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それ以上言わないでくれ②

「ミューイミューイミューイミューイ。」

「ミューイミューイミューイミューイ。」


 俺の腕から降ろして椅子に座らせた途端に、二匹は一斉に泣き出し、俺はその様子に前世に飼っていたモルモットを思い出した。

 シロロと言う名の真っ白なあの子は、自分の要求を通すためなら俺の気が狂う程に泣きわめいていたものである。

 俺は会議室の棚にあるクッキージャーからクッキーを二枚取り出すと、小煩い生物の口に咥えさせた。


 ここに来たばかりは、加工された食べ物は俺が食べるまで食べないという、俺を毒見にしていた二人だが、最近は食べ物であれば何でも口にするようになっている。


 にろにろの足ではなく、人間の手の方でクッキーを掴んで食べだした彼女達の姿に少々ホッとし、人間の勢いってすごいなと改めて思った。

 普通であったら、これほどの異形のものを助ける気にはならないだろう。

 アルバートル達は教会の所業、罪のないデミヒューマンの子供を誘拐して長寿の薬を作る、ということに怒り心頭で、とりあえず生きている者はみんな助け出してしまったのである。



 なのに、俺が結局押し付けられるのか。


「ダグド。」

「ダグド。」


「どうしたの?」

 グリもウィンも食べかけのクッキーを掲げると、ダグドダグドと口々に唱えるのである。


「どうしたの?」

「おいしいって、言っているのではないですか?うれしい、おいしいってのが彼女達にはダグド様って事なんでしょう。」

「君は相変わらず世辞はうまいな。俺の代りに子供を預かる気はこれっぽちも無いくせに。」

 アルバートルはワハハハと嬉しそうに笑い声をあげ、ちょうどその時に会議室のドアが開いた。


「あ、ダグ――。」

「うわあああああああああああああああ。」


 エレノーラの言葉を遮って悲鳴を上げたのは、通商云たらから派遣されてきた騎士のデレクだった。

 まぁ、グリとウィンの姿は確かに脅えるだろうな、とは思ったが、指を差されて悲鳴をあげられて嬉しい人はいないだろう。

 俺は失礼な男の所業に彼女達が傷つく前にと、彼女達を再び抱き上げた。


「ど、どうして、クラーケンがそこにいるのです!それは、海洋種族でも、とても危険な魔獣では無いですか!」


「えー、クラーケン風キメラ族じゃないの?」


「純粋なクラーケンです。」


 俺は腕の中でにろにろ動く子供達を見下ろした。


「クソマズイ。」

「クソマズイ。」


「うん。シチェーション的にはそれは合っているかも。」


「何を悠長な!すぐにそれを海に帰してください。最近二か所の海沿いの街がクラーケンに襲われたと聞いていますが、あなた方のせいでしたか!」


「うわ、くそまずい。」

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