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ゴーレムと言う名の肉人形

「いいか、奴らを戸口から中に入れるな。入ったらそこで終わりだ。ありったけの弾を打ち込んで、奴らの動きをストッピングさせるんだ。」


 アルバートルの命令が下るや、一斉射撃の音が祭壇中に響いた。

 戸口からほんの数センチでしかないが、彼らの銃撃によって後退させられたゴーレムは、後退りしただけでなく、ぼろぼろと体から肉塊を次々と落とした。


 本来ならば泥の塊の中に生贄を入れ込む方式で作るものなのだが、核となる生贄を入れ込めなかったがために、泥に人間の死体を貼り付けているという醜悪すぎる泥人形だ。

 それゆえにアルバートル達の射撃によって死体の一部がゴーレムから剥がれ落ちてもいるのだが、ゴーレムを作る魔法がかかってるため、それらは落ちた先から破片だろうが立ち上がり、アルバートル達へと向かってくるのである。


 カイユーが連射短銃の軽い音が連続音を響かせて、動きの止まらない肉片を壁や床に弾丸によって貼り付けた。


「うぇ。気持ち悪い。」


 ぼとりと、上半身だけの死体が床に落ちた。

 すると、その死体に向かって落ちていた肉片が集まり、なんと、子供のサイズほどの肉人形へと生まれかわった。


「くそ、バラすな危険か。」


 自分のガトリングによる結果だと、ティターヌは大きく舌打ちをした。


 肉団子の子供は両腕を水平にすると、そこに祭壇の間に転がっている金属の破片やアルバートル隊の撃ち込んだ弾丸までも腕の手の部分に吸い込むと、そこからにょきっと金属を再編成した大きな爪が付き出して来た。


「混ぜるな危険、もあるかもね。」


 カイユーがへらへらと答え、彼の銃が連続音をあげたが、撃ち込まれた弾によって、よりカギ爪を大きく凶悪なものに変えただけだった。


 ゴーレムよりもこの形態の方が使えると術者達も考えたか、戸口の方では次から次へと人肉で作った小型ゴーレムが次々に生まれ始めていた。


「俺がそいつらを。剣ならば。」


「フェール、円陣を崩すな。パラディンは後方で控えていろ。」


「そうそう。俺も敵さんと面を会わせたくないから、接近戦は嫌いだけどさ。」


 ガッチャンと大きな金属音が三つ起こり、それは、アルバートル隊のスクロペトゥム達がいつもの自分の武器からショットガンへと持ち替えた音だった。


「あれ、エランは?」


 カイユーが横にいた筈のエランを見返したが、エランは跪いたまま、その上、両手を交差させて胸に当てているという、司祭の祈りのポーズを取っていた。


「エラン。」


「カイユー、エランを好きにさせろ。」


「団長。」


 カイユーはアルバートルが父を失ったばかりのエランを思いやっての事かと考えたようだが、彼の頭領はとても悪そうな笑顔でカイユーにウィンクをしたのだ。


「これからエランは戦う司祭様になるんだよ。」


「え?」


 アルバートルの言葉通り、跪いているエランの頭上に起こるはずのない光が輝いてエランにだけ降り注いだ。


「感謝します、神よ。」


 彼は立ち上がり、ゴーレムに右手を翳した。


「生を持たぬ者は憐れなり、心を持たぬ者は哀れなり、生きとし生けるものの理を失ったものは、え、うわ!」


 エランは背中を後ろからぐいっと引っ張られたのだ。


「三分経ちました。ごはんの時間です!」


 エランが司祭としてゴーレムを破壊する間も与えず、俺が祭壇の間の仲間達にホームタウンを唱えるよりも早かった。

 昼飯時間に気付いた俺の魔王様が、結界の切れ目など待つ必要が無かったくらいに無理矢理に近い形で、全員、俺の領地に連れ帰ったのである。


「畜生、シロロ!お前には結界なんか無意味なんだったら最初に言ってよ!」


 俺は結局中ボスなんだなと、発射台を片付けると旗を燃やし、そして尻尾を撒いてすごすごと彼らの後を追った。

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