退路
俺達の強襲を俺が遠隔で見ているように、遠隔で見ている教会の者達も存在するわけで、彼らがゴーレムという武器を使って俺達を皆殺しにできると踏んだのは、海上に浮かぶこの島に魔法遮断結界を張り巡り直したからである。
俺はそれに気が付き、だが、しまったと思うよりも、やりたくはなかった最終の手を使うべきなのだと決意したぐらいだ。
「取りあえず、時間を稼いでくれ。ゴーレムを倒してくれたら最高だね。」
ゴーレムたちは俺達を祭壇の間に押し込めることに成功した。
俺達は彼らが大きすぎて部屋に入れないという幸運を感じてもいたが、あと数分もしないで彼らは戸口を壊して入ってくることは確実であろう。
そして、その時に祭壇の天井も俺達の上に落ちるだろう事は、つまりそれで全滅してしまうだろう事は簡単に想像できた。
「ハハハハハ。ダグド様、子供を奪還したら帰還じゃありませんでした?」
「はははは。アルバートル、状況は刻一刻と変わるものじゃないか。」
「ハハハハハ。」
「はははは。」
「ハァ。」
アルバートルは大きく息を吐き出すと、彼の大砲を呼び出した。
そして、彼の横にいたティターヌも、だ。
「すごいな、君の武器はガトリング砲か。それは一体どうしたんだ。」
ティターヌは自分の武器を見下ろすと、誇らしそうに顎をあげた。
「ハハハ、努力のたまものです。六本の銃身を束ねてクランクで回す事によって弾丸を連続して飛ばす事が出来ます。」
いや、どんなものか知っているし、お前はその銃の名前が開発者のアメリカ人のガトリングさんからだとは知らないだろう。
限定武器予定だったそれを所持するティターヌに俺は驚いただけであり、ゲームは俺が死んだことで開発中止になったと思っていたが、開発販売までもしていたのだろうか。
それとも、俺が今いるこの世界は、この世界の本当の神が俺達の脳みそにイメージを注入したことでゲームを創造したと思い込ませられているだけで、本当は現存しているパラレルワールドなのだろうか。
「まあ、考えても仕方が無い。頑張れよ。そして俺も、グロブス召喚!」
「え、ダグド様!どこにグロブス召喚を!」
「ははは。それは第一の旗が残る丘にだよ。俺はそこから教皇のいる教会に怒りの鉄槌を下すのさ。いいか、三分は円陣を組んで耐えろ。絶対に家に戻す。」
ゴーレム相手に身動きしないで耐えろとは、三分は長すぎるだろう。
しかし、分厚い結界の隙間を作らねば彼らを家に戻せないし、円陣を組んでもらわなければ、助けた子供達、コントラクトゥスの生き残った二名を含んだ五名を一緒に領地に連れ帰れないのだ。
俺は教皇の住む教会に向けて、十二メートルほどのミサイル、つまりスカッドミサイルをグロブス召喚した発射台から打ち上げた。
核抜き雷管抜きのミサイルは、到達地点に突き刺さるだけだろうが、結界が乱れる程の恐怖を相手には与えられるはずだろう。
距離的に、着弾まで、あと二分三十秒だ。




