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スキュラって何?

 コントラクトゥスに対して、間違っているのはそっちだと言い切ったデレクという名の若造は、偉そうに襟を正した風にして言葉を続けた。


「これはクラーケンです。ご存じなかったのですか?近年目撃されるようになったクラーケンは、伝承と違い、上半身が女性体で下半身が足の多い軟体生物だったのですよ。」


 彼はここで、街二つの壊滅を俺のせいにして、街二つ分の賠償金を俺から出させるか、飛行機をタダで、それもブラックボックスオープン状態で手渡すかを、俺に選択させねばならないのだ。

 彼と彼の上司との魔法通話を俺が傍受した事によると。


 こいつらって、うかつ!


 そして、うかつな部下の方は、コントラクトゥスのわかってないなあという風な首振りの仕草に対してカチンときたのか、再び声を荒げた。


「よくご覧ください。この子達の姿を。目撃情報そのままでは無いですか!」


 彼は俺の膝の上のグリとウィンを指さそうとして、二時間少し前に学んだ教訓からかすぐに手をひっこめた。

 彼の折れた指は、剣騎士パラディンのイヴォアールのヒールによって、ほんの二時間前に全快したばかりだ。


「チぃ。」

「チぃ。」


 舌打ちが理解出来なかったからか、彼女達は言葉で表現した。


「たったそれだけで。これだから人間は。最近はその形のものが多いですけどね、それこそがハーフクラーケンなんですよ。本来は人型の部分などありません。スキュラとのハーフかスキュラそのものが見つかっているだけではないですか?クラーケンは深い海の底に住む者です。全く、一を見て、十を知った気になる。」


 悪役風味が外見デザインだけだったコントラクトゥスが鼻で笑い、善人を捨てて本領発揮したかのような小馬鹿にした物言いをデレクに返した。


「ねぇ、君のサーチアイはどの程度なの?俺のサーチアイだと、人間成分とエルフ成分、勿論、クラーケンは一番多いけどね、そこにコンさんが言ったようにスキュラの成分が見えるよ。」


 アルバートルも自分の目元を右手の人差し指でトントンと叩きながら、君のスキルってと小馬鹿にした物言いだ。


 そして、みんながスキュラスキュラと唱える怪物は、上半身は美しい女性で下半身が犬と魚になっているという、俺が知らなかった上に聞いても意味の解らない姿の怪物である。


「わかりました!いいですよ、キメラ族で!ですが、そのキメラ族の子供が誘拐された件で二か所の港町が壊滅したのは事実ですよ!」


 デレクの必死な言葉が合図のように、会議室のスクリーンがぶつりと音をたてて明るくなり、そこに映像を流し始めた。


実はコンとデレクが対立している最中、俺はこっそり、というか、アルバートルにねえねえという風に尋ねていた。


「スキュラって、何?」


彼は俺を見返し、こいつ馬鹿?という表情を一瞬した気がした。

しかし彼は若くして騎士団長にまで昇り詰めていた一応は社交に長けた男である。

先程の表情による俺の不快を一瞬で消し飛ばせるような最高の笑顔を俺に向け、こそっと俺に囁き返した。


「どうして数百年生きている魔物のあなたが魔物を知らないんですか。張り子だからですか?」


「笑顔で責めんな。海怪獣は友人が担当だったんだよ!」


アルバートルの物言いに思わず設定話をしてしまったが、アルバートルは俺のそんな前世話を全く不思議がることは無く、逆にそうかという風にニヤリと笑った。


「……確かに、海の魔物は美女が多いですものね。未だピンクな竜には無知の世界か。」


デレクも通商も俺はどうでもよくなってきたぞ!

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