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光はどこにある①

 アルバートルは迷いのない足元をしていた。

 迷路のようなカタコンベの回廊を迷わずに歩いていたのだと、俺はエランの父がいた場所から真っ直ぐに前を向いて歩くアルバートルの後ろ姿を眺めているうちに気が付いた。


 彼は全てを完全に知っていたのだろうか、と。


 俺が気が付いた事を知ったかのように、アルバートルがピタリと足を止めた。


「ダグド様。急に真っ暗になりました。」


「いや、灯りはまだあるだろ。」


 振り向いたアルバートルの目元は真っ黒な靄に覆われており、俺は彼が迷わずに歩き続けていられた理由を理解した。


「本当に君は馬鹿だな。スキルを全開したままではかなりの負荷だろ。君はもう少し自分を労わりなさいよ。それは単なるオーバーヒートだよ。しばらく目を閉じて、カイユーにでも手を繋いでもらって歩きなさい。」


「ハハハ。ダグド様には労って貰えないのですね。」


「ほら、アルバートル、屈んで。」


 魔王様には労えてもらえたようだったが、実は魔王様は歩くのに飽きただけであったようで、シロロの方へアルバートルが屈んだ途端に、シロロがアルバートルの背中に乗り込んだのだ。


「うわ!って、でも見える。」


「見えないと困りますもの。モヤモヤは片付けたので、目的地までこれで行きます。おやすみなさい。」


「え、あの、おやすみなさいって、シロロ様?」


「気にするな。昼飯の前の昼寝だ。」


「え?」


 俺は子供の世話から解放されるひと時を得るために、シロロには決まった時間の昼寝を義務付けている。


「うわぁ、シロロ様は豪胆ですねぇ。ですが、全く敵の影一つ見えないから、なんだか肩透かしでもありますねぇ。俺の銃捌きをダグド様に見て欲しかったのに。」


 カイユーは残念そうに、いつのまにか呼び出していたらしい短銃をくるくると右手で回した。


「俺も不思議に思っていたよ。上陸に対しての抵抗に比べると、ここは完全に見捨てられたと考える程の敵の無さだ。」


「……見捨てられたのかもしれませんね。イヴォアール、ポータルを使ってのゴーレムの移動は可能か?」


「団長、俺はポータルをくぐれる生物以外の移動は知りません。」


「そうか、それなら、大丈夫かな。」


 アルバートルは安堵の吐息を吹き出すと、背中のシロロを背負い直した。


「ゴーレムは移動させる必要はありませんよ。」


 脅えた声をあげたのは、団員ではなく、博識のコントラクトゥスである。

 彼は真っ青な肌が青黒く変わるほどの慄きの表情を浮かべており、しかし俺が彼に質す前に、俺の魔王様が寝言のようにアルバートルの背中で呟いた。


「作ればいいのだもの。たくさんの生贄があればあるほど、ゴーレムは力を増す。」

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