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聖イグナンテス教皇

 シロロとエランの経験話だけでなく、秘密基地に行ってアルバートルに話を聞いてみれば、団員全て教会の暗部については知っていたと簡単に答えた。

 彼らはだからこそ自分達には思いきれなかった脱走を企てたエランを助け、終には教会を裏切って、俺の竜騎士になることを望んだというのである。


 ここで、アルバートルとエランの「知っていたんだ。」「当り前だろ、俺達はみんな同じ思いだ。」的な暑苦しい男同士の友情の温め直しは割愛する。

 が、妹には間抜けと扱われているが、実は真っ当な賢い男でしかなかったアルバートルを俺はかなり見直していた。


「意外と君は考えていたんだね。」


「ダグド様は俺達には酷いですよね。」


「ハハハ、俺は俺の乙女達が怖いからね。さて、コントラクトゥスの子供達が攫われた教会の目星が、君にはつくかな。」


 ゲームでは勇者は教会のポータルでクエスト場所に飛ばされるので、俺にはどのあたりか見当がつかない。

 というか、まあ、切り張りされた地図上の移動という感じで作ったので、実際はどこにあたるのか実生活者に聞かなければ知り得ないというのが本音である。


「一般人が紛れ込むことは無い、ガルバントリウムの墓所の一つです。シロロ様が普通の教会内で薬にされかけたのは、あの司祭の勝手な行動でしょうね。彼はシロロ様に殺されなければ、教会によって処分されていたのは確実です。」


「それじゃあ、あの司祭の死を隠す事はすれども、討伐隊なんて出して大騒ぎはしないはずだろ。」


「そうですね。でもその時の俺達は、教会大事の聖騎士ですから。義憤で勝手に兵が動くってよくあるでしょう。」


「ハハハ、本気で君達こそ教会に戻れない身の上だったんだ。」


「破門されるならば、暗黒竜を倒したって箔が欲しいなってヤツです。傭兵としてやって行く事を考えた考え無しの行動ですよ。そして、考え無しで恩知らずの俺は、教会の秘密の墓所を漏らすことも出来ます。」


 俺はアルバートルが指し示した教会の墓所が書き込まれた大陸の地図を広げ、確実にその場所にはポータルが無ければ移動ができないと確信した。


「ポータルは教会が作ったものか?」


「古からのものに、建物を後から被せた、が、正しいですね。」


「教会の人間は全員がポータルを知っているのか?」


「いいえ。使った者だけです。そして、知った者はそこで処分ですね。」


「君達を処分しようと考える教会は、そんなにすごい武力も持っているのか?」


 アルバートルは軽く両眉を動かして、死の詠唱です、と答えた。


「そうか。」


 人間側も魔物側も魔法名は違うが、高位魔法者は持つことのできる死の魔法だ。

 絶対かかるのではゲームバランスが崩れるので確率計算が施されているが、上位ランクになればなるほど確率は上がる。


「そんなにすごい魔術者を持っているのか。」


「イグナンテス様ですからね。」


 アルバートル達の考え無しの行動や、大いに食い、大いに飲み、派手に笑い、派手に喜ぶという所作が、全ていつ死んでもおかしくない身の上だったからこそだと告白したも同じだった。

 彼らは教皇によって死の呪いを常にかけられていて、いつ、その魔法が効力を発揮するのかわからない、という恐怖の中にもいたのである。


「どうせ死ぬのならば、自分達で決めた戦場か、教会じゃない場所って俺は考えていましてね。本当に、ここならば、最高です。」


 そして、その言葉が終わると同時に、アルバートルは大きく息を詰まらせたかと思うと、その大きな体を床に打ち付けんばかりに大きく倒れた。


「アルバートル!」


 俺にごろりと仰向けにされた彼の顔は、なんと、笑顔を貼り付けた、最高の死に顔をしていた。


 ただし、俺が彼の死を受け入れるとは限らない。

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