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デレク君は二十五歳という坊やだからさ

 栗毛の髪を短く刈った頭をしたデレクは、水色の大きな瞳をより大きくするような大きな眼鏡をかけており、一見新卒の新入社員のごとく純朴そうに見える。

 が、大陸通商協定連盟から派遣されてきた彼は、その栗色の短い髪の毛が頭頂部でくるくると渦巻いているように、意外と曲者なのである。


 銃騎士スクロペトゥムである彼は、アルバートルと同じく、いや、アルバートルよりは熟練度が低いが、サーチアイスキルはかなりのものだ。


 よって、デレクの本当の仕事は、試作飛行機の操縦を学びに来たのではなく、飛行機を飛ばす技術や俺を探り、うまくいけば俺と領民との離間をも企んでいるという、通商云たら側の工作員でもあるのだと思う。


「あなた方は何をしているのかわかっているのですか?これは、殺人にもなりますよ。あなた方の、いや、ダグド殿の浅はかな行為で、いったい何人がクラーケンによって殺されたと思っているのです。」


 デレクは今度は俺を指し示し、俺のにろにろ達は、いや、アーウィンの方が、デレクに向かってグンと一本触手を伸ばした。

 そしてその触手で彼の人差し指を掴んだと思ったら、うわぁ、折った。


「ぎゃああああああ。」


「あぁ、ごめん。君こそ人様を指さすなんて駄目だよ。うちの子にはそんなことをしてはいけませんと躾をしているからね、つい、だったと思うよ。子供のした事だし、許してくれるよね。さぁ、謝ろうか、君達も。ごめんなさい、だよ。」


「ケツアナニツッコンデヤル。」

「イヌノクソクエ。」


「ちょっと君達!どうしてそこで急にバリエーション豊かになるの!」


 真っ直ぐな男の筈のアルバートルが、隠しもしないで吹き出していた。


「あ、あなた方は。アルバートさん、エレノーラさん、いい加減に目を覚ましてください。僕へのこの所業を見たでしょう。彼は人間ではなく、悪竜なのですよ。あなた方を外見で騙していたことは良いのですか!」


 俺には人間だった前世がある。


 だからか、黒龍ダグドではあるが、前世を思い出してからは人型の自分と思える姿を取る時は、その前世の青年、日本人のどこにでもいるだろう自分の姿を取っていた。

 ただし、それでは威厳や魅力が無いだろうと、前世でいいなと思った映画俳優のような姿形をとって領民の前に出ていたのだ。

 そんな俺のその真実を知っているのは、俺の子供となった魔王様のシロロと、俺の差配人で俺の命綱のエレノーラと、完璧なサーチアイを持ったアルバートルだけだった。


 デレクが来る前は。


 彼は初対面の俺を前にした途端に、真実の姿を隠すとは何事かと叫んだのだ。

 続けて、商取引は信用が大事ではないのですか!と。

 その時の俺は、デレクが俺の中にアルバートルが見ていたのと同じ日本人の前世の姿を見つけたからだろうと考えた。


 そこで俺はめんどくせえなと思ったので、取りあえず肉体を変化させて、まぁ本体のほとんどを城のボイラの材料にしているので殆ど張り子だが、間違えようのない黒竜の姿を取って彼を脅かしてから、仮初の人間の姿の時は前世の姿を取ることにしたのである。


 アルバートルは竜の姿の俺に嘘偽りなく竜だったと驚いていたが、実の姿こそそっちだって。


「勝手にダグド様のせいにしないでいただけます?このおチビちゃん達に関しては、ダグド様の恩情で教会から助け出されて庇護されているだけですのよ。ダグド様を侮辱をなさるのならば、飛行機の話はここでお終いですわね。」


 俺こそびくっとしてしまう辛辣な女性の声が会議室に響き渡った。

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