俺の乙女を誘拐するとは②
「ダグド様!お願いですから!」
俺が発言しようと手をあげた事に対して、神々しさまである色男のティターヌの裏声となった情けない声が上がった事に、俺は頭のどこかでぶつっと何かが切れた音がした気がした。
上げていた腕を、ばんっと音がするほどにして机に叩きつけたのである。
「おい、お前らはそんな、お願い、何て言うキャラじゃないだろう!」
全員が真ん丸な目をして俺を見返した。
「なんだ、逃げる計画って。奪還した後は逃げて来なくていい。いいか、居座れ。相手が出て行って下さいと頭を下げるまで居座ってこい。そしてな、慰謝料をふんだくってから、悠々と門から出て帰ってこい。」
「そんなことが。」
「できるね。商人は信用が第一だ。あいつらは目先の欲に駆られてやってはいけないことをしたんだよ。何が人質の命の保証の為にひと月にウン枚の布を寄こせ、だ。あの街に良い商品を持っていくと、金どころか騙されて身内が死ぬぞと、騒がれたら街は終いだろうに、バカヤロウが。あの街は既に詰んでんだよ!」
「えぇ、その通りです。ですから、誰かに話したら殺すとも。」
「殺したら騒ぐぞ、と、送り返した。娘達に髪の毛一筋の傷でもつければ大通り一本分は破壊してやるとも脅してやった。次はどうする?」
俺はもう一度机を大きく叩いた。
「正々堂々と攻め込むしかないだろう。行って来い。大暴れしてこい。二度とダグドの民に手を出せないようにしっかりと教育してこい!お前達にはそれができるはずだ!」
彼らは大きく音を立てて席を立つと、各々次々と俺に一礼をしてから部屋を出て行った。
出て行った後には馬のいななきと馬達が駆け抜ける騒々しい音が起こり、しばらく後には静寂だけが戻った。
そして、俺はその静寂の中で、息を潜めて会議を盗み聞いていた人物の存在を嗅ぎ取っていた。