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ダグド領居残り隊様方

 イヴォアールはアルバートルの対を成すような外見をしている。

 アルバートルが太陽輝く青い海ならば、彼は月が輝く砂漠である。


 さて、褐色の肌に長い銀色の髪と銀色の瞳をした砂漠の王子様のような彼だが、時々エプロンを付けてアルバートル隊のガミガミ母さんをやっているだけあって、フェールとカイユーは彼に絶対に逆らわない。

 彼等は団の要がアルバートルでも、運営がイヴォアールなしでは成り立たないことを身に染みて知っているのである。


 そんな事情をさらけ出すようにして、俺の目の前ではフェールとカイユーがコマドリのようにして真面目に働き出した。

 カイユーは俺達への茶を入れ始め、フェールは何も言っていないうちから、彼等が運んできたそのホワイトボードに、グアム島、もとい、アウァールスインスラ(貪欲の島)と呼ばれる島の地図を、俺に手渡した紙に描かれたものとそっくり同じものを描き始めたのである。


 フェールの画力は素晴らしいが、一度見たものをそのまま記憶できるという彼の頭こそ凄いものだと俺はいつも思う。

 彼はその能力を使って、ガルバントリウムで禁書と呼ばれていた魔術書を読み漁ってそれを記憶し、レベルが上がる度にその記憶した魔法の使用解除をしているのである。

 わあ!レベルが上がる度に勝手に魔法を唱えられるようになるなんて、仕様がまんまゲームの主人公様だよ。

 さすが、勇者様。


「港のような所がありましたので、まずそこにキュグヌス号を接岸させています。まずそこから一番近くに、海に突き出た橋とその先に人の手によるものにしか見えない建造物がありますので、そこを隊は目指します。」


 畜生!

 アプラ港からフィッシュアイ・マリンパークに行くのですか!

 まんま観光ですね!

 冒険はどこに行きましたか!


「ダグド様?」


「いや、続けてくれ。それで、そこまで子供の足ではきついだろ?どうやってそこまで行くつもりなんだ?」


「シロロ様が赤アリを出しましたから、それに乗ってですね。」


「わあ、マジで観光だね。おい!フェール!お前はやっぱり行きたかったと今更思っているだろ?」


 地図に赤アリさんを書き加えていた男は俺に振り返った。

 奴の全くの無感動の顔に俺は見逃した事があるのでは?とイヴォアールを見返すしか無かった。

 イヴォアールはぎりっと歯噛みし、それから、団長!と声をあげた。


 彼等は俺が作ったインカムマイク、それをシロロの魔力添加でどんな離れた場所でも互いに交信できるようになっているが、それで俺には内緒ごとを色々としていたらしい。


 俺に内緒ごとをしていた本人、アルバートル様の視界が、ようやく会議室のモニターに大きく映し出された。


「どうしましょうか?」


 既に建造物の中に入っていたらしきアルバートル達は、その建造物の住人であるらしい者達に囲まれていた。

 口元が触手のようになっている半魚人達、いや、半タコ人か?


「交戦すべきでしょうか?」


 モニターからアルバートルの軽い声が聞こえた。


「シロロ様にお伺いを立てて。後は君のお好きなように。」


 無表情なフェールの顔は悔しさを表に出さないようにだろうし、親友のカイユーから恨みがましい目線を受けてもいる。

 彼等はお子様の面倒は嫌いでも、経験値稼ぎの面倒は大好きという、ろくでもないリアルゲーム廃人なのである。

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