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転生先が物語分岐の中ボスという微妙な立ち位置だった  作者: 蔵前
俺達は一緒に生きて来たんだ
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メモリーは解凍される

「ああ、そうか、思い出しました。この島がガルバントリウムに接収されたのは記憶が目的でした。イグナンテスがそこいらじゅうに兵を出していたのは、布教というよりも物資の強奪と、あなたもご存じの延命術の探索、それから、新たな術の模索ですよ。」


「どういうことだ?」


「過去の秘術を手に入れれば、あなたの城にあったポータルの解析も出来ると思いませんか?教会はあれを利用していてもあれを作ったわけでもなく、あれの原理なども全く分からないというものだったのです。」


「ああ。」


 俺はアルバートルが言わんとしている事が、ようやく脳みそに染み渡った。

 前世世界において、古代文明の遺物のなかに現代科学でも解析できない超化学技術によるものと思われるものがあり、それらはオーパーツと呼ばれた。

 それらを解明できれば、人類の発展は目覚ましいものとなる。

 そう考えてそれらに魅了された人間は多くいるのだ。


 古代にどうやって精製したのかわからない、99%以上の純度の鉄で出来ている錆びないデリーの鉄柱。

 古代人が造り出したと考えるには、精巧で医学上に正確過ぎる造形であった、アステカの水晶どくろ。

 宇宙船の為の離着場とも言われていた、ナスカの地上絵。


 俺だって祖父の蔵書の中でそれらを知り、それらを題材にした漫画や冒険小説を読み漁ったものだと、懐かしく思い出した。

 すると、イグナンテスの隠し部屋のイメージがそこに重なったのである。


 彼は前世の俺みたいな超常現象好きが謎を求めるようにして、しかし、自分にある権力を使う事で、世界に破壊と殺戮だけをもたらしていたのだろうか、と。


「ダグド様?」


「いや、何でもない。それで、シロロを迎えに行ってくれるか?」


 アルバートルが認証装置に触れたことで再びゲートは開き、ゲートの先を見つめている彼の視界がモニターに映し出されているのであるが、その映像は深く暗く長い白い階段が延々と続くといううすら寒いものであった。

 こうしてひたすらに下へと続く道を眺めていると、カイユーやフェールが空騒ぎしたくもなった気持もわかるってものだった。


 そしてアルバートルは、俺の頼みに一歩を踏み出すどころか、軽く首を振ってから一歩下がり、視線を入り口から逸らして美しき洞窟内の天井を見上げた。

 神に祈る風にして。


「アルバートル?」


「大丈夫です。現在位置や蛇が何者かというメッセージはシロロ様に送りました。俺達は待ちましょう。リリアナが竜族の文字を見つけたと喜んでいるようですから、ここは彼らを信じて、そっと見守り待つべきでしょう。」


「――その長い階段を上がり降りするのが嫌になったって、正直に言えよ。」


 アルバートルは俺への返礼代わりに、俺の目の前のスクリーンにリリアナが読んでいる竜族の文字を映し込んだ。

 自分はリリアナに配慮しているんだ、という風に俺への嫌がらせのようにして、宇宙文字な竜族の言葉に字幕も付けているという親切仕様だった。


「我が一族は死に絶えた。最後のわれらの命もこれ以上はつなげず、未来に託して幼い息子を深い眠りに落とすしかない。息子は最後の竜となる。この文字を読めた者、それが竜族であるならば、種族が違えど我が息子を家族に受け入れてもらえないだろうか。」


 俺は最後まで読んだそこで、悲鳴のような声を上げていた。

 必死の竜族の想いだが、俺はそんなものを受け入れられるおひとよしじゃない!


「アルバートル!今すぐ階段を下りてくれ!今すぐにリリアナ達を止めてくれ!ぜったいに絶対、眠っている竜族の息子さんを起こさないで上げてくれ!」


「良いじゃないですか。同じ竜族。リリアナの結婚相手が出来たって事じゃあないですか。ねえ、ダグド様?」


 モニターではなく、俺の意識を向けてアルバートルを見返せば、奴はなんと悪そうな顔でにやけているではないか。


「アルバートル!お前は全部解析していたな!」


 俺は気が付くのが遅すぎた。

 俺ににやけて見せるアルバートルは、俺にようやく俺が排除されていたシロロ達の映像を俺のモニターに映し出したのだ。


 もうすでに遅し。


 真っ白な空間に、俺が先ほど見せつけられた落書きがあったその先に、まるで電子レンジの扉のような形の巨大な扉があり、シロロ達探検隊はその扉の前でその扉の中で解凍されているものを見つめているのだ。


 最後の竜。


 この土地の守護神、サラマンダーの復活だ。


「バカ野郎!アルバートル!間抜けな外見の竜かもしれないが、そいつは炎の赤竜だ!隠しボスなんだよ!」


 果たして、神秘的な洞窟の中に留まることを選んでいた男は、物凄く騒々しい足音を立てながら長い長い階段を駆け下りて行った。

 流石、経験値の為ならば利き手封印ナイフサバイブを敢行できる英雄ばか


 男の足音が小さくなり、聞こえなくなるほどに彼が先に行ってしまった後、しゅぴんと音を立てて透明なゲートが再び閉まった。


「イヴォアール。君は行かなくてもいいのか?」


 灰色の髪を銀色に輝かせた、銀色の狼のようなハンサムな男は、狡猾そうな笑みを顔に作って見せた。


「あなたがアルに階段を走らせたかっただけなのはわかっていますから。」


「うわお。俺はどうして君を虐める事が出来たのかな?君の方が一枚上手だ。」


 ただし、本当に戦闘になるのかもしれない可能性はある。


 だってここは、プレイヤーに課金させて来させようと俺と安彦が構築していた、純粋なるボーナスステージだったのだもの。

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