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誰か空を飛んでくれ

「おい。誰かこの飛行機に乗ってくれ。俺の魔法がどこまで使えるか確認したい。」


 誰か志願するかと見回したが、迅速をモットーにするらしいアルバートル隊の連中は、一斉に四方八方へと走り出していた。


「シロロ、お前にたの……。」


 コントラクトゥスがシロロを小脇に抱えて走り去っていった。


「おい!それは俺の!」


「いけません。この方を危険には曝せません!」


 コントラクトゥスの子供達の奪還のために、どうして俺があれこれ悩んでいたのだろうかと、本気で空しくなっていた。


「畜生。引きこもって本格的に二式飛行艇を作ってやる。そうして、あいつら全員載せて撃ち落としてやる。」


「二式飛行艇って何ですか?」


 俺は虫でも本の虫のモニークの声を久しぶりに聞いたと、彼女の赤毛のつむじを見下ろした。

 しかし、俺の目に入ったのは、つむじではなく、そばかすの浮いた悪戯そうな表情をしている女の笑顔だった。


「おや、今日は久々のツナギ姿だ。」


「あら、ドレスは食事会やお出かけ、それに、ダグド様に会う時だけですよ。汚れたら悲しいもの。」


 モニークは女の子そのものの台詞を口にしながら、少年のように鼻を鳴らした。


 俺の乙女の中では一番華奢ともいえる彼女ではあるが、彼女は俺のツナギを着て本を読んでいるか、俺の作った絡繰りを修理したり、好奇心が強すぎて分解したりもしてしまうという迷惑な小鬼でもある。


「二式飛行艇とはね、君の目の前にある小さな飛行機を、もっと大きく、もっと格好よくしたもの、だよ。」


「うわぁ、いいですね。で、これって、空を飛ぶのですか?これにあたしが乗ってもいいですか?」


 俺は駄目だと言おうとして、モニークの空色の瞳が期待にふるふると輝いているのを目にして、いいよ、と言うしかなかった。


「いいよ。乗ったら、俺の言う通りにして、絶対に余計なことをしてはいけないよ。いいかな。いつものように分解は絶対にダメ。」


「はい。でも、分解はエレ姐がやっていたから、あたしもいいかなって。あと、元通りにできないからって、あたしにって手渡されたことも。」


 俺はぎゅうっと目を瞑った。

 エレノーラこそそういう奴だった。


「ダグド、さま?」


 俺は飛行機内の設備を見回すと、モニークに説明をすることにした。

 魔法錬成によるなんちゃってコックピットでしかないが。


「いいよ。さぁ、行くぞ。椅子についているベルトを体に締めて、いいかな。目の前にある輪っかのような物がハンドルだ。これで方向を変える。ハンドルを手前に引けば船首をあげることも出来る。まずは俺の言う通りに動かして。そして、足元にあるこのペダル。これはこの飛行機の動力を起こすペダルだよ。俺の魔法が途切れてしまった時には、君がこれを踏んで飛行機を制御するんだ。ほんの二秒ぐらいでいい。俺は絶対にお前を見失わないし、絶対に守るから、信じて制御するんだ。」


 くどくどしさと命令口調でモニークがうんざりするかと思ったが、彼女は乗り込む前と同じぐらいに目を輝かせたまま、それも物凄く嬉しそうな笑顔で俺を見上げているではないか。


「絶対に信じています。」


 俺はシロロにするみたいに、モニークの頭にぽんと手を乗せていた。


「じゃあ、行くよ。」


「はい!」

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