ようじょ
いままでのあらすじ
飛行機作ったよ。
誘拐されていたデミヒューマンの子供達を助けたよ!
ハハ、ガルバントリウムと完全に敵対しちゃったね!(by ダグド)
キメラ族とは、様々な種族の混ざりあいによって生まれる種族なのだそうだ。
つまり、種族同士の掛け合わせでハーフかデーモンになるのだが、そのデーモンや別種族のハーフ同士が合わさった結果で時々生まれるのだという。
混ぜるな危険、そのものだ。
俺の目の前の青い肌に両頬に赤いラインがあるデーモンが、ふぅと熱いお茶に溜息を吐くと、俺への説明を再び始めた。
「ですからね、この子たちはより純粋なるデミヒューマンの因子が表面化しているという事なのです。長い年月、デミヒューマンは人間達の文化に触れ、集団化だけでなく社会性も育ててきましたが、彼らは森や荒野を彷徨っていた時代の本能のまま生きる生き物と言ってよいでしょう。」
俺は彼の住む水車小屋を見回して、彼の為に俺のエレノーラが住み易いようにと誂えた家具やファブリックがボロボロになっていることで、彼の説明を裏付けているのだと理解した。
それどころか、コントラクトゥスのカップを持つ手の甲に、彼には無いはずの赤いラインが幾筋も見受けられる、と言う状況なのだ。
俺は溜息を吐くと、彼に押し付けた子供二人を引き取ると言うしかなかった。
「おいで、グリフィスにアーウィン。」
これは彼らの本当の名前ではなく、俺が勝手につけたものだ。
彼らは脅えて言葉を喋らないのかと思っていたが、彼らは言葉を話さないのだと保護した数日のうちに俺達は理解せざるを得なかった。
彼らはどこに住んでいたのか、家族はいたのか、どころか、名前も年齢もわからない、本当に理解しがたい生き物だったのである。
しかし、俺の言葉に彼らは反応し、壊れたドアで開け広げられたままの隣の部屋、ベッドの下に隠れていたらしき二人はのそのそとベッド下から出てきた。
青い髪の毛に真っ黒の瞳をした青白い肌の幼女がグリフィスで、緑色の髪にオレンジ色の瞳をした血色のいい方がアーウィンである。
そっくりな顔は、ドングリのような大きな目に小作りな鼻や口元という、俺が前世でよく目にしたドールフィギュア系の造りと言う不気味なものであり、一応人型であるが腰から下はクラーケンと言う触手系の恐ろしいものだ。
名付けた理由はこいつらが破壊的だという事で、破壊力学に関係した名前でしかないが、適当に呼んだらグリフィスの時に青い奴が動き、アーウィンの時に緑の奴が動いた、と言うだけの話だ。
一応女の子の外見から、気持ち的には破壊的イノベーションという事でディストロとイノでも良かったなと後悔している。
まぁ、こいつらから破壊という言葉は絶対外せない、が真実である。
デーモンのコントラクトゥスにとって、彼らがディアボロでしかない、というのが笑えるが。
グリフィスとアーウィンはにろにろとたこ足を動かして素直に俺の前に来ると、俺に対して両腕を掲げた。
俺は大きく溜息を吐くと、彼らを両腕に抱き上げた。
「素晴らしい。純粋だからこそ、自分に餌をくれた最初の人を親だと思い込んだのですね。」
「一緒にくそまずい牛乳粥を食べただけなのにね。」
「クソマズイ。」
「クソマズイ。」
俺に抱かれたグリとウィンが、嬉しそうにして初めて喋った。
なんだか、水の中で発声したかのような、ボヨンボヨンと響く音声だ。
喋れたのだと喜ぶべきだが、彼女達の言葉の内容は問題だ。
「ダメだよ、そんな汚い言葉は。忘れよう、ね。」
慌てた俺を大きな黒い眼とオレンジの眼が見つめ、彼らはうんうんと頷いた。
「クソマズイ。」
「クソマズイ。」
俺は子作りもしたことが無いのに子供ばっかり増えていくなあと、くそまずい事態だぜ、と情けない思いをしながら家に帰るしかなかった。




