若き日の過ちって事で許してやるよ
空のような真っ青な瞳に小麦色の肌、そしてひまわりのような見事な金髪をしたゴージャスで女神のような俺のエレノーラは、平等に優しいはずがデレクに対しては必要以上に辛辣だ。
俺が彼のせいで彼女だけが知っていた姿を取らざるを得なくなり、そして、俺の秘密を知っている自分と言う特別感をデレクによって失わせられたためらしい。
兄であるアルバートルによれば。
ですから今まで以上に妹に優しく頼みますよと、爽やかに言い切ったあいつはろくでなし一直線な奴ともいえる。
「ハハハ、そんなことをして、困るのはあなた方では無いのですか!大陸通商協定連盟に加盟できなければ、ここの飛行機の一機だって売ることは出来なくなるのですよ。あなた方の特産品の絹の販売だって――。」
「あぁ、それは大丈夫。なんとかなるよ。俺の領民は誇り高くて勤勉だ。下げる必要のない頭を下げるくらいなら、空賊にだってなるだろうさ。」
エレノーラは勿論よという不敵な笑いを顔に浮かべ、アルバートルは、おい、お前、今やりたいと目を輝かせなかったか、という事なので、大丈夫だ。
俺はにろにろを抱いたまま適当な椅子に足を投げ出す格好で座り込み、威厳があるのかわからないが、前世の姿のまま、デレクを見上げて微笑んでやった。
デレクは俺が暗に飛行機で通商云たら本部を攻めると言っている事に気が付いたか、顔から血の気を失わせて俺を茫然とした顔で見返した。
俺は西洋組に比べればガキみたいな外見だが、一応は享年三十代ぷらすこの世界で十五年という事で、確実にデレクよりも老獪な親父なのである。
「ああ!やりたい!僕、それやりたい!くうぞく!くうぞく!」
いつでも緊張感をぶち壊す俺の魔王様の登場だ。
俺は声のした戸口へと見返して、見るんじゃなかったとがっかりした。
シロロだけでなくアルバートル隊全員が、俺それやりたいって顔なのだ。
「バカ野郎、デレク。お前は火薬庫で火遊びしているってわかんねぇのかよ!」
「ごめんなさい!」
急性ストレスで胃潰瘍を起こしそうな俺に怒鳴られて謝っているデレク君は、一応は大事に扱わねばならない預かりものと言う客人であったな、そういえば。




