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こうしよう、ああしよう、もう、面倒なので逃げちゃいたい

「だだだん、だだだん、だだだだだだだ。だだだん、だだ……、はぁ。」


 歌って特撮映画だと思い込もうとしたが、俺には無理だった。


 身長五十メートルも無いが、確実に十メートルはあるTレックスにも似ている物体が俺の領地を襲っているのだ。


 体色は黒に近い焦げ茶色だが、所々にメタルメッキを施したような鈍い輝きもあり、頭部には牛のような角もある。


「うきゃあああ!ぴゅるぽー!いけー!」


 シロロの嬉しそうな金切り声は、勿論俺の頭上からだ。


 彼は怪獣の角をつかんで肩車のようにして乗っており、それはもう、さすが魔王様だと俺が脱力したくなる程に、彼は怪獣を使って嬉しそうに俺の領地を破壊しているのである。


 取りあえず、畑も民家も無く、この大岩は邪魔だな、の辺りを破壊しているので、シロロを怒鳴りつけるのは一先ず止めた。

 代りに、おろおろ顔のコントラクトゥスに尋ねた。


「どうしたの?あれ。」


 真っ青な肌色が灰色になるんじゃないかと思う程に、彼はかなりやつれていた。


「あの、シロロ様にぴゅるぽを出して欲しいと望まれたので。」


 小型でも怪獣映画の主人公にしか見えない竜を、俺はもう一度見返した。

 あの不快の谷の竜には絶対に見えない。

 俺はコントラクトゥスに再び振り返った。


「どうしたの?あれ。」


「聞いて下さい!凄いですよ!コンさんに召喚を頼んだ人によって、召喚獣の形態が変わるらしいんですよ!」


 俺がいつも小石をぶつけたくなるカイユーが、俺こそピンクな不快の谷だったと言っているも同然の内容を俺に嬉しそうに報告した。


 その薄茶色のマッシュルームっぽい長めの短髪をどピンク色に染めて、お前も不快の谷の住人にしてやろうか。


 俺はコントラクトゥスを質すべく振り返ったが、コントラクトゥスは既に俺から顔を背けていた。


 ゴ、ゴワン!


 シロロのぴゅるぽが大岩を打ち砕いた音に振り向けば、打ち砕かれた岩は銀色にキラキラと煌いていた。


「銀ですか!凄いです。シロロ様はやっぱりすごいです!」


 カイユーは子供のように金持ちになれると喜びの声をあげたが、俺の目にはその鉱物の輝きが銀とは違う輝きに見えた。


「違いますね。見た目は似ているけれど、違う物質です。」


「あぁ、アルバートルか。やっぱり銀とは違うのか。君のサーチアイのスキルは、鉱物までも見通せるなんて凄いね。」


 アルバートルは俺の誉め言葉に喜ぶどころか、健康的な肌の色がただの貧乏くさい肌色に見えるくらいにやるせなそうな笑顔を浮かべた。


「金メッキの鉛の塊に騙された事がありますから。」


「そうか。」


 俺は哀れな男から目を逸らすと、賭け、をしてみた。

 俺の宝物庫ともいえる城の地下の鉱脈には、銅が無意味に転がってる。

 銅があるというのならば、セレンだってあるのだ。

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