城の内装は俺の魔法だったようだ
部屋に戻ってようやく転生後の十五年を振り返ってみれば、俺は俺として認識していなかっただけで、しっかりと前世の記憶を保持していた上に使っており、また俺はちゃんと領主として生きてきたみたいでもある。
なんだかぼんやりしているけれど。
とにかく思い出した事として、俺は無意識の魔法によって前世の記憶通りに建材などを錬成し、それらを組み立ててトイレや台所などの水回りの設備はもとより、城内部を中世から現代へと変えていたようなのだ。
さらに驚くべきことだが、俺は俺という意識を持った日から大型ボイラを城の地下に五年かけて作り上げ、その後は温水やヒーティングだけでなく、高圧蒸気を利用した自家発電によって中世の生活様式から電気のある現代的な生活水準まで引き上げていたのである。
腐っていても鯛は鯛。
落ちこぼれでも機械工学部だった俺万歳だ。
いや、俺の頭にボイラの原理を叩きこんでくれた教授に感謝すべきか。
「ウンチが―。ウンチで一杯になってしまいました!」
一瞬で自分への賛辞がどうでもよくなった。
俺の頭の中は便器に溢れる茶色のうんこで一杯だ。
俺は俺の部屋の戸口に立ち、たった今聞きたくもない台詞を叫んだ生き物が間違った場所に汚物を落とさなかった事こそ喜ぶべきだと自分を慰め、彼に一瞥を与えると、文明の利器の使用方法を授けてやった。
「銀色のレバーを動かしてこい。」
「は、はい!」
たかたかと足音を立ててシロロは自分の部屋へと戻っていき、だが、再び廊下にたかたかと足音高く響かせて俺の部屋へと駆け戻って来た。
「今度はなに?」
「すごい!ウンチが水で流れます!」
シロロは俺の注目を得た事が嬉しいのか、俺の部屋の戸口どころか俺の部屋の中央にまでスキップしながら入って来て、さらに小躍りまでし始めた。
「すごい魔法です!魔力を使わないのに魔法が起こりました!凄いです!ここは凄いところです!」
シロロのセリフで、俺の頭に似たようなことを言い出した女の子の記憶がぼんやりと浮かんだ。すると、俺は急にそこに集中したい思った。思い出さなきゃと、強く。
だからか、俺はシロロにぞんざいに言葉を返してしまっていた。
「うん、良かったね、ウンチが出て。もうお風呂に入って寝なさい。」
まだ真昼間だが知った事か。
ガキは寝かしつけるのが一番だ。
「まだ眠く無いです。それよりもお風呂って?なんですか?」
「普通にお風呂でしょう。体を洗ったことは無いの?君は?」
「ありますよ。教会では体を清める日が決まっていました。きれいな水で顔と手を清めるのです。夏は気持ちがいいですけど、冬は寒くて辛いものです。」
「いや。温かいお湯に体を入れてだね。」
「僕を煮るんですか?いやー!たべられるー。いやー。たべないでー。」
俺は自分を罵った。
余計な一言のせいで、俺は風呂を知らない子供を風呂に入れるという難問に挑戦しなければならなくなったのだ。