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バは馬鹿野郎のバでブはぶち殺したいのブ

 アルバートルが事実を言い渋るのはいつもの事だが、ぴゅるぽとフェールに起きた事はそんなにも俺に知らせたくはない何かを含んでいるのだろうか。


 会議室に一人で座る俺は、会議室のモニターをじっと見つめた。


 そこに映し出された男の強張った口元によって、俺の頭は子供達に起きた出来事に対して最悪ばかりを囁き始めた。


「俺は知りたい。君を責めたいわけではない。大事な子供達に何が起きたのか知りたいだけだよ。」


「子供達って、複数形ですね。」


「お前らは俺の息子なんだろう?フェールも大事な子供だ。取り戻したい。」


 アルバートルは口元に微笑をふっと浮かべた。

 それから目元だって緩ませて俺を見つめ返して来たのだ。

 彼の部下達が、彼に褒めて欲しい、そう願う気持が分かるぐらいに優しくて心を安心させるような微笑みだった。


 俺から色々を隠していたのは、その笑顔を見せねばならない程に、我がもう一つの領地、コンスタンティーノの海域に危機が迫っていたと伝えねばならないからか?


「まずは、コンスタンティーノのプールを壊してしまった事からでしょうか。」


「はい?壊したの?プール設備を全部おじゃんにした?」


 コンスタンティーノは完全にダグド領住人専用観光地として作ってある。

 そのため、領民誰もが使えるプール設備だって、観光地の高級ホテルのプール設備のように拘っているのだ。

 流れるプールとか、スライダー設置してあったりとか、ジャグジー付きだったりとか。

 つまり、ダグド領の夏用プールや公衆浴場とは比べ物にならないぐらいに、派手で金がかかっているプール設備だという事だ。


「ご心配なく。壊してしまったのは飛び込み台設置の水深三メートルある奴だけですよ。」


「え?でもそんなの初耳なんだけど。」


「シロロ様が修復しましたから大丈夫です。」


「あ、そう?それでどうして壊す結果になったのかな?」


「ほら、ぴゅるぽの手足はイルカみたいなひれじゃないですか。泳ぎが上手いんじゃないかなって、シロロ様がプールに一緒に飛び込んじゃったんですよ。飛び込み台から、どっぽーんと。」


「止めろ!見てたんだったら止めろ!」


「シロロ様を止める手段などありますか?」


「ないですね。ご迷惑おかけしました。そうか。あいつが壊したって話か。」


「いいえ。壊したのはぴゅるぽです。やっぱ水系モンスターでしたね。すぽっとシロロ様の腕から飛び出すと、水を得た魚みたいに勢いよく泳いで、勢いよく壁に激突しちゃったんですよ。」


 あの子はどこかの壁にめり込んでいない?


 俺の頭に必死だったエレノーラの声が響いた。

 そして無言となった俺に、俺を安心させたいのか俺に殴られたいのかわからないぐらいに、アルバートルはそれはいい笑顔を作って見せた。


「無事ですよ。壁にめり込んだだけです。ただ、エレノーラが気絶しちゃいましてね。もう宥めるのが面倒だから、エレノーラには、幻覚だったんだよ、で、誤魔化しきりました。熱中症で見た夢かなってね。はははは。」


「お前か!お前がエレの不穏の原因を作りやがったんだな!」


「それで俺達は考えました。海ならどうだろうって。」


「立ち止まれよ。壁にめり込んだところで二度とするな!」


「海は広かった。半日行方不明になりました。それでシロロ様がぴゅるぽが心配だからって自然エネルギー供給機能を解除されたんですよ。」


 俺は両手で自分の顔を覆っていた。


 どうしてこんな奴らを生かしているんだろう。


 どうしてこんな奴らに大事な子供を預けてしまったんだろう。


 どうして俺はこんな奴らの糊口をしのぐために、毎日毎日一人で蚕さんを育てて繭を収穫し、たった一人で城の地下にあるオートメーション工場でシルクの機織りをしているんだろう。


「その失敗を元に俺達は学びましたからご安心ください。」


「安心できねえから怒ってんだろうが。で、逃げて見つかったところでアルゲオカントゥスに飲まれたってことか。」


「いえ。その日は半日行方不明だったと言ったじゃないですか。ちゃんとその日は捕獲しましたよ。俺達の実力を馬鹿にしないでいただきたい。」


「捕獲してどうして今行方不明なんだよ。」


「だから今日飲み込まれたって言っているじゃないですか。俺達は数々の失敗を元に安全策を講じていたと言うのに!」


「ちょっと待て。数々の失敗てなんだよ。数々失敗する前に親御さんに赤ん坊を返そうとか思わなかったの?生後一か月の赤ちゃんだよ?」


 俺が睨むシルクスクリーンというモニターの中で、真正面に俺を見つめるアルバートルが笑顔も何もない神妙な顔で俺をじっと見返した。

 俺は彼らがふざけているようでも俺の為に絶えず動き、泥さえも自分達で被って俺の世界を守ろうとしてくれた数々を思い出すしかなかった。


 そこで、俺は最悪な事実かもしれないこと、ぴゅるぽと俺達夫婦を引き離さなければいけない何かがあったのだろうと思い当たった。

 俺は親として領主として、アルバートルから真実を聞く覚悟を決めた。


「何でも言ってくれ。」


「猛スピードで泳ぐぴゅるぽを捕らえると経験値が入るんです。捕まえたぴゅるぽに海中に引き回された時間、それが経験値に掛けられていきますから凄い事になります。」


「ボーナスステージの玩具にしやがって!」


「玩具になんかしていませんよ。海域に網を張って生簀を作り、ぴゅるぽの安全性を確認してからのスポーツです。それが、今日に限ってアルゲオカントゥスの襲撃に遭うとは!」


 俺は頭を抱えた。

 今やアルゲオカントゥスに感謝までしてしまっている。

 お前が飲み込んでくれなきゃ、俺は自分の子供が自分の保安部隊員に玩具にされていた事に気が付かないままだったよ、そんな気持ちだ。


「ダグド様?そんなに落ち込まないでください。これは災厄に近いものです。ダグド様の責任では一切ありません。」


「だよね!お前らの責任だよな!」


 俺は会議室のテーブルに右手の拳を打ち付けると、アルバートルに最後通牒を突きつけた。


「ダニエラを取り返すまで帰って来るな。」


 アルバートルは、その命令を待っていた、という風にして俺に敬礼をして返しやがった。

 チクショウ!

 俺は奴に乗せられて、大事な奴らを決死隊にしてしまった、とは。

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