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転生先が物語分岐の中ボスという微妙な立ち位置だった  作者: 蔵前
俺達は一緒に生きて来たんだ
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ガルバントリウムの爪痕

 さて、シロロ達を見送っての数分後、ここにイヴォアールがいて良かったという状況に一変するとは、誰が思いついたであろうか。


「きゃあああああ!ダグド様!」


 アリッサの大声に俺の視界を洞窟前に戻せば、アルバートルの周囲にはヤクルス一匹の姿も見えず、その代わりとして二足歩行の獣人らしき群れに彼らが囲まれていた。

 彼らを取り囲む奴らは、体のところどころに獣の毛を生やした猿に似た姿の獣、つまり、魔法によって獣と合成された、ガルバントリウム戦で何度も見せつけられてきた人獣だった。


 あんな人獣など俺も安彦もプログラミングしていない。

 あれらは、ガルバントリウムが行っていた、自分達にたてつくものに施した処刑の一つでもあり、武力の増強の為の狂った所業の一つであった。


 アルバートルは洞窟に背を向けた格好で、扇形に展開する敵に対して殺気を向けている。

 彼の右腕はいつでもグロブス召喚で銃を呼べるように空手だが、彼の左腕は脅えるアリッサを自分の背中に押し付けるようにして回されていた。

 そのポーズは、俺もお前の背中に隠れたい、と一瞬思った程の格好良さだった。


「俺へのサービスの為に、むざむざ敵に囲まれたのか?」


「バカばっかり言わないでください。俺はこんな臭い奴らとお友達になった覚えはないですよ。」


 彼は俺にこそ見せつけるようにして銃をグロブス召喚するや、気怠そうにして敵に撃ち放ち、前に出て来た一人の額に大きな穴をあけた。

 敵が受けたダメージの大きさに、アルバートルの真後ろに隠されたアリッサは大口を開け、いや、俺こそ顎の存在を忘れるぐらいに呆気に取られてしまった。


 まず、奴が持つ銃は、日常使用の真黒な自動銃のベレッタ、ではなかった。

 銀色に輝く銃、イグナンテスを撃ち殺したイーグル、でもなかった。


「お前おかしいよ!なんでわざわざリボルバーに戻して、そんでもって.44マグナム弾よりもバカ強力な.500S&Wマグナム撃ちだせる銃にした!反動大きすぎて実用的じゃないだろ!」


「ベレッタはそのまんまですって。変えちゃったのは元々リボルバーのイーグルの方。あっちは糞を撃ってしまってケチがついちゃったから、思い切って、ですよ。ははは。」


「ははは、じゃねえよ!無駄なスぺックだろ?無駄すぎるオーバーキルだろ?」


「シロロ様が作り出してくれた平和世界じゃないですか。俺という兵士としてしか生きていけない男にはね、こんな手慰みが必要なんですよ。」


「ばか!お前は本気で馬鹿!本気で単なる趣味の世界じゃねえか!」


 経験値をぶっこめば銃をカスタマイズできる設定なんて誰が考えた!

 どうして西暦二千年な現代の新型銃のS&WM500なんてものを、アルバートルが持てるような仕様になってんだよ!


「ダグド様。これでようやく奴らと戦える仕様なんですよ?」


 俺は急に静かで滑らかな声を出した男に唆されるようにして敵を見返し、俺の耳元にアルバートルが囁いている錯覚を感じながら、アルバートルが撃ち砕いたはずのそれの再生する様を見守ることになった。 


 人獣は頭一つ分吹き飛ばされ、受けた反動にエビぞりになったが、そのまま後に倒れたりはしなかった。

 逸らした上半身を元通りに引き上げたその時には、アルバートルが穿ったはずの大穴が消えていたのだ。


 いや、首は吹き飛ばされて存在しないが、千切れた肉片や肉体の内側からせり出した内臓やウジ虫が盛り上がって小さな頭部を作り上げたのである。


 目玉があるだけの脳も必要としない小さな頭は、敵と見做したものを殲滅せよとの呪いに縛られた動く死体の成れの果てだろう。


「単なる合成だけじゃなくてグール化もしているのか。上陸してからここまで、彼らの気配など一つも感じなかったけれどな。」


「ええ、俺もですよ。ですけどね、死体にいちいち反応するわけ無いでしょう?死体は普通、人に害をなすものでは無いのですから。」


「そうだな。じゃあ、どうして急に俺達に害をなそうと襲ってきたのかな。」


 がうん。


 アルバートルがもう一発銃を撃った。

 これはストッピングの為かと思ったが、今度のグールは腹に大穴を穿たれたそのまま、なぜか再生もせずにぐちゃりと地面に転がった。


「話の最中にすいません。俺は臭いのが嫌いなんですよ。」


「いや、いいよ。今度は倒れたが、何か違いがあるのか?」


「俺が聖なる祈りを捧げていますので、団長の半径五メートルは聖なる土地になりました。」


 洞窟の入り口からイヴォアールが出てきていた。


「はは。俺の女房は一途で困る。」


 アルバートルは自分の相棒に背を向けたまま言い放ち、イヴォアールは相棒の人でなしはいつもの事だというように軽く返した。


「俺の亭主は俺がいないと腑抜けますからね。どこまでもお供しますよ。」


 俺は、録画!録画!とこのような場面で、いや、このような展開だからこそ、映像録画機能の魔法を必死で思い出していた。

 って、ねえよ!

※弾丸の小数点44マグナム表記は、百分の44インチという意味であるため。

小説なので、今後は44マグナム弾、50マグナム弾としていくが、今回は.44マグナムの上の.454カスール弾を撃ちだせるトーラス・ライジングブルをアルバートルに持たせるつもりが、その弾丸の三倍威力がある.500S&Wマグナムを知ったからにはこれだろうと、そのまま表記。

三倍威力があると聞けば、絶対に欲しがるなアルバートル、と笑ってください。


今更な設定:銃騎士スクロペトゥムがグロブス召喚して呼び出すのは魔法ではなく本物の銃や弾丸。

よって、手入れされない銃が呼び出したら手入れ済みという事は無く、壊れた銃が直っているという事もない。

また、弾丸にしても、銃騎士スクロペトゥム本人、あるいは彼らを雇い入れた人間が武器商人から購入するか自分達で作るしか無いもの。威力が増すレア弾はその分値段も高い。

アルバートル隊は馬鹿みたいに撃ちまくるので、ダグド領ではかなりの金食い虫。


本来のゲームでは、プレイヤーが傭兵としてAIのパラディンやスクロペトゥムを雇い入れる事も出来る仕様となっている。

パラディンはヒールや補助魔法が使えるキャラとして教会の所有物であることから借入金額が高く、スクロペトゥムは冒険者登録ギルドや商人から手に入れる事も可能なため安価。

桁として、パラディンはスクロペトゥムよりも二桁は上。

しかし、雇い入れての金食い虫は、スクロペトゥム。

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