飛竜との戦闘
ゲーム世界に置いてそれなりに戦えるようになったプレイヤーには、空を飛ぶので攻撃が当たりにくく、その上、集団で襲ってくる飛竜は嫌な敵の一つとなる。
全長二メートル半のミズオオトカゲぐらいの大きさのその竜は、トカゲと言うよりも鳥に近い形のとおりに色とりどりの羽を持つ。
その姿は実に始祖鳥のようにも見える、というか、始祖鳥に似せて俺はデザインした。
大きなスクリーンに映りだされたそれは、俺がデザインしたそのままの美しい姿で、俺は彼らに弓引く事がとても残念に思ったほどだ。
「単体では弱いですが、この数では。」
数十羽の群れが出現してきたのであり、その小竜達はモニークの進む道どころか、彼女の退路をも絶ってやろうとしているのか、真横にずらりと広がった。
まるで一昔前の、ロールプレインゲームでの敵出現そのままの情景だ。
「モニーク、これから攻撃態勢だ。視界に緑色の四角と丸が浮かぶが、それが重なって赤くなったら操縦桿のボタンを押せ。」
「はい。」
スクリーンには横並びする飛竜の大群が映し出され、そこには四つの四角と四つの丸が映像の邪魔をするように動いている。
竜は狙いを完全に定めるために動きを止めた。
モニークの四角は竜の大群に等間隔に並び、丸もキレイに四角に重なった。
敵にとってのレッドアラート。
「撃て。」
俺の声のすぐ後に、スクリーンには火のつぶてが攻撃目標へと向かって飛び、敵一羽を射落とすどころか、横一列に炎が広がり、一瞬にして薙ぎ払ったのである。
目の前で起きた大量虐殺に会議室はシンと静まり返り、部屋と同じくらいに、モニークも完全沈黙してしまっている。
彼女は自分のした事に脅えて操縦桿を手放してしまったどころか、操縦席で硬直してしまったのである。
破壊竜である俺は彼女の耳に囁いた。
「これは君のせいじゃない。俺が君を守るためにやった事だ。」
モニークは唾を何度も飲み込むと、再びグッと操縦桿を握り締めた。
「いい子だ。さぁ、どんどんいこうか。空は俺達のものだ。」
ここでモニークの、はい、が聞けるところが、叫んだのはモニークを落とそうと企んでいたイヴォアールだった。
「畜生!俺はあの時どうして逃げたんだ!」
ドンと、会議机に両腕を叩きつけて身を乗り出して俺に嘆願してきたのは、ぎらついた目をさせたフェールだ。
「俺にも作って下さい飛行機。俺にも空を下さい!俺もやりたい!」
「お前は銃騎士も選ばなかった剣騎士だろうが!」
「うわぁ、畜生!こんなオプションが付いているなら乗ったのに!絶対絶対に俺は乗ったのに!」
「うるさい!カイユー!本気で石をぶつけるぞ!」
俺は可哀想な始祖鳥ではなく、小煩いアルバートル隊こそ撃ち落としたくなっていた。




