フラグは既に立っていた、のか?
ここまでのあらすじ
騎士が六人押しかけた。
団長(六人しかいないけど団長だってさ)のアルバートルは俺のエレノーラの兄貴だった。
彼らは我がダグドの門が受け入れるぐらいに後先が無いようで、門が彼等を受け入れたことをよい事に勝手に我が領地に居ついてしまった。
だが、エレノーラとノーラにアリッサがトレンバーチに誘拐された時は、彼等の存在がかなりの助けになってくれた。
しばらく(永遠に?)トレンバーチの市に行けないくらいの破壊活動をありがとうよ!(by ダグド)
救出劇のお陰なのか、エレノーラは自分の兄に優しくなり、エレノーラを右に倣っている乙女達までも騎士団員達に優しくなった。
関係がよくなれば自然と相手を労うというそぶりも生まれるものであり、彼らは農作業の手伝いはしないが、重い荷物を代りに持ち上げたり、壊れた家の修復の手伝いをしたりと、それなりに領民から良い奴らだという認識へと変わっていた。
そして、俺は元の引きこもりの生活に戻れるかと思いきや、昼飯は領民と一緒、という決りをエレノーラに押し付けられた。
最初はエレノーラとアリッサ、そしてノーラの怪我の具合が心配だと、様子見の為に昼食時に顔を出していただけなのだが、もとい、差配人のエレノーラを動かせないと午前中は俺が書類仕事を代りにして、昼飯はついでに一緒というのが正しいが、エレノーラが自分が仕事に戻れるようになっても俺と一緒に食事がしたいと望むのだ。
「ダグド様と食事をするって、皆の一番の夢でしたもの。」
エレノーラは卑怯にも、自分、ではなく、みんな、を盾に出して来た。
俺は破壊竜という面目を保って領民の願いを破壊するべきなのであろうが、エレノーラだけじゃなく、シロロの真っ黒な目までもが希望で煌くのを無視することは出来なかった。
シロロは俺について毎日広場での全員昼食を堪能していたのだが、広間の食事よりも品数も多いという事実迄も彼に知られてしまったのである。
当たり前だ。
俺は昼飯前にはエレノーラからメニュー表を送られて、どれを取り分けますか?と伺いを立てられていたのである。
大食漢では無い俺は、毎回スープとパンと肉料理一品ぐらいの注文だ。
それだけの注文にケーキや果物をプラスして豪勢なものとなっていたのは、純粋にエレノーラの心遣いなのである。
メニュー表全て、それも毎日内容が変わっている昼食メニュー全品を堪能できるとあれば、お昼ご飯がシロロの中で一日の最大イベントとなってしまうのは当然だ。
彼はもう、昼飯を中断させられたら、この世の全てを破壊するだろうぐらいの勢いなのだ。
イベントと言えば、ゲームというものは、フラグが立ち、一定時間を経過すると起きるイベントというものも用意されている。
つまり、シロロが世界を破壊せしめ、俺の城に自分の居城を打ち立てた三月後に、シロロの片腕となる大魔導士がシロロに謁見に来るのである。
破壊者で支配者のレクトルには片腕も必要ないであろうが、魔物達が欲望のまま人間を殺して回れば魔物たちの食料も奴隷もいなくなるという、実は魔物たちも人間と共生していたんだね、という事情を重く見ている魔物の一人が王に陳情に来た、が正しいのかもしれない。
ゲームの世界では、その暗黒魔導士がシロロの配下になる事で完全なる人間への支配と恐怖政治の始まりとなったのだと、ダグドが死んだ後の後半開始のムービーにてナレーションで語られる。
今日がシロロが居付いて三か月目とするならば、イベント発生の日となるのだろうと、俺は俺達に近づきつつある異邦人を眺めながらぼんやりと考えた。