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取りあえずの安寧は終わり、イベントが開始された

 俺達の笑いさざめく幸せな昼食時間を破壊しようというのか、おどろおどろしい汚れたマントを深くかぶり、トネリコでできた大きな杖を付きながら、のそのそと歩き近づいてくる姿は敗残者か疫病神そのものである。


 そいつは和気藹々と昼食中の俺達のいる広場へ辿り着くと、精も根も尽き果てたという風情で膝を折り、とりあえず無言で眺める俺達にマントのフードを降ろして顔を出した。


 俺はこの世界にごめんと言いたい。


 いや、彼にこそ、か?


 魔物デザイン担当者として、デーモン種族の外見には拘ったが、実写となるとハロウィンの扮装程度になる事が俺には解らなかったと謝りたい。


 青い肌に羊のような大きな角、そして顔には目を分断するような赤いラインが額から顎に向かって二本走っている。

 瞳は魔物らしく、透明感は無く瑪瑙のような石のような質感だ。

 そして、筋骨隆々の体は二メートル近くあり、初対面の誰もがキャーと叫んで逃げてしまうだろう外見なのだ。


「まぁ、どうされました?大丈夫ですか?」


 エレノーラが魔王側近予定の、それも人類を家畜と見做すコントラクトゥス大魔導士様に、何の脅えも見せずに声をかけ介抱へと向かおうとまでした。

 俺はエレノーラの腕を掴むと再び椅子に彼女を座らせた。


「ダグド、様?」


「ダメでしょう。君は無邪気すぎるよ。まずは俺がこの闖入者に質問をしてからでしょう。」


「何をおっしゃいますの。この領内に簡単に入れたという事は、あなたの作られた城門がこの方を受け入れた印では無いですか!なんの他意も無い方です。」


 畜生、俺こそその設定を忘れていたよ。


 俺の作った学習機能付き安全防御魔法システムは、日々勝手に学習しているからか、生贄や姥捨て口減らしの目に遭った人達に日々勝手に門を開いている。

 そして、俺がどうしようと考えた一瞬の間、シロロが魔王に変性した。


「ダグド様を煩わせるのはご飯の後にしてくれないかな。ダグド様がいただきますしないと、ご飯が食べられないの。ごはんの邪魔をするなら、君を殺すよ。」


 俺はコントラクトゥスが可哀想になった。

 誰も彼の外見を気にしないのは良い事だが、もう少し驚いた素振りや畏敬の念、とりあえずは少々のざわつきぐらい登場時に与えてやってもいいじゃないか、と。

 彼は本来だったらゲームの要のキャラクターなんだぞ、と、可哀想な彼に同情した俺は彼に手招きをした。


「おいで、まずは一緒にご飯を食べよう。」


「できません!」


 敵として出現したからなのか?


「私一人がこのような恩情を受けるわけにはいきません。私はダグド様、あなたがトレンバーチになしたことを聞き、我が子達を助けるお力添えを頂けたらと参りました。」


「あぁ、トレンバーチに酷いことをしたのは、俺じゃなくてそこの騎士様達だから、食事を一緒にしながら彼らに相談したら?」


 俺はコントラクトゥスにアルバートル達を指し示した。


 コントラクトゥス程の大魔導士の面倒が中ボスの俺になんとかできるはずはなく、ラスボス撲滅ランク隊の方々に任せようと考えたのだ。

 しかし、デーモンは真っ青な顔をぶんぶんと大きく横に振った。


「私は子供を助けられるまで食事をしないという誓いを立てております。お願いします。お助けを!」


 そこで迷惑な絶食客は、俺の返事を聞くことも無く、貧血か栄養失調で勝手にばたりとその場に倒れた。

 俺はこのデーモンが手が出せない時点で物凄い面倒な筈だと当たり前のように考え、とりあえず即答しなくてもよい状況になった事に喜んだが、エレノーラや無駄な戦力たちの期待に震える視線を浴びている事を無視することは出来なかった。


 お前らは知っているのか?

 こいつはラスボス一歩手前ボスだぞ!


 召喚魔法で都市一つ壊滅できる大魔導士様なんだぞ!


 子供をこいつが助けられないのだとしたら、一体どれほどの魔王が後ろに控えているのかわからないのだぞ!

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