視聴率はぐんぐん上がる①
騎士による乙女の誘拐とは、騎士道はどうなっているのかと問いたい。
問うたが。
「どういうこと?これは?」
デレクはすっと立ち上がると、三銃士のダルタニアン風に俺を指さした。
一瞬だけだが。
俺にはにろにろ姉妹がついているというか、彼女達は俺の膝の上で破壊できる被害者を待ち望んでいる。
デレクはきりっと唇をかみしめると、朗々と脅し文を俺に唱えた。
「大陸通商協定連盟からの最後通達です。飛行機の全機引き渡しと、ダグド領の解放です。彼女達が破壊竜に与する魔女との審判を教皇イグナンテスによる訴状もありますので、あなたの返答如何では、彼女達はガルバントリウムに引き渡される事になります。」
「インポヤロウ。」
「ケツヲナメロ。」
「ちょっと、アルバートル!君達はそんな言葉ばっかり叫んでいたの!」
「あなたに命じられたゴーレムとの三分間耐久睨めっこ。俺達はかなり精神的に来てましたので。」
俺は離反し始めたアルバートルから目を逸らすと、俺に無視されていたデレクを再び見返した。
「で、なんだって?君は?いや、君達は、か。」
「あなたはやっぱり黒竜だ。人間などどうでも良いのですね。あなたの領民が、このような目に遭っているというのに、あなたはおふざけばかりだ。」
スクリーンを背にしたデレクは俺に身を乗り出し、右手はスクリーンの方へ振り上げたが、対する俺はデレクに無言のままスクリーンを見ろと指を差した。
「え?」
訝しそうな顔でデレクはスクリーンに振り向き、そこで硬直した。
モニークとノーラは自分を羽交い絞めする男の手をグッとつかむと、同時にそうれと体を跳ね上げて男の鼻に自らの膝を打ち込んだところだった。
彼女達を拘束していた男達は彼女達の攻撃によって彼女達から手を放し、次に自由になった彼女達の全体重をかけたボディアタックを胸に受けて背中から地面に倒れ、止めとして彼女達の踵落としが彼らの大事な所に追加された。
「……さすが、エレノーラの教え。」
「ふふん。」
俺は下半身がキュウっとなったが、エレノーラは俺に対して余裕の流し目だ。
そこからは数秒である。
残った四人の男達が彼女達の動きに驚いて躊躇した一瞬、突然現れた黒ずくめの男達、鉄を覆う黒錆のような真っ黒い髪をした若き剣士と、二丁拳銃がトレードマークらしい薄茶色の髪色をした若造に次々と打ち倒されたのである。
「ええと。」
言葉に詰まったデレクは、完全に事態の急変についていけないようだった。




