緊急会議は二時間遅れ
俺達は今すぐにでもクラーケンに襲われた街やその対策を話し合わねばならないのだが、取りあえず、俺のシロロがおやつが食べれないと騒ぐだろう、という事でおやつの時間を先に取った。
にろにろ姉妹よりも、破壊力と面倒臭さは魔王様の方が格段に高い。
ところが、今日のおやつは人参ケーキだったのだが、魔王様は癇癪を起こして人参嫌だと床に横になって駄々をこねたのである。
俺がグリとウィンをあやす姿に焼餅を焼いたらしい。
結局エレノーラがシロロの為にキャロブケーキを焼き直してくれたりで、おやつが無事に終了するには正味二時間少しかかってしまった。
そうしてようやくの会議開始となったのだが、議題提起のデレクは勿論、この領地の主である俺と保安担当の竜騎士団団長であるアルバートルとその副官のイヴォアール、そして、差配人という俺をも差配できるエレノーラ、最後に、事情通のコントラクトゥスという六人である。
あ、俺に背中を見せて床に座り込んでいるシロロと、俺の腕から離れないにろにろ姉妹は子供という事で数に入れていない。
さて、ほんの数刻前に俺と顔を合わせたばかりのコントラクトゥスは、子供を押し付けた事で俺に対してとても気まずそうだったが、クラーケンについての憶測を語ったデレクに対しては強気だった。
「クラーケンではありません。この子達はキメラ族です。」
しかし、デレクも負けてはいない。
正装ともいえる通商云たらの騎士制服に着替えていたのだ。
真っ白いシンプルな形のロングチュニックに紺色のズボン、そしてズボンよりも深い紺色のロングローブを室内なのに羽織り、尚且つ頭には白いふわふわが沢山乗っている帽子迄被っているという、さ、三銃士ですか?な、そんな間抜けな格好で彼は会議に挑んでいるのである。
こんな格好までして負けられる訳は無いだろう。
対して、アルバートルもイヴォアールも俺もエレノーラも、シャツとズボンかツナギ姿等々の適当な普段着だったので、逆に申し訳ない位だ。
だが彼は、俺には罰ゲーム的服装でしかないが、服装で俺達に優位性を得たと感じたのか、羊のような角まで頭から生えている怖そうなデーモンにさえ、臆することなく言い返したのである。
この純粋さには拍手喝采ものかもしれない。
「お間違えはあなたの方です。




