陸海空を抑える事はオセロゲームの隅を取るのと一緒②
トレンバーチ、すなわち商人達そのものとの諍いが今後ダグド領に引き起こす事、それは今後しばらくは布地どころか市の利用もダグドの民には出来なくなるだろうという、商人達による経済封鎖だ。
だからこそ俺は、慰謝料だ賠償金だと騒いだのだ。
結果として、二年は凌げる小麦などの必要物資の備蓄は出来たので、とりあえずは商人達からの締め出しには耐え得るだろう。
全く、先見の明のあるエレノーラ様の手腕には感謝するばかりだ。
そして、破壊竜ダグドどして、悪辣な商人を破壊する気持ちは大いにあり、実は今後の策として、俺は出店税を取らない自由市の設立も考えている。
出店税を払っている一般市民達に、商人達の膝下で商売をしなくても良いという認識さえ広められればこっちのものだ。
そのことにより大陸通商云たらによる武力的嫌がらせも起こり得るだろうが、俺には有り余る戦力というか、手に余る戦力であるアルバートル隊がいるのであるからして、積極的に使わせてもらおうと考えている。
話は逸れたが、現在の状況として、陸も海も使えないのであれば、空しかないが、この世界に置いては空路を使えるものが存在しない。
だからと言って、アルバートル達に教会に侵入してポータルを使えなんて、言えるわけもないし、俺こそ教会から離れていたい気持ちである。
「どうしようかな。一回ボイラを解体して俺が竜に戻れば行けるかな。」
口にして、一瞬でそれは不可能だと認めるしかなかった。
ボイラが止まったその時は、制御されていた火山エネルギーに水脈のエネルギーの一気の放出という、大災害がこの地で起きるだけだ。
「俺ってすごいストイックで自虐的な奴だよな。」
俺は人肉を食べた自分を戒めるために、地下のボイラを作ったのであったのだ。
囚人が好きに枷を外して檻を出入りできるのであれば、それは罰でも何でもない、という心持で、絶対に外せない枷を作った自分に厭きれかえるばかりである。
「あぁ、どうしよう。夕飯までに方向を決めなければ夕飯抜きだよ。まぁ、冗談だけでなく、コントラクトゥスの子供達の生存率が刻一刻と下がっているし、あぁ、本気でどうしよう。翼竜はこの世にいないのかな。」
どっどーん。
「ぴゅるぽー!」
きゃあああ。
うわあああああ。
がっしゃーん、どっかーん、どっどーん。
「ぴゅるぽー!」
俺は外で起きた破壊音と領民の悲鳴と馬鹿の大声に、耳を塞ぎたいどころか鼓膜を破ってしまいたいくらいの気持ちであった。
取りあえず聞かない振りをしていつもの倍の動作で養蚕仕事をし終えると、取るものも取らずに、俺は外の大騒ぎへと駆け出していた。