俺は反省させるときは髭を剃り上げてやろうと意地悪く思った。




