魔法生成による、賭け
銅があってセレンがあるというならば、つまり、目の前の銀ではない鉱物、例えばインジウムを含む鉱石であるならば太陽電池の作成が可能であり、電気飛行機の作成も可能では無いのかと俺は考えたのである。
賭け、とは、俺の魔法によって太陽電池を作り、俺が前世で欲しいと思った小型飛行機がつくれないかと試した、ということだ。
時速110㎞で三十分だけ飛べるというのであれば、一回休憩を入れれば一時間で目的地に辿り着けるという事ではないのか。
しかし、充電と言う長い地獄の時間をどうクリアするべきかという命題が残る。
さぁ、ここで問題だ。
燃料の切れた飛行機は、死んだも同然では無いか?
コントラクトゥスは、死んだ飛行機をも召喚できるのではないのか?
俺の夢の飛行機は一本の黒い繊維のような物が糸をつむぐように形を成していき、これは初めての感覚だが、出来ないと思うよりも前世で持った憧れが実現していく高揚感でどんどんと魔法生成の速度も練度も上がっていった。
「わぁ、すごい。なんですか?その変な鳥のような形の箱は!」
「わぁ、ダグド様。はこだ!箱!変なことり箱だ!」
カイユーが子供のような声で歓声を上げる横で、本当の子供の声も上がった。
いつの間にか俺の横に立っていた彼は、白い肌を赤々と上気させ、真っ白な髪を汗に塗れさせて顔じゅうに貼り付けているという有様だ。
「おい、シロロ。お前のぴゅるぽはもういいのか?」
全てをやり切ったというような満足な笑顔を彼は俺に見せ、彼は魔王であるというセリフを言いきった。
「はい。もう飽きたから上げます。」
「いらねぇよ。生き物は最後まで可愛がれ!」
勝手に呼び出されて見捨てられた竜は、飼い主の言葉が分かったのかしおしおと萎んでいき、そのままぽんっと消えた。
心の中では竜が消えた事に拍手喝采だが、可哀想な竜だなと言う風な一瞥を親として子供に与えた。
当たり前だが、子供が同じ場所にいることは無い。
俺が作り上げた小型飛行機に、彼は夢中になって纏わりついていたのである。
「全く、子供は。」
「それで、この箱は何ですか?」
「あぁ、アルバートル。飛行機だよ。空を飛べるんだ。」
「これで、あの島に逝けと。」
アルバートルの顔つきは平静を保っているが、行けが逝けに変換されて俺に聞こえた程に、彼の声には不信感が満ち溢れていた。
「あぁ、魔法生成だから安全に飛べると思うけどね。試してみないかい?」
「これですと、一人しか乗れませんよね。誰が島に。」
「ああ、君の不審はそっちか。馬力的に一人乗りがせいぜいでね。」
「確かに空を飛べそうですが、同じような大きいものを作って、ダグド様の突風魔法で飛ばすという事は出来ないのですか?」
俺は空を見上げて、その手があったと、ぼんやりと考えた。
俺の大好きな二式飛行艇を明日までに建造するのは無理だが、木の骨組みに帆布を貼ったぐらいの張り子であれば今すぐにでもできる。
問題は、俺に遠隔魔法が使えるのか、という事だけである。




